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10、取り引き再び

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指定の美弥太マンションは年季の入った周辺で1番古いマンションのようだった。東西に長い造りで玄関ホールは東端にあり、エレベーターホールも兼ねている。及川警部達は今回こそ犯人に見つからないように注意を払い、屋上の一つ下の階の空室や、近隣のビルのこれもまた屋上ではなく空室から待機していた。また今回は空からの警備として近くのヘリポートでヘリがスタンバイしてあった。エレベーターは一般人が使用出来ないように故障の札を下げられていた。
さて、エリと麻美だが屋上でずっと空を睨んで待機していた。お金の箱は麻美の足元に用意され、トランシーバーはエリが持っていた。正午になりしばらくしてトランシーバーから音がした。
「金は用意したか」機械加工の声。
「はい」とエリが返事をした。
「金を持ち今すぐ一つ下の階に行け」
思わず顔を見合わせるエリと麻美。お互い頷いて箱を一つずつ持って階段を降りる。エリに付けた隠しマイクで会話は及川も周知している。
「着いたか?」と犯人。エリが、
「はい」と答える。
「そのまま廊下を西の端へ移動しろ!」
走るエリと麻美。
「着きあたりの右横にあるダストシュートから箱を一つずつ落とせ!」
麻美がダストシュートから箱を一つ落とした瞬間、及川が無線で
「下に回れ、犯人はゴミ置き場だ」と指示してからエレベーターに飛び乗った。エレベーターは徐々に動きだした。だが、すぐに止まり扉が開いた。急いで扉を閉めるとまたエレベーターは徐々に降りだした。しかし速度が落ちまた次の階で止まった。ゆるゆると扉が開き廊下へ出た及川が、
「階段で追え」と命じ、自身も続いた。



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