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第4話 招待
黒狐さまの家
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黒狐さまの家は、和風一階建ての平屋で、田間側の道路沿いに建っている。
インターホンを押すなり即、黒狐さまが出迎えてくれた。相変わらず黒の制服姿だが、スカートがやけに短い。シカのように細く健康的な足と、肉付きのいい太もも。伸びたタイツに透ける肌の白さが、目に焼き付いてしまった。
「よく来たのじゃ。マスクはつけずともよい。妖狐は、梅毒や狐狼狸をはじめとする伝染病を引き受け、無毒化できる」
相変わらず顔は逸れて、赤面していた。しかし、それ意外の対応については比較的まともだった。文字通り、ホームグラウンドだからだろうか。
玄関と廊下は白で統一されており、清潔感がある。片付けたのか、土間に一切の靴が置かれていなかった。
「ご両親は?」
「仕事の都合で海外に行っておる」
「寂しくないんですか?」
「お主がいる限りはな」
どぎまぎしながらスリッパを履いた。
黒狐さまは右側にある扉へ手招きした。そして、白く細い指でノブをひねる。
洗面所はモノトーンで統一されていた。石鹸類の容器も全部白い容器に入れ替えているようで、こだわりを感じる。ピカピカに磨き上げられた洗面器で手を洗うと、それだけでテンションが上がった。タオルも新しいものに差し替えられており、来客者への気遣いが感じられる。
……あれ、自分は今、女子の家に来ているはず。なんで一泊一万円越えの高級ホテルに招待された気分になっているんだろう
綺麗な流線を描く臀部に目を奪われているうちに、突き当たりへ着いた。
「ここが、リビングじゃ」
「うぇ!?」
モノトーンの家具で固められた、シンプルな和室。真ん中に長方形の座卓が置かれていた。漆塗りで、左上と右下に、赤い金属粉で紅葉が描かれている。座卓の左と奥に、二人掛けの黒いソファー。座面が低く、フレームとひじ掛けは木製。座卓奥のソファーの背後には、格子の付いた窓があった。
どう見ても、一人暮らしの女子高生が住んでいる部屋には見えない。
「正方形の畳、初めて見ました。しかも黒と灰色って……」
「琉球畳という。縁がない分、おしゃれじゃろう?」
部屋の左手、ソファの奥には、黒いすだれがかけられていた。極薄のテレビが透けて見える。その下に、黒茶色のテレビ台が浮いていた。テレビと同じく壁掛け式らしい。
「壁に取り付けられてる小さな障子戸は?」
「スイッチカバーとコンセントカバーじゃ。見えるだけで雰囲気台無しじゃろ?」
黒狐さまは、座卓奥のソファーに座るよう促してきた。窓に近づいたとき、ツキは格子の柄に気付いた。
「これきれいですね。六芒星?」
「かごめ柄じゃな。魔除けや邪を払うとされておる。もっとも、わらわの場合は妖気を外へ出さないためじゃ。外側に上下へ開くのは蔀戸リスペストじゃな。格子の間にはすりガラスを挟んでおる」
奥の椅子に腰掛け、左側を見た。
床が一段高くなっており、真ん中が柱で仕切られている。左側には『唯春の夜の夢のごとし』と書かれた掛け軸が、夕陽に照らされている。柱右側には二段の棚板が左右食い違いに取り付けられており、さらに天井と床それぞれに引戸が取り付けられていた。
「これは、室町の書院造をイメージしたものじゃ。格子戸が付け書院を兼ねておる」
部屋全体が、黒、白、茶の三色で統一されていおり、控え目に言ってかっこよすぎる。
「ところで……」
「ん?」
「かわいい小物とか、ぬいぐるみとかはないんです? ふわふわ、モコモコしたものとか、丸いっこい家具とか。そういえば、写真の類いすらない。散乱したポシェットとか、どうぶつやキャラグッズ、変な柄のポスター、学習机の下の教科書の山……」
