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第七話 ちびっ子ナイトパーリィ その5「ちびっ子」
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「マァチダメだよそれは!」
ローナが慌てて電気フィールドまで飛んでいく。
しかし、フィールド内に入った途端にローナの霊体が砂嵐のように乱れだした。
「な、なんだ!?」
「原理はわからないけど幽霊って、電気が強いと体が思うように動かせなくって」
「な、ら、無理し、て、入、るなよ」
タナカは口の動きもおぼつかなくなって、言葉がうまく発せられないようになっている。
「でも、入らないとマァチの体も危険なの!」
タナカはマァチの方を見る。いつも無表情な彼女であるが、苦悶のために顔を歪ませている。彼女にもダメージがあるのは確かであった。
「マァチ! もうやめよう! こんなバカとのバカな戦いにムキになるなんてバカバカしいよ!」
バカを連呼しているローナだが、これでもかなり真剣な表情で訴えている。
そしてマァチの方へ向かうも、体が思うように動けないのか、砂嵐のように体がバラバラになっては戻るを繰り返した。
「団長は渡さない! 渡さない!」
「だ、なんで、だ、で俺」
最早呂律が回らないために言い返す言葉が出てこないタナカ。このまま焼け死んでしまうのか。
そんな時、タナカの目の前に何かが飛んでくる。トイ・レットーだ。
「な!?」
なぜこんなところにトイ・レットーが? と投げられた方を一斉に向く三人。そこには親指を立てて誇らしげな表情をしたアストリアが立っていた。
マァチとローナは呆気に取られたが、タナカだけは何かを察したようで、全身全霊に力を込めてトイ・レットーの元まで歩いていく。
その距離は僅か1メートル程であるが、1センチ足を進めるのにも、今のタナカには困難な状態。
それはまるで、彫像の脚を素手で曲げるが如く、不可能に思える挑戦。
だが、"その挑戦に俺は勝った"と言わんばかりに、彼はトイ・レットーの穴に顔を突っ込むのであった。
「あれは!」
呆気に取られていたマァチもローナもタナカの方に目をやった。それと同時に、タナカは穴に顔を突っ込んだまま逆立ちする。そのピンとした足の張り様は、天空にまでそびえ立つ塔である。
「ぷっ! ふふふ、あははははは」
その光景を見てマァチは膝から崩れ落ちて、腹を抱えて大爆笑をした。そして力が抜けたために、電気のフィールドが崩れていく。
「よし、今だ!」
ローナは空かさずマァチの体に取り憑き、その行動権を掌握した。
「もうこんなことしちゃダメだよー」
マァチ自身の手を使って、彼女の頭を撫でるローナ。
「で、でもあいつがふふふっ」
意識を完全に乗っ取りきれていないのか、時々笑い声混じりのマァチの反抗の声が漏れる。
「大丈夫大丈夫。あのアホ代表みたいな格好を見なよ。あんなことしてる奴を誰が好きになると思う?」
別に自分だって好きでこんなアホ代表みたいな格好をやったわけじゃないと、タナカは穴の中で思ったが、マァチが落ち着くならと、喜んでアホ代表の格好を続けた。そしてあることに気がついた。
「ちょ、あ、待って。抜けなくなった。あ、マジで、あ、ちょ」
「ふひっ!!!!」
その一言にマァチは声にならない声で笑った。そしてひとしきり笑い終えた後で、ローナがマァチの体を借りながら、優しく語りかけ横になる。
「大丈夫もう大丈夫だよ。ゆっくりおやすみ」
そしてマァチが眠りにつくと、ローナは体を抜け出た。
「いやー見事な恥晒しだったねタナカ君」
「俺は日に何度、褒めと侮辱を同時に受けにゃならんのか」
そんなタナカをアストリアが穴の中から引き出す。
「それよりアスティ、いいアイディアだったね。トイ・レットーとタナカ君の組み合わせはマァチのツボだもの」
「なんの話だ!!? 私はもうすぐ朝だから朝ごはんを持ってきただけだぞ!!!」
アストリアはトイ・レットーの中に残ったミートボールを入れて持って来たらしく、タナカの顔にはミートボールがくっついていた。
「なんにせよ助かったぜ」
タナカは今だに動けず、体が伸び切ったままアストリアの脇に抱えられている。そして朝日が彼の顔にさした。
「酷い夜だった・・・・・・」
「ごめんね。だけどマァチのことは許してあげて欲しいの。この子はタナカ君を怖がってるんだよ」
「俺を? 怖がる?」
「なんとなく察してると思うけど、マァチは杖がないと魔法が使えない。
だから杖を奪われたら、ただただ普通の女の子になっちゃう、みんなの足手まといになっちゃう、みんなに捨てられちゃう・・・・・・って本人は思ってる節があってさ」
ローナは眠るマァチの顔を撫でる。もちろんその手で彼女に触れることはできないため無意味な行為ではある。
無意味な行為ではあるけれど、それでもローナはやりたいと思っているからこそその行動をとっている。
「それでタナカ君が褒められてるのを見て、自分の取って代わる存在が現れたと警戒したんだろうね。
いつも不機嫌なのも、口が悪いのも、そういう恐怖心の裏返しなんだと思う」
「安心しろ。俺はお前たちの仲間にはなりたくない」
「安心しろ!! みんな同じこと思ってるぞ!!」
「なら、安心」
そう呟くタナカを見て、ローナは少しだけ笑った。
「要するにさ。ちびっ子なんだよマァチは。怖いという感情そのものに怯えるちびっ子。
だから、今までで一番勝手なお願いだけど聞いて欲しいの。この子が何言ってもちびっ子の戯言だと思って流してあげて」
「それにマァチは寂しがり屋なんだ!!」
「なんか自分達を棚上げしてるようだが、お前らも大概だからな?
