【完結】恋なんてしない、つもりだったのに。

高羽志雨

文字の大きさ
46 / 80

30.ダブルデート~遊園地に到着~

しおりを挟む
 ここの遊園地は、巨大迷路や謎解きアドベンチャーなどキッズ用のアトラクションが充実しているせいか、幼児がいる家族連れが目立つ。
 
 千紗たちもゲートを入って、どのアトラクションに向かうかを入り口でもらった園内マップを見て、回る順番を相談する。
 大輝と並んで歩く蓮が、後ろを歩く千紗と悠里を振り返った。

「せっかく4人だしさ、4人乗りのアトラクションが2つあるから、それから順番に行こうぜ」

 千紗がマップ上を指でたどる。

「これね。ウォーターライドとコースター。ここからだとコースターの方が近いね」

「じゃ、こっち」

 ちょうど道が2股に分かれていた。大輝が右の道を指さす。
 

 
 4人乗りコースターは乗り物自体が小さく小回りがきくせいで、急カーブや急な方向転換が多かった。
 さんざん叫んだ千紗と悠里は声が枯れている。大輝はあきれたような目をしていた。
 
 美人顔の冷たい目はことさらきつく感じる。

「1個目だよ。声枯らすの早すぎだろ」

 蓮と2人で笑い声を立てている。

 ウォーターライドでは前に座った大輝と蓮がクライマックスで水しぶきを浴び、顔と頭がずぶぬれになっていた。
1人は短髪のスポーツマン、1人はさらさら茶髪の美人顔、そんな整った顔立ちの2人が水にぬれている姿を見て、近くを通る女の子たちがそろって目をハートにさせていた。

 髪についた水を飛ばすように頭を振った大輝がつぶやく。

「思ったより2つとも激しい乗り物だったから、次は乗り物以外にしてくれ」

 濡れた服と髪を気にする男子2人を放って、千紗と悠里は園内マップをのぞきこむ。地図上のある場所に悠里がすらっとした人差し指をおく。

「期間限定でお化け屋敷やってる。ここ行こ」

 千紗はマップから顔を上げて目を見開いて、大きく首を横に振る。

「他のとこにしよーよ。迷路とか謎解きとかあるよ」

 ほんの一瞬だけ真顔になった悠里が、片方だけ口角を上げて千紗を見た。そして、横に並ぶように立っていた大輝と蓮のほうへ顔を向ける。

「次、お化け屋敷ね。蓮も南くんもOK?」

 大輝はうなずき、蓮は右手の親指を立てた。

 園内には軽やかな音楽が流れている。
 心が弾むメロディを耳にしながら、千紗はお化け屋敷のことを考えて気分が沈んだ。足取りが重くなったのをさとられ、悠里にひきずられるようにお化け屋敷へと連れていかれた。
 
 江戸時代をテーマにしたお化け屋敷のようで、入り口から井戸や穴の開いた襖がおどろおどろしく表現されている。
 ここは1人もしくは2人でしか入れないらしい。

 当然のように、蓮と悠里、大輝と千紗のペアに分かれる。どちらが入るか決めようと、蓮と大輝のじゃんけんが始まった。
 結果、負けた大輝から行くことになり、ペアの千紗もついていく。

 入り口を入ってすぐ、千紗は大輝の袖をつかんだ。

「ごめん。つかませて。絶対1人にしないでね。お願い」

 すでに真っ暗で一歩先しか見えていない。頭の上から大輝の声が聞こえた。

「松村さん、怖いんだ」

「こ、怖くないよっ。苦手なだけ。暗いからはぐれたら困るでしょ」

「ははっ。苦手と怖いの違いってなんだよ。はぐれたら出口で待ち合わせすればいいよ」

 わずかな光を頼りに、突き放すようなことを言う大輝をにらみつける。
 肩を震わせているところをみると、からかっているだけのようだ。

「じゃ、手つなごっか」

 大輝は返事を待たずに、自分の服の袖をつかんでいた千紗の手を取って握ってきた。千紗は手を引きかけたけれど、強く握られているのでゆだねることにした。すると、その手が少し緩み、指と指を絡める恋人つなぎに変えられていった。

 千紗の心臓はギュッとつかまれたようになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

処理中です...