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11、ゴミ置き場

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刑事達がゴミ置き場に集まった。ダストシュートには箱が一つポツンと残っていた。及川が頷く。刑事の1人が箱を開いた。果たして...金は残っていた。
「この場へ最初に到着した者は?」と及川が聞いた。
「第二班であります」と返事をしたのは、玄関に待機していた班の者だった。
「我々が到着した時、犯人はずっと前を走っており、駅に続く地下街に降りられてしまったため、我々が降りた時には人混みで見失ってました。犯人に逃げられ申し訳ありません」
「箱が一つ残っているが、犯人が君達を見て逃げた訳ではないのだな」
「ずいぶん離れていたので、おそらくその通りと思われます」
「そうか、わかった」
「なぜ犯人はニ箱とも持って行かなかったのだろうか...」と及川が呟いた。及川は苦虫を潰したような顔で報告を聞いていた。及川に集まった数々の報告を聞けばそれも仕方ないことだった。待機していたヘリポートからは地下街のため出動はなかったことが報告された。盗まれた箱には発信機を取り付けてあったが、大阪駅のトイレ前のゴミ箱で小さくなった箱ごと発見された。犯人の姿を見た二班の報告では身長160~170程度、サングラスと帽子を被っていたことだけでこれといった特徴もなかった。
二度の屋上での取り引きで上空から来ると惑わされたこと、古い高層マンションの今や知る人が限られたダストシュートを利用したこと、繁華街の人混みを利用された犯行であった。
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