男だけど幼馴染の男と結婚する事になった

小熊井つん

文字の大きさ
32 / 35
新婚生活編

【番外編】修学旅行(攻め視点)

しおりを挟む
それは高校の修学旅行1日目の事。

俺たちは北海道行きの飛行機に乗っていた。
まだ離陸前の機内は生徒達の楽しげな声で溢れている。

俺の隣に座っている瞬ちゃんはというと、何やら真剣な表情でスマホを操作している。
ちらりと見えた画面には検索欄に『飛行機 墜落 原因』など不穏な単語が並んでいた。

「……瞬ちゃん、もしかして飛行機が怖いの?」
「う゛っ」
図星を突かれたのか、瞬ちゃんは小さく肩を揺らした。
「別に?全然怖くないし」
「じゃあなんでそんなに必死こいて調べてるのさ」
「こ、これはただの暇つぶしって言うか……」
明らかに動揺している様子に思わず吹き出しそうになるが、なんとか堪える。
恐らく、数日前に放送していた九死に一生系のバラエティ番組を見た影響だと思う。
リアルな再現VTRのせいで余計に恐怖心を煽られてしまったのだろう。
瞬ちゃんは昔からあの手の番組が苦手なくせに怖いもの見たさでつい見てしまうタイプなのだ。

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。死ぬ時は一緒だから」
「縁起でもない事言うな!」
「ふふ、ごめんってば~」

そんなやりとりとをしていると機内アナウンスが流れ始め、いよいよ離陸の時が来たようだ。
「ほら瞬ちゃん、もうすぐ飛び立つみたいだよ」
「分かってるよ……」
俺が促すと瞬ちゃんは渋々といった感じでスマホをポケットへしまい、シートベルトを装着した。
そして少し間を置いてから機体が揺れ
、ゆっくりと滑走路に向かって動き出す。
徐々に加速していく機体の振動を感じてか隣からは微かに震えた声が聞こえてきた。

「け、彗!ちょっと手ぇ貸せ」
「あはは、瞬ちゃんまじでビビリすぎじゃない?」
「うるさい」
俺が笑いながら手を差し伸べると、瞬ちゃんは俺の手を強く掴んだ。
その瞬間、機体は空高く舞い上がる。
ふわりとした浮遊感が心地良い。

隣の瞬ちゃんは相変わらず俺の手をぎゅっと握っているが、もうその手の震えはなかった。

(なんかかわいいなぁ)

なるべく平静を装ってはいたが、想い人に手を握られるというシチュエーションに胸の鼓動が速くなっていくのを感じていた。

きっとこの手はじきに振り解かれて、彼は恥ずかしそうに顔を背けるのだろう。
その光景が容易に想像出来てしまい、それがなんだか寂しく思えた。
「瞬ちゃん、窓の外見てみなよ。建物がちっちゃく見えるよ」
「う……」
瞬ちゃんは恐る恐る窓の外へと目を向けた。
「……本当だ」
先程までの怯えきった顔とは打って変わって、窓から覗く景色に夢中になっているようだった。
窓際の席を譲ってよかったと心から思う。

「なんか人間が空飛んでるって変な感じだよな」
「あはは、確かに。しかもこんな大勢で飛んでるとこ想像するとちょっと面白いかも」

落ち着きを取り戻した瞬ちゃんは雑談を振る余裕すら見せていたが、予想に反して彼の手はまだしっかりと繋がれたままだった。
このまま気付かなければ良いのに、と願ったがどうやらそういう訳にはいかないらしい。

「あっ悪い。忘れてた」
瞬ちゃんは慌てて俺の手を振り解くと、気恥ずかしそうな表情を浮かべていた。
「着陸の時も手貸してあげよっか」
「もう慣れたからいらん」
「冗談だってば~」
「お前なぁ……」
俺が茶化すように笑うと、瞬ちゃんは呆れ果てて溜息をついた。

「でも隣がお前で良かったわ」
「え、どうして?」
「だって他の奴にはこんな事頼めねーし……」
今日ばかりは彼にとって自分は特別な存在なのだと自惚れてしまう事を許して欲しい。

「女子の隣だったらとんでもない醜態晒してたとこだったね」
「……それは否定できない」
「ふふ、じゃあこれからもずっと隣にいてあげよっかなー」
悪戯っぽく微笑むと、彼は少しムッとした表情を見せた。
「調子乗んな」
照れ隠しなのか瞬ちゃんは俺の肘を軽く小突いた。
「……まあでも、いざって時は頼りにしてやってもいい」
「あはは、なに目線なのそれ」

その後、飛行機は無事北海道の地に降り立ったが、着陸の際瞬ちゃんが咄嗟に俺の手を掴んだ事は二人だけの秘密である。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

【幼馴染DK】至って、普通。

りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話

雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。  諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。  実は翔には諒平に隠している事実があり——。 諒平(20)攻め。大学生。 翔(20) 受け。大学生。 慶介(21)翔と同じサークルの友人。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

処理中です...