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第13話 世界征服を目指して
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地下は上階とはまったく異なった様相を呈していた。
黒で統一されたカラーリングに、いたるところで骸骨や蛇をモチーフにしたキャンドルがともる。いかにも悪の秘密結社が好むおどろおどろしいデザインだ。
はっきり言って趣味が悪い。
ぼくが運び込まれた部屋はホテルのロビーほどの広さがあり、中央には赤いじゅうたんが敷かれている。
そしてその先にはまさに大王の椅子と呼ぶにふさわしい、奇怪なデザインが施された玉座が置かれている。
両脇を三村さんと四ツ柳さんにつかまれたぼくは、玉座に向かい合う形で立たされていた。
突然部屋中に『ダースベーダーのテーマ』をへたくそにアレンジしたようなミュージックが響き、部屋の奥から黒いマントをなびかせて、御堂博士が入ってくる。
頭にはドラゴンをかたどった冠をかぶり、手には髑髏を乗せた杖を持っていた。
戦隊ものの悪役コスプレかといういでたちだ。
御堂博士はこれ見よがしにマントを翻すと、座り心地とは無縁と思われるデザイン重視のとげとげした椅子に座って不敵な笑みを浮かべた。
こんな状況でもなければ、恐怖よりも笑いがこみ上げてくるところだが、さすがにこの状況では笑えない。
「あなたは本当に御堂博士なんですか?これはどういうことですか、説明してください」
理不尽な扱いにぼくが声を上げる。
「もちろん私は御堂本人さ。すまなかったね、もっと素直に行きたかったのだが、君があそこで暴れだすから乱暴にせざるを得なかったのだよ。」
御堂博士は骸骨の頭をなでながら話を進めた。
「君はここで何をしているか知りたそうだね。ここはごらんのとおり。悪の秘密結社だよ」
ぼくはぽかーんと口をあけてしまう。なんだ、悪の秘密結社って。
「目的はそう!世界征服」
ビシッと杖を高々と掲げる。完全に自分の世界に酔っている目をしている。
「本当にあなたはあの御堂博士なのですか、世界の御堂がこんなバカなこと……」
「何がバカなことだ!世界征服は私の子供のころからの夢だ。今こそ夢を現実にかえるときなのだ。こうして組織を整えるだけの資金も得た。忠実なしもべもいる」
御堂がマントを翻すと、脇に控えていた黒い人造人間たちがいっせいに右手を上げる。
一糸乱れぬすばらしいチームワークだ。
「そう、あとは強力な怪人さえいればカンペキなのだ」
「仮面ライダーの見すぎですよ、そんなものできるわけが無い」
ぼくはばかばかしいと、頭をふる。
「ふふふ、それができるようになったのだよ。見よ。これが私の開発した怪人作成マシーン『ミックス一号』だ」
部屋の奥にスポットライトが当てられ、二つの筒がつながった大型の機械が目に飛び込んできた。
取ってつけたような看板に『ミックス一号』の文字があった。
あれ、でもなんか見覚えがある気がする。
「右の筒に人間と獰猛な動物を入れて電源を入れるだけで、左の筒からミックス怪人が出来上がるという画期的な代物だ」
見たことあるのも当たり前だ。
ぼくが人体実験一号にされかけた、あの機械だ。
「ああ!あれは加奈子先輩の造った『てんそうくん一号』じゃないですか。まさか、サイカケンのパソコンにハッキングしたのって、あなたですか。この黒い人造人間も、さっきのぼくのコピーも全部そのデータから作り上げたんですね」
御堂の顔に怒りが浮かぶ。
人間本当のことを指摘されると怒るものだ。そして御堂も怒った。
「う、うるさい。これは私が発明したんだ。そしてお前も私の忠実な下部として怪人となるのだ」
御堂の号令に従い三村と四ツ柳がぼくを機械に連れて行こうとする。
そんなことされてたまるかと力を振り絞るが、おかしい。体が言うことを利かない。
「君は回復力がすごいらしいね、筋弛緩剤は通常の三倍量を入れさせてもらったよ。」