そもそも俺が許そうが許すまいがお前らは好き勝手するだろ」
ローナとアストリアは何食わぬ顔で頷く。
「うん、だろうな。とにかく、こいつがちびっ子だってことだけは認めてやるよ。
ただ、デーツが俺の事気に入ってるなんてわけのわかんねえ誤解はもう勘弁だぜ」
その言葉にローナは一瞬考え込むが、すぐに笑顔で返事をする。
「まあそれを抜きにしても、みんながタナカ君の事を嫌いなのは変わらないからさ。身の安全は保証されないのは確実だよ。安心して」
「保証がないの後に、安心してって言葉が続くのおかしくね?
もうなんでもいいや。俺、なんか眠いや」
タナカはダメージのせいもあってか、そのまま眠りに入る。
彼を抱えてるアストリアが、大声で何か言いそうだったので、ローナは口元に指を立てて静観を促す。
流石のアストリアにもその意図がわかったのか、彼女は黙ってタナカを降ろす。
「二人共寝ちゃったし、今日は私達で朝ご飯作ろうか。流石に昨日の残り物出すのも団長達に悪いし」
ローナの言葉にアストリアは黙って頷き、二人は要塞の中に入っていった。
一方みなさんお忘れではないだろうか、タナカが戦いの最中に出した農家さんのことを。
「耕すベー!」
と、今も元気よく土のない場所にクワを下ろしている。
しかし、そのクワが運悪くマァチの杖に当たり音声が流れ始めた。
【「おばさん」「おばさん」「おばさん」】
と、またしてもおばさんコールが大音量で流れる。
「いやー今日はハメにハメを外し過ぎたよ」
「さて、子供たちはいい子に留守番してるだろうかな」
そして運悪く、同じタイミングでバーベラとデーツが帰宅する。
さて、この後どうなったかは省略するが、やはりローナの言う通り、タナカの安全の保証はされていないのは確かであった。
次回へつづく。
ローナが慌てて電気フィールドまで飛んでいく。
しかし、フィールド内に入った途端にローナの霊体が砂嵐のように乱れだした。
「な、なんだ!?」
「原理はわからないけど幽霊って、電気が強いと体が思うように動かせなくって」
「な、ら、無理し、て、入、るなよ」
タナカは口の動きもおぼつかなくなって、言葉がうまく発せられないようになっている。
「でも、入らないとマァチの体も危険なの!」
タナカはマァチの方を見る。いつも無表情な彼女であるが、苦悶のために顔を歪ませている。彼女にもダメージがあるのは確かであった。
「マァチ! もうやめよう! こんなバカとのバカな戦いにムキになるなんてバカバカしいよ!」
バカを連呼しているローナだが、これでもかなり真剣な表情で訴えている。
そしてマァチの方へ向かうも、体が思うように動けないのか、砂嵐のように体がバラバラになっては戻るを繰り返した。
「団長は渡さない! 渡さない!」
「だ、なんで、だ、で俺」
最早呂律が回らないために言い返す言葉が出てこないタナカ。このまま焼け死んでしまうのか。
そんな時、タナカの目の前に何かが飛んでくる。トイ・レットーだ。
「な!?」
なぜこんなところにトイ・レットーが? と投げられた方を一斉に向く三人。そこには親指を立てて誇らしげな表情をしたアストリアが立っていた。
マァチとローナは呆気に取られたが、タナカだけは何かを察したようで、全身全霊に力を込めてトイ・レットーの元まで歩いていく。
その距離は僅か1メートル程であるが、1センチ足を進めるのにも、今のタナカには困難な状態。
それはまるで、彫像の脚を素手で曲げるが如く、不可能に思える挑戦。
だが、"その挑戦に俺は勝った"と言わんばかりに、彼はトイ・レットーの穴に顔を突っ込むのであった。
「あれは!」
呆気に取られていたマァチもローナもタナカの方に目をやった。それと同時に、タナカは穴に顔を突っ込んだまま逆立ちする。そのピンとした足の張り様は、天空にまでそびえ立つ塔である。
「ぷっ! ふふふ、あははははは」
その光景を見てマァチは膝から崩れ落ちて、腹を抱えて大爆笑をした。そして力が抜けたために、電気のフィールドが崩れていく。
「よし、今だ!」
ローナは空かさずマァチの体に取り憑き、その行動権を掌握した。
「もうこんなことしちゃダメだよー」
マァチ自身の手を使って、彼女の頭を撫でるローナ。
「で、でもあいつがふふふっ」
意識を完全に乗っ取りきれていないのか、時々笑い声混じりのマァチの反抗の声が漏れる。
