【完結】恋なんてしない、つもりだったのに。

高羽志雨

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16.動物園(2)

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 チケットは無理やり着いてきたからっていう理由で、大輝が払ってくれた。
 お礼を言って、2人でゲートをくぐる。取り立てて目当ての動物がいるわけではないので、入り口から一番近いところにいる鳥エリアから見て回ることにした。
 千紗は歩きながらリュックサックを開けてカメラを取り出す。

「あ、モデルって言ってもポーズとかとらなくていいよ。カメラも意識しないで好きに動物を見てて。動物をソロで撮ったり、勝手に南くんと動物のツーショット撮ったりするから」

 大輝は、「んー」と乗り気なのかそうでもないのかよくわからない返事をして、お尻のあたりで両手を組んで足を速めて先を歩き始めた。

「フラミンゴだ」

 レンズを装着しながら後ろをついていっていた千紗が目を上げると、大輝は飛び跳ねるようにフラミンゴに近づいている。
 美人な女性よりも美人と評される大輝がはしゃいでいるのがおもしろくて、思わずシャッターを切った。フラミンゴも負けじとピンクの体を伸ばしてくちばしを少し上に向け、きどったポーズをとっている。フラミンゴのソロショットも忘れず撮った。

 太陽が頂点に達する前だからなのか、ライトの代わりをしてくれているような日差しの角度だ。
 クジャクやキジ、鶴といった鳥を順に撮影して次のエリアに行く。

 次は猛獣のエリアだった。虎やライオン、ヒョウ、象たちが雄々しさを見せつつ優雅に過ごしている。ゆったりと寝そべるメスに寄り添うように周りを歩くオスのライオンに魅かれた。

「かっこいい。夫婦かな。恋人かな。南くんは適当に檻の近くにいてね」

 大輝は檻に近づいてライオンに笑いかけたり、虎とにらみ合ったり、象の前で自分の身長と比べたりする。その様子を次々、カメラに収めていく。もちろん、動物のソロショットも忘れずに。

 その後、熊エリア、猿エリア、草食動物エリアの順に回り、コミカルな姿やたくましい様子、大きな体の割にかわいらしい姿を写真に撮った。一眼レフのレンズをカメラから外してリュックに片付けながら、カンガルーと真似をして両足で軽くジャンプしていた大輝に声をかける。

「私、トイレに行ってくる」

 大輝がジャンプを止めて、こちらを向いた。

「俺、喉乾いたから飲み物買って、この辺にいるよ。松村さんも飲むでしょ」

 お互い背を向けて、目的の方向へ歩き始めた。
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