これもサイカケンのデータから見つけ出した情報なのか。
「君が怪人になればさぞかし強いだろうな。君と掛け合わせる動物は決めてあるんだ。なんだと思う」
ぼくとしてはそんなものに答えている余裕は無い。やばい、体はまったく言うことを聞かない。
同じ手に二度も引っかかるなんて、ぼくは自分のおろかさをのろった。
ぼくの意思を無視して黒い人形たちはぼくの体を片方の筒の中に押し込む。その間も御堂博士はぼくをベースにして作る怪人の計画を話し続ける。
「それはな『オケラ』だよ。大きな前足をもち攻撃力もある。地中に潜ることもでき、空を飛ぶこともできる完璧な生物だからだ。怪人の素材としては最高だと思わないかい?」
ぼくの体が筒の中にセットされる。足元にはオケラが置かれた。
*うんちく
オケラ【螻蛄】:バッタ目(直翅目)・キリギリス亜目・コオロギ上科・ケラ科に分類される昆虫の総称。コオロギ類の中には地下にトンネルを掘って住居とするものがいくつか知られているが、ケラは採餌行動も地中で行うなど、その中でも特に地中での生活に特化したグループである。主に田んぼによく生息し、水中を泳ぐことも、空を飛ぶこともできる。陸海空を制したスーパー昆虫である。
よりにもよって、オケラってなんだ、まずもってマイナー昆虫じゃないか。せめてカブトムシとかクワガタとか他にもあるだろう、必死に抵抗を試みるが、体はさっぱり言うことを聞かない。
頭の中で歌が流れる。オケラだってー、みんなみんな生きているんだ友達なんだー。
いや、オケラ怪人にされたらきっと、誰も友達にはなってくれないだろう。
奇跡よおこれと、何度も祈るがぼくの体はさっぱりいうことを聞かなかった。さすがに三倍量の筋弛緩剤は強烈だ。
「さあ、怪人の誕生だ」
筒が閉じられ、御堂博士がスイッチを押す……
今まさにボタンに指が振れるという、その直…。黒い塊が御堂の顔に飛び掛った。
「うわっ!なんだこいつは!」
御堂博士は突然襲い掛かってきた物体に驚き尻もちをつく。
ぼくにはその黒い塊に見覚えがあった。
「おこげじゃないか、なんでここに?」
「待たせたわね、モル君」
そこには白衣を翻す加奈子先輩の姿があった。
黒で統一されたカラーリングに、いたるところで骸骨や蛇をモチーフにしたキャンドルがともる。いかにも悪の秘密結社が好むおどろおどろしいデザインだ。
はっきり言って趣味が悪い。
ぼくが運び込まれた部屋はホテルのロビーほどの広さがあり、中央には赤いじゅうたんが敷かれている。
そしてその先にはまさに大王の椅子と呼ぶにふさわしい、奇怪なデザインが施された玉座が置かれている。
両脇を三村さんと四ツ柳さんにつかまれたぼくは、玉座に向かい合う形で立たされていた。
突然部屋中に『ダースベーダーのテーマ』をへたくそにアレンジしたようなミュージックが響き、部屋の奥から黒いマントをなびかせて、御堂博士が入ってくる。
頭にはドラゴンをかたどった冠をかぶり、手には髑髏を乗せた杖を持っていた。
戦隊ものの悪役コスプレかといういでたちだ。
御堂博士はこれ見よがしにマントを翻すと、座り心地とは無縁と思われるデザイン重視のとげとげした椅子に座って不敵な笑みを浮かべた。
こんな状況でもなければ、恐怖よりも笑いがこみ上げてくるところだが、さすがにこの状況では笑えない。
「あなたは本当に御堂博士なんですか?これはどういうことですか、説明してください」
理不尽な扱いにぼくが声を上げる。
「もちろん私は御堂本人さ。すまなかったね、もっと素直に行きたかったのだが、君があそこで暴れだすから乱暴にせざるを得なかったのだよ。」
御堂博士は骸骨の頭をなでながら話を進めた。
「君はここで何をしているか知りたそうだね。ここはごらんのとおり。悪の秘密結社だよ」
ぼくはぽかーんと口をあけてしまう。なんだ、悪の秘密結社って。
「目的はそう!世界征服」
ビシッと杖を高々と掲げる。完全に自分の世界に酔っている目をしている。
「本当にあなたはあの御堂博士なのですか、世界の御堂がこんなバカなこと……」
