王の男

柴犬まっしぐら

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眼鏡宰相×絶倫王

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「もう呼べる妃はおりません。我が君」

 政務室で苦手な書類と睨めっこをしている大柄な男に、宰相は眼鏡の位置を直しながら冷ややかに告げた。
 太陽を宿したような金の髪。雄々しく、武神のような体。獣神の加護を受け、世界の頂点に立つ王の中の王。それが目の前の男だった。

「あー、ほら、この前入ってきた10番目の」
「10番目の側妃は我が君が連日貪り尽くしたせいで、現在も寝込んでおります。半数は妊娠中。半数は養生中です」
「まじか」
「まじです」

 武にも政にも優れた王は、血筋のせいなのか常人より遥かに性豪であった。それも正妃や側妃を毎晩5人は抱き潰しても足りないほどに。
 ハーレム願望もなく、女性に対して誠実であったが、性欲を常に持て余しているせいでどんどん救済措置という名の側妃が増えてしまったのだ。

 王宮の後宮など、本来ならばギスギスした女の争いがあるものだ。しかしこの王による連日の激務...からか、対立するより協力してなんとか生き延びようとした被害者意識が彼女たちを結束させていた。

「もー、俺様のちんこパンパンよ?破裂しそう」
「少しは我慢と言うものを覚えてくださいサル、いえ我が君。そんなのだから立候補者すらいなくなるのですよ」
「そんなこと言ったってなあ」

 宰相は書類を取り出すと、淡々と読み上げる。
「お妃様方の嘆願書です。体力的に無理。これ以上孕めない。かといって犠牲者(新しい側妃)は増やせない。世継ぎももう十分でしょ?適度って言葉を調べてください。ヤリ殺されそう。そもそもデカすぎるのよ。毎回アヘ顔ダブルピースで失神するこっちの身にもなれ。去勢して欲しい。無理。無理。無理...との怒り、いえ絶望の言葉が続いております」
「お、おう......」

 自分の妃達のあけすけな本音に、王も少し引いている。いや自分の行いがここまで極悪非道であったかと、自覚したようだ。
「かと言って放置しても...ほらよお、ムラムラし過ぎると暴れだしくなるって言うか」
「獣性が強いのも困りものですね」

 1度禁欲したことがあるが、その時は散々だった。まつりごとは滞り、常にイライラし、攻撃性が増すのだ。戦時中ならまだしも、ここ数年平穏な時代が続いている。
 禁欲したあの時は10人相手にしても熱が収まらず、結局は獣用の麻酔銃で昏倒させるという黒歴史が爆誕したのだった。
 禁欲もできない。しかし相手もいない。
 立場上、誰でも良いというわけでもない。
「去勢しますか。お世継ぎも十分ですし」
「冗談はやめ...いやまじな顔だなお前」

 抱ける女は居ない。世継ぎももう十分。
 ならば。

「今夜から私が相手をします」
「............はあ!?」 

 夕飯のメニューでも決めるように、軽くとんでもないことを告げる宰相。
「お前、俺様に抱かれたかったの?」
「やめてください。気持ち悪い」
「えっ!?酷い!?」
「私、男に抱かれる趣味はありませんから。抱かれるのは貴方のほうです」
「お?は???」
「夕食後に伺います......ああ、今夜はあまり食事を取らないように。後ろの準備の仕方はご存知ですよね。無理なようなら従僕にさせてください」
「......??????」
「では我が君。後ほど」

 混乱に大きく口を開けたままの王を残し、宰相は執務室を後にした。青空と小鳥達だけがこの会話を聞いていたのだった。



(俺様は今夜抱かれるらしい)

 後ろの処理を終え、王はぐったりとベッドに横たわっていた。腹の気持ち悪さに1度は萎えるものの、下半身の熱はいつも以上に固くなっていた。

 相手はあの、宰相だ。

 いつだって慇懃無礼を貼り付けたかのような、あの男にだ。
 鎖骨まである銀髪、眼鏡、知的で美しい男から出るのは、鋭利なナイフのような言葉ばかり。
 10代からの付き合いだから......もう半生は一緒にいる。腐れ縁的なものだ。誰よりも己を知っていて、誰よりも助けてきてくれた。信頼のおける臣下。
(そんなあいつに抱かれる?)

