白水緑【掌握・短編集】

リストラのプロたち

　新しく入った会社は20名ほどの小さな会社なのに、グループ会社が10社ほどあった。グループ会社といっても全員が同じ場所、同じ業務内容で誰がどこの所属かなんて本人以外わからないようなな状態だった。

「それにしても、リストラされる人材ばかり集めてこの会社は大丈夫なんでしょうか」

　自分のことは棚にあげ、のろのろと作業をする冴えない連中を見る。いかにも、といった連中ばかりだ。

「俺もそろそろ一年だから、もうリストラの時期なんだよな」

　まだ比較的マシな部類のこの先輩がリストラされるのかという驚きと、一年でリストラされるという事実に震えていると、先輩は俺の背中を叩いて笑う。

「三か月したらA社に採用されるから安心しろ」

　A社はグループ会社の一つだ。意味が分からず首を傾げていると、今の会社の前の会社は同じグループ会社のC社。今回で三度目のリストラだと教えてくれた。
　失業保険が出るための条件が勤務期間が半年以上。全社員の平均勤続年数が半年から一年の謎が解けた。