「何がバカなことだ!世界征服は私の子供のころからの夢だ。今こそ夢を現実にかえるときなのだ。こうして組織を整えるだけの資金も得た。忠実なしもべもいる」
御堂がマントを翻すと、脇に控えていた黒い人造人間たちがいっせいに右手を上げる。
一糸乱れぬすばらしいチームワークだ。
「そう、あとは強力な怪人さえいればカンペキなのだ」
「仮面ライダーの見すぎですよ、そんなものできるわけが無い」
ぼくはばかばかしいと、頭をふる。
「ふふふ、それができるようになったのだよ。見よ。これが私の開発した怪人作成マシーン『ミックス一号』だ」
部屋の奥にスポットライトが当てられ、二つの筒がつながった大型の機械が目に飛び込んできた。
取ってつけたような看板に『ミックス一号』の文字があった。
あれ、でもなんか見覚えがある気がする。
「右の筒に人間と獰猛な動物を入れて電源を入れるだけで、左の筒からミックス怪人が出来上がるという画期的な代物だ」
見たことあるのも当たり前だ。
ぼくが人体実験一号にされかけた、あの機械だ。
「ああ!あれは加奈子先輩の造った『てんそうくん一号』じゃないですか。まさか、サイカケンのパソコンにハッキングしたのって、あなたですか。この黒い人造人間も、さっきのぼくのコピーも全部そのデータから作り上げたんですね」
御堂の顔に怒りが浮かぶ。
人間本当のことを指摘されると怒るものだ。そして御堂も怒った。
「う、うるさい。これは私が発明したんだ。そしてお前も私の忠実な下部として怪人となるのだ」
御堂の号令に従い三村と四ツ柳がぼくを機械に連れて行こうとする。
そんなことされてたまるかと力を振り絞るが、おかしい。体が言うことを利かない。
「君は回復力がすごいらしいね、筋弛緩剤は通常の三倍量を入れさせてもらったよ。」
これもサイカケンのデータから見つけ出した情報なのか。
「君が怪人になればさぞかし強いだろうな。君と掛け合わせる動物は決めてあるんだ。なんだと思う」
ぼくとしてはそんなものに答えている余裕は無い。やばい、体はまったく言うことを聞かない。
同じ手に二度も引っかかるなんて、ぼくは自分のおろかさをのろった。
ぼくの意思を無視して黒い人形たちはぼくの体を片方の筒の中に押し込む。その間も御堂博士はぼくをベースにして作る怪人の計画を話し続ける。
「それはな『オケラ』だよ。大きな前足をもち攻撃力もある。地中に潜ることもでき、空を飛ぶこともできる完璧な生物だからだ。怪人の素材としては最高だと思わないかい?」
ぼくの体が筒の中にセットされる。足元にはオケラが置かれた。
*うんちく
オケラ【螻蛄】:バッタ目(直翅目)・キリギリス亜目・コオロギ上科・ケラ科に分類される昆虫の総称。コオロギ類の中には地下にトンネルを掘って住居とするものがいくつか知られているが、ケラは採餌行動も地中で行うなど、その中でも特に地中での生活に特化したグループである。主に田んぼによく生息し、水中を泳ぐことも、空を飛ぶこともできる。陸海空を制したスーパー昆虫である。
よりにもよって、オケラってなんだ、まずもってマイナー昆虫じゃないか。せめてカブトムシとかクワガタとか他にもあるだろう、必死に抵抗を試みるが、体はさっぱり言うことを聞かない。
頭の中で歌が流れる。オケラだってー、みんなみんな生きているんだ友達なんだー。
いや、オケラ怪人にされたらきっと、誰も友達にはなってくれないだろう。
奇跡よおこれと、何度も祈るがぼくの体はさっぱりいうことを聞かなかった。さすがに三倍量の筋弛緩剤は強烈だ。
「さあ、怪人の誕生だ」
筒が閉じられ、御堂博士がスイッチを押す……
今まさにボタンに指が振れるという、その直…。黒い塊が御堂の顔に飛び掛った。
「うわっ!なんだこいつは!」
御堂博士は突然襲い掛かってきた物体に驚き尻もちをつく。
ぼくにはその黒い塊に見覚えがあった。
「おこげじゃないか、なんでここに?」
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