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第1章 ネトゲ発祥のリアル恋愛!?
5 ――これが、イケメン力というやつだ。
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『こないだはありがとうございましたー。早速なんですけど、今度飲みません? うちの後輩くんも交えて、どうですかー?』というメッセージを、電車の中で犬塚さんに送る。電車の扉の部分に頭を預け、がたんごとんと電車と共に揺れる夜の景色を眺めた。立ち並ぶ高層ビルの放つ光が、煌々と街を照らしている。いつも見ているこの景色は、不思議なことに、何度見ても飽きることはない。
『酔っ払いはあのあと無事に家に帰れたのかな。もちろん、いいよ。いつが良い?』スマホが震えて画面を見ると、すぐに返信が来ていた。気が利く男は、やっぱりマメなようだ。感心をして、返事を打つ。
『もちろんちゃんと帰りました! 酔っ払いじゃないけどー。今週末とかだと急ですか?』
『丁度空いてるよ、金曜で良い?』
『やった、あざーっす! 後輩くんが仲よくなりたい女の子も呼んでいいですかー?』
『ガツガツしてる子じゃなければ。』
『多分大丈夫です、多分。詳しく決まったらまた連絡しまーす』
『了解。』
何往復かやり取りをして、スマホのアプリを落とす。必要最低限の言葉の往復は、不思議と心地良かった。ガツガツしてる子、の件で、つい噴いてしまったのはナイショだ。車内の視線を集めそうになって、慌てて咳払いをする。スマホをポケットにしまおうとしたら、不意に機械が震えた。確認すると、犬塚さんから、メッセージが届いている。さっきまでのやり取りの一番最後に、『今日も一日、おつかれさま。』という一言が添えられた。
――これが、イケメン力というやつだ。
俺が女の子だったら絶対惚れてた、くやしい。
最寄駅に到着するまでスマホをぎゅっと握りしめて、返事を返すにも返せず、所謂既読無視をする俺だった。
家に着いて後輩くんにメッセージを送って『マジありがとうございます! 駿河さん神! 超神!』と大変有難がれた後に風呂に入って、ゲームを起動させた。ゲームを始めてから、曖昧だったオンとオフに、はっきりと区切りがついたような気がする。今日も今日とて、俺はコントローラーを握り締める。パジャマで。
【こんばんはー】
画面が移り変わったら、すぐに、ギルドのみんなに挨拶の言葉を打つ。【ばんわー】【ちーっす】【こんばんわ★】と、口々にメンバーが挨拶を返してくれた。そこにシノさんの名前も入っていて、なんとなく、ほっとする。
このゲームには、日課、と呼ばれるものがある。モンスターとバトルをする他に、職人になって、武器とか道具を自分で作ることができるんだけど、職人の師匠に、毎日何かしらの武器や道具を納品することだ。ノルマを達成したら、レベルに応じた報酬がもらえる。他にも、指定された敵を指定された数だけ倒すとか、アイテムを探すとか、毎日更新されるクエストがあるんだけど、俺は一番負担の少ない、武器や道具の納品を行っていた。同じような目的で人が集まる街の広場に行き、黙々と作業を行う。
【順調?】
【あ、シノさん】
たまたま隣に来たシノさんが、話しかけてきた。俺のキャラは手を振って、喜ぶ。シノさんの隣に、見慣れない女の子がいた。猫の耳が可愛らしい、コボルトだ。
【この子、新しくギルドに入った子】
【ショコラです、よろしくお願いしますぅ】
【アキだよー、よろしくー】
そういえば、さっき、挨拶が流れる中で、見慣れない名前があるなあ、と思っていた。この子だったみたいだ。頭を下げると、ショコラちゃんも頭を下げる。猫コボルト、特に女の子の仕草はかわいくて、スカートみたいになっている装備の端を摘まみ、片方の爪先を地面に立てるポーズで丁寧に挨拶してくれた。
【始めたばっかりらしくてさ、最低限のこと進めてるところ】
【そうなんだ!】
【シノさんすっごく優しくてー、助かりまーす】
【そうそう、シノさんは優しいんだよ】
――そう、シノさんは優しい。
俺にだって色々教えてくれたし、物もくれた。この日課のことだって、全部、シノさんが教えてくれたことだ。ショコラちゃんは、以前、街中で見たかわいこちゃんたちと同じか、それ以上に可愛らしい。本来は灰色のローブを、ピンクの色に染めて、生足が見えるように足元の装備を変えている。ふわふわのピンクの髪のツインテールも、服に合っているし、当たり前だけど、目鼻立ちがはっきりとして顔立ちも良い。キャラメイクをした人のセンスが窺えた。