 自分の性欲が周りに被害を与えることを知ってはいたが、まさかこんな事になろうとは。
 だがこの話をされた時。それもアリだと、忌避感がない自分にも驚いていた。
「この年で処女喪失か~」
「お気楽な反応ですね」
「!」

 風呂上がりなのか、ややしっとりした髪の宰相が立っていた。いつものようにカッチリした制服でもなく。珍しくラフな服装だ。
「......お前、そんな服もってたんだ」
「何言ってるんですか。......それと何度もノックしましたから」
「あ、ああ」
 考え込んでいたせいか、他の物事が頭に入ってこなかったらしい。
 宰相は小ぶりな瓶を3本ほどサイドテーブルに置く。見覚えのある、媚薬入の潤滑油だ。

「うつ伏せになって足を開いてください」
「お前には情緒ってもんがねーのか」
 眼鏡の奥で、お前には言われたくない。といった無言の圧力を受ける。仕方なく王は全裸になり、うつ伏せになって足を開いた。
 いつも抱く...女のような、格好だ。

 ベッドが大柄な男二人分の体重に軽く悲鳴をあげる。
 宰相は王の足の間に陣取ると、小さな瓶をひとつ無造作に開けて尻の穴に突き入れた。
「うぎゃっ!?」
 ひやりとした液体が突然体内に注ぎ込まれる。
「おま、イキナリすぎんだろっ」
「明日も早いので」 
「そういう問題なの!?!?」

 ちゅぽんと瓶を引き抜かれ、容赦なく指を突き入れられる。
「は、わぁ!?」
 ぞわぞわとした不快感に身を震わせ、身をよじるも簡単に引き戻されてしまった。
 筋肉量は王の方が圧倒的に多いが、宰相とて同じような身長だし鍛えてない訳では無いのだ。

 体内を指で弄られ、拡げられ、無意識に尻を突き出すような体勢になってしまう。
「ヤリチンくそ王の癖に、割と綺麗なもんですね」
 何を見て綺麗と言ってるのか。
 屈辱的なポーズにも関わらず、次第に体温が上がり、次々と快感を拾っていく。
「先走りでベトベトじゃないですか。男は...ああ、ここらへんで......感じるらしいのですが。いかがです?」
 腹の裏あたりのふっくらとした膨らみを、指先で何度も刺激され腰が揺れる。
「あ、すげぇ、いい、な、ん...っ」

 指を三本に増やされ、執拗にそこを攻められる。ぽたぽたとペニスからは先走りがこぼれ落ち、シーツを濡らしていた。
 宰相は先走りを片手ですくい、搾乳のようにペニスを容赦なく扱きあげる。
「あ、は...ぁ!」
 前と後ろからの猛攻に、王は呆気なく精液をぶちまける。だが、射精したにも関わらず、王のペニスはガチガチに硬いままだった。
 ビクビクと達し、震える王を無視して扱き、後ろを刺激し続ける宰相。軽くイキ続けているのか、王の体がブルブルと震える。
「あっあっ、あ...っ」
「我が君、後ろの才能もありますね」
「そう、か、よっ!」
 褒められても嬉しくない。

 枕に顔を埋めるも、口から溢れ出るヨダレが止まらない。アナルへの刺激は王が想像していたものよりも良かった。
 本当に俺様、そっちの才能もあるかも。
 誘うようにアナルが指を締め付け、大きな尻がへこへこと揺れる。
 王の荒い息遣いと、粘着質な音だけが響くわけだが......
「って、いうか、お前さ、俺様に勃つの...っ」
「刺激すれば誰だって勃ちます」
「マジか~」
 
 王は男を抱けと言われたら...まあ性欲のあまり勃起するかもしれない。でもそれは線の細い男であって、こんなゴツイ男が対象なわけではない。自分ならきっと萎えてしまう。
 それを考えると、この厄介な性欲に付き合わせてしまうこいつに哀れみを覚えた。
 あとで臨時給与だしてやろ...。

「何を考えているかは予想がつきますが、自分から望んだことですので」
 じゅぷりを指を引き抜き、指をタオルで拭う。
「ああ、それと我が君。乳首を自分で弄ってください」
「は?乳首?」
「ええ、乳首を弄ると後ろでも達しやすくなるそうです」
「へえ?」
 見事な胸筋についている小さな乳首を、自ら刺激する。くにくにと摘むが...微妙。
「気持ち良いですか?」
「んん、まあ...?」
 宰相は少し身を乗り出すと、乳首を思い切り抓ってきた。
「お、あっ」
 抗議しようとする王の乳首をひっぱり、抓り、弾き、捏ね回す。潰すように爪を立てれば、王の巨体が跳ねた。
 次第に王の乳首は赤く腫れ上がり、捏ね回すたびにビクビクと体がうち震える。
「気持ちいいですか?」
 再び同じ質問。
「......ん、んっ」
「このまま同じようにご自身で刺激してください」