「わらわをいくつだと思ってる?」
「千にひゃ……」
全部を言う前に、尻尾で叩かれた。
インターホンを押すなり即、黒狐さまが出迎えてくれた。相変わらず黒の制服姿だが、スカートがやけに短い。シカのように細く健康的な足と、肉付きのいい太もも。伸びたタイツに透ける肌の白さが、目に焼き付いてしまった。
「よく来たのじゃ。マスクはつけずともよい。妖狐は、梅毒や狐狼狸をはじめとする伝染病を引き受け、無毒化できる」
相変わらず顔は逸れて、赤面していた。しかし、それ意外の対応については比較的まともだった。文字通り、ホームグラウンドだからだろうか。
玄関と廊下は白で統一されており、清潔感がある。片付けたのか、土間に一切の靴が置かれていなかった。
「ご両親は?」
「仕事の都合で海外に行っておる」
「寂しくないんですか?」
「お主がいる限りはな」
どぎまぎしながらスリッパを履いた。
黒狐さまは右側にある扉へ手招きした。そして、白く細い指でノブをひねる。
洗面所はモノトーンで統一されていた。石鹸類の容器も全部白い容器に入れ替えているようで、こだわりを感じる。ピカピカに磨き上げられた洗面器で手を洗うと、それだけでテンションが上がった。タオルも新しいものに差し替えられており、来客者への気遣いが感じられる。
……あれ、自分は今、女子の家に来ているはず。なんで一泊一万円越えの高級ホテルに招待された気分になっているんだろう
綺麗な流線を描く臀部に目を奪われているうちに、突き当たりへ着いた。
「ここが、リビングじゃ」
「うぇ!?」
モノトーンの家具で固められた、シンプルな和室。真ん中に長方形の座卓が置かれていた。漆塗りで、左上と右下に、赤い金属粉で紅葉が描かれている。座卓の左と奥に、二人掛けの黒いソファー。座面が低く、フレームとひじ掛けは木製。座卓奥のソファーの背後には、格子の付いた窓があった。
どう見ても、一人暮らしの女子高生が住んでいる部屋には見えない。
「正方形の畳、初めて見ました。しかも黒と灰色って……」
「琉球畳という。縁がない分、おしゃれじゃろう?」
部屋の左手、ソファの奥には、黒いすだれがかけられていた。極薄のテレビが透けて見える。その下に、黒茶色のテレビ台が浮いていた。テレビと同じく壁掛け式らしい。
「壁に取り付けられてる小さな障子戸は?」
「スイッチカバーとコンセントカバーじゃ。見えるだけで雰囲気台無しじゃろ?」
黒狐さまは、座卓奥のソファーに座るよう促してきた。窓に近づいたとき、ツキは格子の柄に気付いた。
「これきれいですね。六芒星?」
「かごめ柄じゃな。魔除けや邪を払うとされておる。もっとも、わらわの場合は妖気を外へ出さないためじゃ。外側に上下へ開くのは蔀戸リスペストじゃな。格子の間にはすりガラスを挟んでおる」
奥の椅子に腰掛け、左側を見た。
床が一段高くなっており、真ん中が柱で仕切られている。左側には『唯春の夜の夢のごとし』と書かれた掛け軸が、夕陽に照らされている。柱右側には二段の棚板が左右食い違いに取り付けられており、さらに天井と床それぞれに引戸が取り付けられていた。
「これは、室町の書院造をイメージしたものじゃ。格子戸が付け書院を兼ねておる」
部屋全体が、黒、白、茶の三色で統一されていおり、控え目に言ってかっこよすぎる。
「ところで……」
「ん?」
「かわいい小物とか、ぬいぐるみとかはないんです? ふわふわ、モコモコしたものとか、丸いっこい家具とか。そういえば、写真の類いすらない。散乱したポシェットとか、どうぶつやキャラグッズ、変な柄のポスター、学習机の下の教科書の山……」
「わらわをいくつだと思ってる?」
「千にひゃ……」
全部を言う前に、尻尾で叩かれた。
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