ひとりとひとり

noraneko

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ひとりとひとり

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「ねぇ、なんで君はいつも一人で居るの?」


彼は両手に缶ジュースを持ち、片方をベンチに座る彼女に差し出しながら聞いた。


「一人で居たいから。」


差し出されたジュースを受け取りながらそう口にした。

「そっか。」


彼はそう呟くとジュースを開けて口に含んだ。

「じゃあ、なんで君は一人なの?」


「俺は一人で居るほうが、マシだから」


「じゃあ、なんで私に話しかけたの。一人のほうがいいんでしょ?」


「なんていうか、君に興味が湧いたんだ。はじめてね。だから思い切って聞いてみた。」


「そっか。」


「そう。」


「ジュースありがとう。じゃあね。」


彼女は彼に背を向け、屋上から去ろうとしていた。


「じゃあ、またね。」


彼は彼女の背中に声をかけた。
またね。だけが予想外にも声が大きくなっていた。

またね。
彼は自分で口にして驚いた。


この言葉を今までに使うことを避けていたからだ。

またなんてめんどくさい。
そう思っていたからだ。

彼女が去ってから、彼は微笑んだままベンチに寝転がった。


「なーに、言ってんだろ自分。」
空を見上げてため息をついた。

授業の終わりのチャイムが響いていた。

「さぁ、かーえろ。」


翌日も彼は屋上に行ったが彼女はいなかった。

彼女の学年やクラス、名前すらも知らない。
ただ、知ってるのは何度か学校の中と外で彼女が一人で居るところを目撃したからだ。

だけど、一人で居たのはたまたまであっていつもではないかもしれない。

実はそう思って彼女が一人で屋上に向かって行くのを見つけて話すきっかけに自販機でジュースを買い持って行き、声をかけてみたのだ。

あまり人に興味も執着もないけれど、
何故か気になってしまった。

どうしてだか、分からないけど自分と同じと感じたからなのか、おそらく単なる興味本位だ。

数日置きに屋上へ来ることが日課になりベンチに寝転がりながら、
目を閉じて考えていた。

彼女とはあれから1週間ほど会えていない。

彼女のことは気になっていたが、
毎日ここに一人でいないと知り少しだけ安堵していたことは否めない。

短いようで長い学校生活。
辛いものであることは出来るだけ避けられるならばそれが一番だ。

一人で居ることを楽しめる人とそうではない人もいる。

彼女がどちらなのかは分からないが、
後者であるならば一人は避けるべきだ。

「ねぇ、なんで君はいつも一人でいるの?」

声がして目を開けると、彼女が立っていた。

驚きながらベンチから起き上がる。

すると彼女はジュースを差し出してきた。

「ありがとう。」

「この間のお返し。」

おれは笑った。

「君の名前は?俺はまさと。」

「…みき」

「名前?苗字?」

「名前」

「いい名前だね。」

「君ってストレートな話し方するね」

「え?そうかな?」

「そう」 

彼女は微笑んだ。

優しそうな笑顔だった。
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