白水緑【掌握・短編集】

白水緑

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ウサギのリンゴ

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 病気がちだった妹はリンゴが好きで、食後のデザートも間食も、隙あらば食事すらリンゴにしようとしていた。もちろんそんなに食べさせることはなかったけれど、「今日も頑張ったね」とウサギの形に切ったリンゴをあげるのが日課になっていた。

 誕生日を迎え、今日だけはいっぱい食べさせてあげようと思ってリンゴを二つ用意した。いつもは、家で切って持って行っていたけれど、今回はウサギになっていく姿もみせてあげよう。可愛いものが好きなあの子はきっと喜んでくれるに違いない。

 病室につき、プレゼントのリンゴを出して見せると、妹は予想に反して怪訝そうな表情。まさかリンゴを食べたくない日が存在したのだろうか。そんなまさか、という気持ちを抑えて「どうしたの?」と尋ねる。

「こんなのリンゴじゃないわ!」

 え? 首を傾げる私に、妹は続けた。

「リンゴはウサギなのよ。こんなのはリンゴと呼べないわ」

 ふと気づく。妹には最初からウサギ型のリンゴしか出したことがなかった。リンゴだよと渡されたのがウサギ型だったものだから、きっとリンゴはこういう形をしていると思ってしまったのだろう。

 見ていて。と私はナイフを取り出してリンゴを切り分けていく。八等分。耳を作って皮を剥く。

 見たことのある姿に近づいていく様子に、妹は驚いたように目をぱちくりさせて私の手元に見入っているのがわかる。数分後、見慣れたウサギを手渡された妹は再び目を輝かせた。

「すごいわ! この可愛いウサギはお姉ちゃんが作ってくれてたのね」

 褒められた私は鼻高々。無邪気に喜ぶ妹をもっと喜ばせたくていろんなリンゴ型のウサギを作った。耳がおしゃれになっているものから、目や口がついているもの。その度に可愛い! と感動する妹。良い誕生日になっただろうか。

 数時間後。満足そうに眠る妹を見て、私も病室を出る。
 ――明日もまたリンゴ持ってくるからね。
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