獣人騎士団長の溺愛

スミー

文字の大きさ
25 / 36
出会い

24話

しおりを挟む
 「リリー!これは一体どういうことだ!?」

 こんなはずではなかった。リリーをここで働かせれば賃金の半分は自分に入る予定だった。フローラは我が娘ながら美人だ。いずれ裕福な家の男と結婚するだろう、そうすればこんな貧乏な生活から抜け出せる。ベンはそう考えていた。それなのに!それなのに!!苛立ちをぶつけるようにベンはリリーに向かって叫んだ。

「私ね聞いてたの。お父さんとお母さんが村長の家で話していたことも…お姉ちゃんが湖でアシュレイ様と話していたことも…。」

 リリーはアシュレイの胸に埋めていた顔を3人の方に向けて悲しそうに呟く。3人は聞かれていたとは思わず、言い訳が効かない状況に焦り出す。

「「「……。」」」

 何も言えないでいるとアシュレイがソファの前に立ち3人を見下す。

「リリーは全部知っていながらお前たちのことを許そうとしていたんだぞ。」

「「「えっ!?」」」

 アシュレイにそう言われて3人は俯いていた顔を上げて縋るようにリリーを見つめる。そんな3人にリリーは我慢ならないと手を固く握りしめた。何故これだけのことをして縋るように見てくるのか。話を聞いていたと言ったのに謝ることすらしていない。
 リリーは家族のために今まで頑張ってきた。貧乏でも食べるのには困らなかったし毎日仕事でしんどい時もあったけど充実していた。けれど3人はそうではなかった。それがリリーには悲しかった。

「お前たちはここまで言ってもリリーに謝ろうとしないんだな…。なぁリリーもういいだろう?俺と一緒に王都に行こう。」

 悲しそうにしているリリーを見てアシュレイは辛そうに抱いているリリーをさらに抱きしめて耳元で囁く。

「私ね、お茶を飲んで眠らされたときあぁここまでするんだって思った。ここに連れて来られた時も嫌がってる私を見て思い直してくれないかなって思った。そうすればまた家族4人でやり直せるんじゃないかって…。」

「リリー一体何を…」

 ベンが口を挟もうとするがリリーは無視して話を続ける。

「ミランダさんの家に泊まった時にアシュレイ様にお願いしてたの。私アシュレイ様に着いていきたいと思ったの。でも家族と離れるのも嫌だった。だからもしみんなが私を売るのを思い直してくれるのなら家族で王都に連れて行って欲しいって。仕事を紹介してもらってまた家族四人で暮らせたらって…」

 そう言うと3人は目を輝かせてリリーを見た。そして口々に言い始める。

「リリーすまなかった!!許してくれっ。」

「リリーごめんなさいっ!お母さんたちが間違ってたわ!」

「どうかしてたわ。可愛い妹を売ろうとするなんて!本当にごめんなさい。」

 3人は必死に謝るがもう遅かった。リリーははっきりと嫌だと言った。考えて直してくれたら聞いてしまったことは胸の中に仕舞い込んで今まで通り頑張ろうと思っていたのに…。今も王都に連れて行くつもりだったと言う話がでたから謝っているのであって本当に私に悪いと思ってはいないだろう。リリーは何の感情のこもっていない目で謝る3人を見下ろしていた。

 
 アシュレイは憤っていた。今まで誤りもせず“王都”という単語を出しただけで必死に謝ってくる。どこまでリリーの心を傷つければ気がすむのだと思いながらリリーの顔を見てみると何も感情のこもらない目で3人を見下ろしている。アシュレイは背中にゾクっとしたものを感じながらリリーを落とさないようしっかりと抱き直した。

「もういいよ。」

 リリーはポツリと呟く。許してもらえたのかと淡い期待を抱いた3人は顔を上げリリーの顔を見る。しかし顔を見た途端それは間違いだったことに気付く。

「もういいの…もう遅いよ。私アシュレイ様と2人で王都に行く。」

「そっそんな!そしたら私たちはこれからどうすればっ!」

 焦ったようにアンナがリリーに縋りつこうとするがアシュレイにそれを阻まれる。リリーももう何も聞きたくないと再びアシュレイの胸に顔を埋めた。

「そんなことはお前たちがどうにかすることだ。商会長、この契約にリリーの同意はなかった。契約は破棄で構わないな。」

 アシュレイはもうこんなところにリリーを居させたくないと話を終わらせようとする。

「ええ、本人の同意もないもを契約とは言えません。しかし、こちらを騙していたと言うことで慰謝料は請求させてだだきたく思います。」

「それはそちらで話し合うといい。俺たちはもう行く。…あぁ、それと商会長…村人を食い物に契約を結ぶのはやめた方がいいと思うぞ。」

 そっと商会長の耳元に口を近づけアシュレイは囁く。商会長は顔を青くしながらご忠告恐れ入ります…と呟いた。

 アシュレイはもうここに用はないとドアに向かって歩き出す。

「待って!お願い私も連れて行って!!」

ーーーバタン。

 フローラがアシュレイとリリーに手を伸ばすが2人は振り返ることなく部屋から出ていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜

恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。 だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。 自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。 しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で…… ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています ※完結まで毎日投稿します

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

処理中です...