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第三章 アイデンティティ崩壊フェアリーズ
さようなら、善良だったものどもよ
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クァーン……クァーン……。
教室から強制的に戻されたのは、コスモコスモス。
「……レオンハルト。ロザライン」
長老さまが、こちらを見下ろして厳かに言う。
「あなたがたには、妖精の資格はないのかもしれない」
ローザは真っ青になるが、いいね、いいぜいいぜいいですよ長老さま、――オレの思うままだ。
「決まりを、破ったね。掟を。……人間に、妖精だとバレてはいけないのに」
「はい」
それもなー。パフォーマンスとして、あんなに堂々と。
「……キミたちからは妖精の資格を剥奪せねばならないのかもしれない。しかし、ひとつの慈悲を問おう。……レオンは特に妖精であることに悩んでいたようだね」
「はい。だって、人間に搾取される存在なんて、つまらないもーん」
「搾取。はは。……搾取か」
長老さまは皮肉っぽく笑った――それはオレが初めて見た、この妖精の負の感情っぽいモノだった。
「やはり、レオンは妖精の器ではなかったのだな――残念だよ」
はい。長老さま。……オレはたぶん、人間の器でした。
「……ロザラインは。どうする」
「わ、私、……私は……」
ローザは今度は顔を赤らめた。
そして決心したように強く、強く顔を上げる。
「……わからない、ですけどっ、あの教室のみんなともっと仲よくなりたいし、それにっ」
オレの手を、……きゅっと握ってくる。
「……レオンと、いっしょにいたい」
「――そうか。それでは、あなたがたはもう妖精ではない。人間に、なるのだ」
ああ。願ったり、叶ったりだ。
「残念だよ。本当に、無性に残念だ。……妖精は善良を本質とするのに……」
その通り。
そんで人間の本質っていうのは――善悪両方ごちゃまぜにしたような、カラフルな多様性だ。
決して、キレイなだけじゃねえ。
でも、オレは、そのことがすごく楽しい――。
「……さようなら。善良だったものどもよ」
教室から強制的に戻されたのは、コスモコスモス。
「……レオンハルト。ロザライン」
長老さまが、こちらを見下ろして厳かに言う。
「あなたがたには、妖精の資格はないのかもしれない」
ローザは真っ青になるが、いいね、いいぜいいぜいいですよ長老さま、――オレの思うままだ。
「決まりを、破ったね。掟を。……人間に、妖精だとバレてはいけないのに」
「はい」
それもなー。パフォーマンスとして、あんなに堂々と。
「……キミたちからは妖精の資格を剥奪せねばならないのかもしれない。しかし、ひとつの慈悲を問おう。……レオンは特に妖精であることに悩んでいたようだね」
「はい。だって、人間に搾取される存在なんて、つまらないもーん」
「搾取。はは。……搾取か」
長老さまは皮肉っぽく笑った――それはオレが初めて見た、この妖精の負の感情っぽいモノだった。
「やはり、レオンは妖精の器ではなかったのだな――残念だよ」
はい。長老さま。……オレはたぶん、人間の器でした。
「……ロザラインは。どうする」
「わ、私、……私は……」
ローザは今度は顔を赤らめた。
そして決心したように強く、強く顔を上げる。
「……わからない、ですけどっ、あの教室のみんなともっと仲よくなりたいし、それにっ」
オレの手を、……きゅっと握ってくる。
「……レオンと、いっしょにいたい」
「――そうか。それでは、あなたがたはもう妖精ではない。人間に、なるのだ」
ああ。願ったり、叶ったりだ。
「残念だよ。本当に、無性に残念だ。……妖精は善良を本質とするのに……」
その通り。
そんで人間の本質っていうのは――善悪両方ごちゃまぜにしたような、カラフルな多様性だ。
決して、キレイなだけじゃねえ。
でも、オレは、そのことがすごく楽しい――。
「……さようなら。善良だったものどもよ」
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