「大丈夫大丈夫。あのアホ代表みたいな格好を見なよ。あんなことしてる奴を誰が好きになると思う?」
別に自分だって好きでこんなアホ代表みたいな格好をやったわけじゃないと、タナカは穴の中で思ったが、マァチが落ち着くならと、喜んでアホ代表の格好を続けた。そしてあることに気がついた。
「ちょ、あ、待って。抜けなくなった。あ、マジで、あ、ちょ」
「ふひっ!!!!」
その一言にマァチは声にならない声で笑った。そしてひとしきり笑い終えた後で、ローナがマァチの体を借りながら、優しく語りかけ横になる。
「大丈夫もう大丈夫だよ。ゆっくりおやすみ」
そしてマァチが眠りにつくと、ローナは体を抜け出た。
「いやー見事な恥晒しだったねタナカ君」
「俺は日に何度、褒めと侮辱を同時に受けにゃならんのか」
そんなタナカをアストリアが穴の中から引き出す。
「それよりアスティ、いいアイディアだったね。トイ・レットーとタナカ君の組み合わせはマァチのツボだもの」
「なんの話だ!!? 私はもうすぐ朝だから朝ごはんを持ってきただけだぞ!!!」
アストリアはトイ・レットーの中に残ったミートボールを入れて持って来たらしく、タナカの顔にはミートボールがくっついていた。
「なんにせよ助かったぜ」
タナカは今だに動けず、体が伸び切ったままアストリアの脇に抱えられている。そして朝日が彼の顔にさした。
「酷い夜だった・・・・・・」
「ごめんね。だけどマァチのことは許してあげて欲しいの。この子はタナカ君を怖がってるんだよ」
「俺を? 怖がる?」
「なんとなく察してると思うけど、マァチは杖がないと魔法が使えない。
だから杖を奪われたら、ただただ普通の女の子になっちゃう、みんなの足手まといになっちゃう、みんなに捨てられちゃう・・・・・・って本人は思ってる節があってさ」
ローナは眠るマァチの顔を撫でる。もちろんその手で彼女に触れることはできないため無意味な行為ではある。
無意味な行為ではあるけれど、それでもローナはやりたいと思っているからこそその行動をとっている。
「それでタナカ君が褒められてるのを見て、自分の取って代わる存在が現れたと警戒したんだろうね。
いつも不機嫌なのも、口が悪いのも、そういう恐怖心の裏返しなんだと思う」
「安心しろ。俺はお前たちの仲間にはなりたくない」
「安心しろ!! みんな同じこと思ってるぞ!!」
「なら、安心」
そう呟くタナカを見て、ローナは少しだけ笑った。
「要するにさ。ちびっ子なんだよマァチは。怖いという感情そのものに怯えるちびっ子。
だから、今までで一番勝手なお願いだけど聞いて欲しいの。この子が何言ってもちびっ子の戯言だと思って流してあげて」
「それにマァチは寂しがり屋なんだ!!」
「なんか自分達を棚上げしてるようだが、お前らも大概だからな?
そもそも俺が許そうが許すまいがお前らは好き勝手するだろ」
ローナとアストリアは何食わぬ顔で頷く。
「うん、だろうな。とにかく、こいつがちびっ子だってことだけは認めてやるよ。
ただ、デーツが俺の事気に入ってるなんてわけのわかんねえ誤解はもう勘弁だぜ」
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「まあそれを抜きにしても、みんながタナカ君の事を嫌いなのは変わらないからさ。身の安全は保証されないのは確実だよ。安心して」
「保証がないの後に、安心してって言葉が続くのおかしくね?
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一方みなさんお忘れではないだろうか、タナカが戦いの最中に出した農家さんのことを。
「耕すベー!」
と、今も元気よく土のない場所にクワを下ろしている。
しかし、そのクワが運悪くマァチの杖に当たり音声が流れ始めた。
【「おばさん」「おばさん」「おばさん」】
と、またしてもおばさんコールが大音量で流れる。
「いやー今日はハメにハメを外し過ぎたよ」
「さて、子供たちはいい子に留守番してるだろうかな」
そして運悪く、同じタイミングでバーベラとデーツが帰宅する。
さて、この後どうなったかは省略するが、やはりローナの言う通り、タナカの安全の保証はされていないのは確かであった。
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