【完結】恋なんてしない、つもりだったのに。

高羽志雨

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45.元カノの話(2)

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 目線をリオに向け、電話に出る意思表示をして通話をタップする。

「もしもし、大輝くん」

『あ、千紗。今どこ。店にいるってメール来てたから、店に入ったのにいないじゃん。自転車おいたまま、どこにいってんだよ』

「通りの向かいの公園。リオさんと一緒にいる」

『は?リオと?すぐ行くから。待ってて』

 耳から離す前に通話が切れたことがわかった。携帯電話を目の前に持ってきて、時間を確認する。21時18分だった。

「で、大輝はなんて?ここにくるって?」

 リオの問いに千紗はうなずく。

「大輝くんと別れてってことですけど。私は大輝くんが好きだから、別れません。でも、大輝くんに他に好きな人ができて別れてほしいと言われたら受け入れます」

 リオの表情が花開いたようになる。
 外灯があるとはいえ、真っ暗な夜。リオだけが真昼間にいると勘違いしていそうに見えた。

 公園の入り口があるほうから、足音と息切れが聞こえてきた。顔を上げて、そちらを見る。
 リオもつられて、入り口のほうへと顔を向けた。近づいてくる黒い影に外灯の明かりがあたる。大輝が腕で汗を拭きながら、千紗とリオが座るベンチへと向かってくる。

 リオは立ち上がって、千紗と2人の時には見せなかった柔らかい笑みを浮かべ、近づいた大輝の腕をつかんだ。見上げるように大輝を見る顔は媚びを売っているようにしか見えない。そんなリオの手を大輝は自分の腕から離させて、千紗のほうへと寄ってきた。

「千紗、なんで2人で先に話し始めるんだよ」

 そう千紗に話しかけた大輝が止まった。リオへと顔を向ける。

「リオ、今日、バイト21時までじゃなかったのかよ。いくらなんでも着くの早すぎないか」

 大輝の腕から離させられた自分の手を見つめていたリオが、ベンチへ座る。

「30分前に早退させてもらったの。大輝が来る前に、彼女と話したくて」

 大輝が千紗のリュックサックをよけて、リオと千紗の間に座った。

「何の話を2人でするんだよ」

 大輝が頭をかく。

「ま、いいわ。リオに聞きたいこととか、言いたいこととかあるけど。ストーカーでっちあげたこととか、海東さんのこととか。いろいろ考えながら来たんだけどさ。とりあえず一つ聞かせて。なんで、ストーカーでっち上げてまで、俺にボディガードみたいなことさせた?」

 リオが少し大輝に近づいた。

「大輝と付き合いたいから。何股もかけてたのを全部断って、1人の子と付き合ってるって聞いたから、無理やり一緒の時間をとって、私と付き合ってた時のことを思い出してもらおうと思ったの。思い出したら、きっと大輝は私への気持ちも戻るだろうって」

 大輝がため息をついた。かまわずリオは続ける。

「私がストーカーに付きまとわれてるから助けてって言ったら、すぐに送り迎えしてくれるって言ってくれたでしょ。嬉しかった。私のこと心配してくれたんだよね。自分が守ろうって思ってくれたんでしょ。また付き合おうよ」

「それなら俺に話すればいいだろ。なんで、千紗をわざわざ呼び出したんだよ」

「だって、いくら一緒にいても、手をつないでこないし、腕を組もうとしたら拒まれるし、家に上がってっていっても断るじゃない」

 千紗に細めた目を向けてくる。冷ややかな感じだ。

「あー、彼女に気を使ってんのかなって。何股もかけられるんだから、彼女のことなんて気にする必要ないのに。でも、今の彼女の存在が足枷なら外してあげようと思ったのよ」

 リオが大輝の太ももに手を乗せた。
 千紗の眉は反射的に上がったけれど、大輝がリオの手を振り払ったおかげで、すぐに眉は元の位置に戻る。
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