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レプスウィークス編
アルバの想い
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アルバはこちらへと向き直ると、「で、さっきの話の続きなんだけどぉ……」と続けた。
なにやらどうしても言いたいことがあるらしかった。
「さっき話した糞ゴミアホ野郎な親父だがよ。学んだことが、ひとつあるんだ。んで、俺はそれをどうしても伝えておきたい。特にカイはよく覚えていてほしい」
「それって……」
「いったいなんなんですかアルバさん!」
俺とエインはアルバの言葉に耳を傾ける。
するとアルバは人差し指でこめかみの辺りをトントンと
つつき始めた。
そこで俺とエインはほぼ同時に、はっとした表情になる。
「それは――」
「喧嘩っぱやさですね!」
「容赦のなさだな」
「鬼のような暴れっぷりですよね!」
「というよりは鬼のような非情さだろ」
俺とエインは裏で打ち合わせたかように、息ぴったりであった。
エインもアルバとは会ったばかりだが、アルバのことをよく理解してるようだな。
と、俺のなかでエインへの好感度が僅かに上昇した。
「あのなぁお前ら、俺をなんだと思ってるんだ……」
呆れたようにアルバは言った。
しかし正直それくらいしか、アルバと親父さんの人物像に共通点が見受けられない。
アルバが父親から学んだことなど、見当もつかないのだ。
「……お前らの俺に対するイメージはしっかり伝わったが、残念ながら違う。正解は知恵だ」
「知恵、ですか?」
普段の行動から、アルバがそんなことを重視しているとは思えないが……。
むしろ力のもたらす効果だ、とか言われたほうが納得できる。
「おい、今すごく失礼なこと考えてないか?カイ」
さすがアルバ、長い付き合いだけある。
だがアルバは悪知恵に限ってだが、よく働く奴ではある。
「……まあいい。親父は人間相手にもうまく商売してた。亜人として理不尽な目にあいながらも商人を続けられてたのは、親父が交渉を有利に進めるために知恵を働かせ、活躍して一部に認められていたからだ。だからこそ、幅広くとはいかなかったが商人としてやっていけてた」
「まあ商人なら確かにずる賢さも必要そうだもんな」
「商人に限る話じゃない。俺が親父の家では監禁状態だった。だがそこから抜け出せて、今こうして自由にやっていけてるのも知恵があったからだ」
「監禁までされてたのか……」
改めてアルバの父親は酷いと思う。
確かに亜人への世間の風当たりは強いが、さすがにやりすぎだろう。
「ああ。だが俺は監禁された状態から、部屋にあるあらゆる物を使って、持てる知識をフル活用して、そうして抜け出すことができた。そこから学んだんだよ。知恵があれば、どんなピンチでも柔軟に対処できるのかもってな」
「な、なるほど!さすがですね、アルバさん!」
「……」
エインはなにやら感動しているようだ。
俺からすれば、幼い頃からそんな経験をしたせいで、今みたいなずる賢さが身に付いているんだと知って、なんだか複雑な気分だ。
確かに社会的に重要なことを学べたのはいいことなのだろうが、それが家庭内の悲劇に由来するものだと思うと素直に喜んでいいものだろうか。
そんな心情でいると、アルバはこちらを向き少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
「ま、なんだ。仲間にはさ、俺みたいな想いはさせたくないんだ。災厄の悪魔なんて呼ばれて辛いかもしれないけど、逆にその噂を利用してやるくらいにさ。ずる賢さを学んでほしいんだ。親友のカイにはさ」
「アルバ……」
「もっと自分を尊重しろよ。カイは魔族でも、ましてや災厄の悪魔でもない。俺の大事な仲間なんだ。そんなお前がいつまでもしょげてっと、こっちまで根暗が移っちまうだろ?」
もしかしたら、ずっと気にしていてくれたのかもしれない。
仲間想いのアルバのことだ、きっとそうだろう。
でもアルバは照れ屋なとこあるし、普段ならこんなこと絶対言わない。
それでもこうして正面から想いを伝えてくれるのは、先ほどのエインとのやり取りがきっかけだろう。
俺はどこかで自分が疎まれ蔑まれることを、仕方のないことだと考えていた。
前世からそうだったし、もう慣れっこだと。
アルバはそんな俺の考えに気づいたのだろう。
「え、僕は?ねぇねぇ、アルバさん!」
「ああ、お前もだよ。一応な」
「なんですか一応って!もう!」
エインとアルバのやり取りを見ていて思う。
アルバはやっぱりいい奴で、俺の親友で、尊敬すべきライバルだなと。
「アルバ」
「ん?」
アルバと会えてよかった。
心からそう思える。
こんなに俺のことを信頼し、心配してくれる。
それがなにより、ありがたかった。
「……ありがと。本当に」
俺はアルバに満面の笑みを湛えて、感謝の意を告げた。