 少し痛い方が合ってるのか、夢中で乳首を爪先で引っ掻く。じんわりした痛みと快感が胸から股間へと伝わり、全身を火照らせた。
「それじゃあ、挿れます」
「おう......」
 ここで初めて宰相がズボンの前を寛げる。
 初めて見るこの男のペニスは...王と同じくらい巨根であった。なまじ美しい顔をしているせいか、グロテスクに見える。

「ちょ、まて、おま、」
「待ちません」
 綻び、ぬかるんだ王のアナルに先端を突き入れる。
 穴は待っていたと言わんばかりに、その巨大なペニスにしゃぶりつき呑み込んでゆく。
「はっ、あっ、あ゛っっ」
「......っ」
 みちみちと拡がりペニスを締め付ける。だが、とろけた内壁は優しくペニスを包み込み、極上の快楽を与えていた。
「我が君、凄いですね。貴方名器ですよ」
「はぎっ、ま、までっ、ま、あ゛、あ゛~っ」

 媚薬のせいなのか、相性のせいなのか。圧迫感はあれど痛みもなくペニスを半分飲みこむ。
 暫く落ち着くのを待つという、少しだけの優しさを見せたあと、宰相は進軍を開始した。
「我が君、指が止まってます。乳首を弄りながら、ほら、ご自身も扱いて」
「う、あっ、あっ」
 宰相の言葉に素直に従うと、身を満たすような快楽が王の身を包んだ。
 乳首を弄りながらペニスを夢中で扱く。その間も宰相の怒張は我が物顔で王の体を蹂躙していた。
 アナルの入口。そして前立腺を絶え間なく抉っていく。
「きもぢい、っ、いいっ♡」
「お気に召したようで、何よりです」

 ぐちゅぐちゅと下品な音を立てながら突き入れれば、王の体が一際大きく震えて達したのが伝わってきた。しかし貪欲な王がこんなことで満足しないのも、わかりきっている。宰相は余韻に浸らせる間もなく、責め立てることにした。
「はぎ、っ♡ まで、っ♡ あ゛っ」
「大丈夫。満足するまで付き合いますよ我が君」

 少しずつ奥を開拓していき、奥の窄まりまでたどり着く。
「だめ、だ、そこは、っっ」
  入ってはいけない場所だと本能的に感じる。
 暫く感じたことの無い恐怖に、王は無意識に逃げようと身を離れさすも、腰を掴んで引き戻される。

「ここは貴方が雌になれる場所ですよ。味わってください」
 宰相はうっすらと笑うと、容赦なく先端をめり込ませた。
「ひぎぃッ!!!!」
 びくびくと腹の奥が痙攣し、気づけば王のペニスの先端をからどぷどぷと精液が漏れ出ていた。

 前立腺をペニスの腹で押しながら、結腸を突く。宰相の凶悪なペニスをすべて体内に収めたことで、肌と肌のぶつかり合う音が響くようになった。
「いやだ、あっ、あ♡ ひぃ♡」
「指が止まってますよ我が君」
 連続で絶頂させられ、弛緩している王の尻をぴしゃりと手で打つ。
「あ♡ あ♡ あ゛~~~♡♡♡」
 振動がナカまで響き、それが呼び水になってさらに射精感が止まらない。王は止まらぬ絶頂に白目を向きながら痙攣した。

 宰相は押しつぶすようにして王に伸し掛ると、両乳首をつねりながら、最奥に射精した。孕むように何度も何度も腸壁に精液をこすりつける。
「~~~♡♡♡♡♡」

 数分そうしていたか。息を整えペニスを引き抜くと、ポッカリとしたアナルがまだまだ物欲しそうにひくついていた。
 精液が零れないように先端で出口を塞げば、ちゅうちゅうとキスしてすがりついてくる。

 まだ痙攣して呆然としている王をひっくり返し、正面からペニスを突き入れる。
「はぐぅ♡」
 突くたびに王のペニスが跳ね、とろとろと精液が溢れ、腹を汚していく。
「ここも、栓をしたほうがよいかもしれませんね。王ならそのうち、後ろだけでイケそうですし」
 尿道に爪を立てられ、王は嫌だとかぶりを振る。
 きっとこの男には、ブジーや貞操帯も似合うだろうと宰相はほくそ笑む。

