初恋と嫌いな人

noraneko

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初恋と嫌いな人

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「地味で目立たない子」

クラスに一人ぐらいは存在する、
所謂、影の薄い印象に残らない子。


桂木 舞香はそんな子だった。


10年後、私達は同窓会で再会した。


彼女はダークブラウンの長い髪を巻き、ブルーのワンピースからすらりと伸びる華奢な手足はまるでモデルのような存在感を放っていた。


彼女がやってくるなり、クラス一同視線は彼女に集まった。


「誰だっけ?あんな子いた?」


今でも付き合いのある友人に耳元で囁かれた。


「桂木さんだよ」

私はそう口にする。
そう口にはしたけれど、彼女との付き合いはなかった。

一言、二言交わしたことさえあっただろうか?

でも、私は大嫌いだった。
彼女が本当に嫌いだった。


「う~ん、覚えてないなぁ」


数年前にも開かれた同窓会には彼女はやって来なかったはずだ。


「綺麗だな~」男性陣の声がいたるところからあがっている。


「舞香~こっちこっち」


背後から大きな声で彼女を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、隆弘だった。


クラスの中で一番お調子者で成績は悪かったけど、見た目もかっこ良くて人気者。


隆弘と舞香は対極的な存在だったけれど、仲良くしていた。


舞香は隆弘に手を振り、こちらには視線も向けずに彼の元に向かって行く。


私は彼女の姿を目で追った。
ふと、学生時代の自分を思い出し慌てて視線をそらした。

「隆弘と仲良かったんだね。」

「うん…そ、そうみたいだね。」


「桂木さん、なんかすげー変わったよな」

テーブルの向かいに座っている、
高貴は口にした。


「綺麗だよね~」
私は微笑んでいたけれど、引きつって笑っていないか不安になった。

「涼子と朱莉は全然昔からの変わってないなぁ~」

「どういう意味よ、それ」

隣に座る朱莉は頬を膨らませた。

「なんだよ、いい意味で言ってんだよ」

「そう?若いってこと?」

「そうそう」


私は変わってないと確かに思う。


だって、私は隆弘が好きだった。
誰にも言わなかったけれど、
彼をいつも目で追っていた。

でも、ある時突然その視界に舞香が何度も現れたのだ。

隆弘と楽しそうに話す舞香が嫌いだった。

隆弘も私と話す時より、舞香と話す方が楽しそうだった。

昔の話なのに今も目で追ってしまうなんて変わってないなって思ってしまった。

もう10年も昔の話だ。
今は何とも思ってないけれど、
恥ずかしくて好きなのに積極的になれなかったのは少し後悔するところだ。

「みんな~!発表がありまーす!」

隆弘の声だ。

「俺、隆弘くんはなんと舞香と結婚しまーす!!」

驚きの声と拍手が起こった。

舞香は恥ずかしそうに俯き、顔を真っ赤にしていた。

悪い子じゃなかったんだね。

私は心からの笑顔で二人に思いきり拍手を送った。

素直に喜んでいた。

「おめでとう~」
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