釣られるようにして、アルバも照れくさそうに微笑む。
エインは横で羨まし気にこちらを見ていた。
なにやらどうしても言いたいことがあるらしかった。
「さっき話した糞ゴミアホ野郎な親父だがよ。学んだことが、ひとつあるんだ。んで、俺はそれをどうしても伝えておきたい。特にカイはよく覚えていてほしい」
「それって……」
「いったいなんなんですかアルバさん!」
俺とエインはアルバの言葉に耳を傾ける。
するとアルバは人差し指でこめかみの辺りをトントンと
つつき始めた。
そこで俺とエインはほぼ同時に、はっとした表情になる。
「それは――」
「喧嘩っぱやさですね!」
「容赦のなさだな」
「鬼のような暴れっぷりですよね!」
「というよりは鬼のような非情さだろ」
俺とエインは裏で打ち合わせたかように、息ぴったりであった。
エインもアルバとは会ったばかりだが、アルバのことをよく理解してるようだな。
と、俺のなかでエインへの好感度が僅かに上昇した。
「あのなぁお前ら、俺をなんだと思ってるんだ……」
呆れたようにアルバは言った。
しかし正直それくらいしか、アルバと親父さんの人物像に共通点が見受けられない。
アルバが父親から学んだことなど、見当もつかないのだ。
「……お前らの俺に対するイメージはしっかり伝わったが、残念ながら違う。正解は知恵だ」
「知恵、ですか?」
普段の行動から、アルバがそんなことを重視しているとは思えないが……。
むしろ力のもたらす効果だ、とか言われたほうが納得できる。
「おい、今すごく失礼なこと考えてないか?カイ」
さすがアルバ、長い付き合いだけある。
だがアルバは悪知恵に限ってだが、よく働く奴ではある。
「……まあいい。親父は人間相手にもうまく商売してた。亜人として理不尽な目にあいながらも商人を続けられてたのは、親父が交渉を有利に進めるために知恵を働かせ、活躍して一部に認められていたからだ。だからこそ、幅広くとはいかなかったが商人としてやっていけてた」
「まあ商人なら確かにずる賢さも必要そうだもんな」
「商人に限る話じゃない。俺が親父の家では監禁状態だった。だがそこから抜け出せて、今こうして自由にやっていけてるのも知恵があったからだ」
「監禁までされてたのか……」
改めてアルバの父親は酷いと思う。
確かに亜人への世間の風当たりは強いが、さすがにやりすぎだろう。
「ああ。だが俺は監禁された状態から、部屋にあるあらゆる物を使って、持てる知識をフル活用して、そうして抜け出すことができた。そこから学んだんだよ。知恵があれば、どんなピンチでも柔軟に対処できるのかもってな」
「な、なるほど!さすがですね、アルバさん!」
「……」
エインはなにやら感動しているようだ。
俺からすれば、幼い頃からそんな経験をしたせいで、今みたいなずる賢さが身に付いているんだと知って、なんだか複雑な気分だ。
確かに社会的に重要なことを学べたのはいいことなのだろうが、それが家庭内の悲劇に由来するものだと思うと素直に喜んでいいものだろうか。
そんな心情でいると、アルバはこちらを向き少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
「ま、なんだ。仲間にはさ、俺みたいな想いはさせたくないんだ。災厄の悪魔なんて呼ばれて辛いかもしれないけど、逆にその噂を利用してやるくらいにさ。ずる賢さを学んでほしいんだ。親友のカイにはさ」
「アルバ……」
「もっと自分を尊重しろよ。カイは魔族でも、ましてや災厄の悪魔でもない。俺の大事な仲間なんだ。そんなお前がいつまでもしょげてっと、こっちまで根暗が移っちまうだろ?」
もしかしたら、ずっと気にしていてくれたのかもしれない。
仲間想いのアルバのことだ、きっとそうだろう。
でもアルバは照れ屋なとこあるし、普段ならこんなこと絶対言わない。
それでもこうして正面から想いを伝えてくれるのは、先ほどのエインとのやり取りがきっかけだろう。
俺はどこかで自分が疎まれ蔑まれることを、仕方のないことだと考えていた。
前世からそうだったし、もう慣れっこだと。
アルバはそんな俺の考えに気づいたのだろう。
「え、僕は?ねぇねぇ、アルバさん!」
「ああ、お前もだよ。一応な」
「なんですか一応って!もう!」
エインとアルバのやり取りを見ていて思う。
アルバはやっぱりいい奴で、俺の親友で、尊敬すべきライバルだなと。
「アルバ」
「ん?」
アルバと会えてよかった。
心からそう思える。
こんなに俺のことを信頼し、心配してくれる。
それがなにより、ありがたかった。
「……ありがと。本当に」
俺はアルバに満面の笑みを湛えて、感謝の意を告げた。
釣られるようにして、アルバも照れくさそうに微笑む。
エインは横で羨まし気にこちらを見ていた。
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