寂れた無限の奉仕

未来の小説家

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第二章

第十五話

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 50万か、さすがに今のおれにはそんな金はない。どうにかしなくちゃな。
 自分に何か与える方法はないかといろいろ試したが、それはダメだった。あくまでも人にしか与えられないらしい。使えねえ能力だよな。

「なあ、何か欲しいものない。なんでもいいよ。10万はもらうけど。」
 受付の女におれは言った。
「はあ?10万そんなのあるわけないでしょ。」

 そうかそうだよな。まず信じられないよな。なんでも好きなものなんて。10万なんて軽く出せないよな。おれは金持ちを探すためにビル街に出た。ここならだれか50万払ってでも欲しいものぐらいはあるだろう。適当に声をかけていく。

「なあ、何か欲しいものない。なんでもいいよ。50万はもらうけど。」

 エリート集のする男に完全に無視られた。まあそんな日もあるさ。

 明らかに金持ちであろう男がロールスロイスから降りてきた。
「何か欲しいものないですか?なんでもいいですが。50万はもらうけど。」
「じゃあ、ジェット機でももらおうかな。」
「すみません。それはできないんだ。」
「なんだ。当たり前だよな。ジェット機なんて何十億もするものだからな。」
「理由にもよるんだが。」
「ああ、ただ飛びたいだけだ。どういうものならいけるんだ?」
「病気とかそういうのであれば治せますよ。」
「すまんがすこぶる健康体だ。」
「そうですか。それでは。」

 なかなか需要と供給って合わないものだな。根気よく声かけていくか。次のターゲットを探しているとさっきのロールスロイスが横に止まり、窓が開いた。

「おい、友人のけがとかって治せたりするのか。」
「治せると思います。」
「じゃあ。乗れ。」

 運転手がドアを開け、おれは黙ってついていった。車が止まる。ロールスロイスなんて初めて乗ったおれは終始緊張していた。

「ついてこい。」

 目の前には立派な家があった。これが金持ちの家か。門の前で男が止まる。男がインターフォンを鳴らす。ちょっと何を言っているかは分からなかった。

 門が開き、歩いていく男についていく。
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