 涙とヨダレでべちゃべちゃになってる王を引き寄せ、噛み付くようなキスをする。
 互いの舌を絡ませ、隙間なく貪り合う。
「ん、んっ、ん♡♡♡」
 思い切り抱きしめて、突き上げる。
 奥を抉られながら、舌を、乳首を、己がペニスを扱きあげられ、王は初めて満たされた心地で意識を飛ばした。


 満足そうに失神した王を何度か穿ち、腹の中に射精した。常人よりも長い射精。おそらく宰相の身にも獣人の血が流れているからだろう。
 乱れた息を整えるようにじっとしたまま、王を観察する。全身ぐちゃどろの酷い惨状だ。

 だが、宰相はこの光景を何年も夢想してきた。
 初めて会った時から、この男を自分だけのものにしたいと考えていたのだ。
 世継ぎを産まねばならぬ王でなければ。王族の義務のない、ただの男であったならば。攫って、囲って、一生自分のためだけに飼ったのに。

 だが。思いもよらない事態。
 諦めていた男を抱けるチャンスが来るとは、宰相自身も思ってはいなかった。
 性欲を減退させる薬や、去勢という道もあった。だが、手を回したのは自分だ。

「お前は酷いやつだ」
 この歳になって、触れられる権利を得るとは。
 失神した王に何度も口付け、再び腰を進める。あと何度抱けるかわからない。これで最後かもしれない。
 全身開発し、こいつに雌としての快感を覚えさせ、機会を増やす。自分以外がこの王に触れられなくする。可能ならば、己が最後に。
 
 赤く尖った乳首にしゃぶりつき、満足いく大きさまで育てた。気絶する男を何度も射精させてから解放した。あとはこの王次第である。




「今日は......セックスしないでいい」

 ここ数十年毎日毎日、飽きずに性欲を発散してきた王から、とんでもないセリフが飛び出した。
 執事など心臓発作でも起こしそうなほど驚いている。
「熱でもありますか」
「体調不良とかじゃない」

 この鉄面皮に抱かれた翌日。王は気だるいながらも、性欲が発散されたすっきりとした気分を味わっていた。
 それこそ子供の頃以来の爽快さだった。
 胸やら股間やらあらぬ場所がひりついているが。

「気に入りましたか」
「まあ、うん、抱かれるのも、わるくねえというか」
 正直、ペニスだけで射精するより満足度は高い。無駄に鍛えられているので、体的にきつい訳でもない。

「それなら......壁尻でも設置しますか?」
「かべじり...?」
「ええ、王だとわからぬように尻だけ壁からだして、沢山の兵士に犯してもらうのです。沢山ちんぽを食えば貴方の性欲とも釣り合うでしょうし」

 澄ました顔でとんでもない提案をしてくるなこいつは。
「いや......今後もお前だけに頼みたい。他は無理だ」
 そう返すと、宰相は珍しく目を見開き、ゆっくりと笑った。それはいつもの貼り付けたような、意地の悪い笑みではなく、柔らかいもので......。

「わかりました。では今夜伺います」
「お、おおおう...っ? っていや、今日はいらんて。聞けよ」
 聞く耳持たぬと退出する宰相。不意に高鳴る胸を抑えながら、王は書類の山に向かった。



 この後、後ろで快感を得すぎたせいか
 王は女性を抱けなくなる。

 正妃や側妃たちはヤリ殺される危険性が無くなり、後宮に平和が訪れた。ある者は降嫁を願い出たり、ある者は「抱かれる立場」同士、相談に乗ってくれたり。
 自分の夫が、雌にされると言う事態に思うところが無くはないが、あの受け止めきれない性欲を別で解消してくれているという事の方が喜ばしいそうだ。
 王としては複雑な気分である。

 最近の悩みは、政務中も尻が疼くこと。
 宰相をみると胸が苦しくなること。
 時折キスの時に見せる、宰相の優しい笑みが脳裏に張り付いて剥がれないこと。

「なんてはしたない。さあ尻を出して手を机に着いてください。我が君」

 ......意地悪な笑みも悪くない。


 その後、王は子供たちが育つと、才能ある子を次代に指名しさっさと隠居生活を決め込む。
 その時、銀髪の男の恋人を伴っていったとか。


 おしまい
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