【アキも来る?】
【ん、まだ日課終わってないー。ありがと】
【そか。じゃあ行ってくるよ】
【行ってらっしゃーい】
連れ立ってダンジョンに行く二人を、手を振って見送った。
べつに、仲良くしてる二人を間近で見るのがやだとか、そーゆーことじゃないんだけど。――俺ってこんなに独占欲、強かったかなあ。友達を独り占めしたいとか、あんまり、思わないのにな。
何だかもやもやする気持ちを反映するように、装備品作りも、失敗続きだ。結局納品はあきらめて、その日は、早くゲームの電源を落とした。楽しくできないなんて、そんなの、ゲームの意味を成してない。……なんで楽しくないのかは、よくわかんない。
『こないだはありがとうございましたー。早速なんですけど、今度飲みません? うちの後輩くんも交えて、どうですかー?』というメッセージを、電車の中で犬塚さんに送る。電車の扉の部分に頭を預け、がたんごとんと電車と共に揺れる夜の景色を眺めた。立ち並ぶ高層ビルの放つ光が、煌々と街を照らしている。いつも見ているこの景色は、不思議なことに、何度見ても飽きることはない。
『酔っ払いはあのあと無事に家に帰れたのかな。もちろん、いいよ。いつが良い?』スマホが震えて画面を見ると、すぐに返信が来ていた。気が利く男は、やっぱりマメなようだ。感心をして、返事を打つ。
『もちろんちゃんと帰りました! 酔っ払いじゃないけどー。今週末とかだと急ですか?』
『丁度空いてるよ、金曜で良い?』
『やった、あざーっす! 後輩くんが仲よくなりたい女の子も呼んでいいですかー?』
『ガツガツしてる子じゃなければ。』
『多分大丈夫です、多分。詳しく決まったらまた連絡しまーす』
『了解。』
何往復かやり取りをして、スマホのアプリを落とす。必要最低限の言葉の往復は、不思議と心地良かった。ガツガツしてる子、の件で、つい噴いてしまったのはナイショだ。車内の視線を集めそうになって、慌てて咳払いをする。スマホをポケットにしまおうとしたら、不意に機械が震えた。確認すると、犬塚さんから、メッセージが届いている。さっきまでのやり取りの一番最後に、『今日も一日、おつかれさま。』という一言が添えられた。
――これが、イケメン力というやつだ。
俺が女の子だったら絶対惚れてた、くやしい。
最寄駅に到着するまでスマホをぎゅっと握りしめて、返事を返すにも返せず、所謂既読無視をする俺だった。
家に着いて後輩くんにメッセージを送って『マジありがとうございます! 駿河さん神! 超神!』と大変有難がれた後に風呂に入って、ゲームを起動させた。ゲームを始めてから、曖昧だったオンとオフに、はっきりと区切りがついたような気がする。今日も今日とて、俺はコントローラーを握り締める。パジャマで。
【こんばんはー】
画面が移り変わったら、すぐに、ギルドのみんなに挨拶の言葉を打つ。【ばんわー】【ちーっす】【こんばんわ★】と、口々にメンバーが挨拶を返してくれた。そこにシノさんの名前も入っていて、なんとなく、ほっとする。
このゲームには、日課、と呼ばれるものがある。モンスターとバトルをする他に、職人になって、武器とか道具を自分で作ることができるんだけど、職人の師匠に、毎日何かしらの武器や道具を納品することだ。ノルマを達成したら、レベルに応じた報酬がもらえる。他にも、指定された敵を指定された数だけ倒すとか、アイテムを探すとか、毎日更新されるクエストがあるんだけど、俺は一番負担の少ない、武器や道具の納品を行っていた。同じような目的で人が集まる街の広場に行き、黙々と作業を行う。
【順調?】
【あ、シノさん】
たまたま隣に来たシノさんが、話しかけてきた。俺のキャラは手を振って、喜ぶ。シノさんの隣に、見慣れない女の子がいた。猫の耳が可愛らしい、コボルトだ。
【この子、新しくギルドに入った子】
【ショコラです、よろしくお願いしますぅ】
【アキだよー、よろしくー】
そういえば、さっき、挨拶が流れる中で、見慣れない名前があるなあ、と思っていた。この子だったみたいだ。頭を下げると、ショコラちゃんも頭を下げる。猫コボルト、特に女の子の仕草はかわいくて、スカートみたいになっている装備の端を摘まみ、片方の爪先を地面に立てるポーズで丁寧に挨拶してくれた。
【始めたばっかりらしくてさ、最低限のこと進めてるところ】
【そうなんだ!】
【シノさんすっごく優しくてー、助かりまーす】
【そうそう、シノさんは優しいんだよ】
――そう、シノさんは優しい。
俺にだって色々教えてくれたし、物もくれた。この日課のことだって、全部、シノさんが教えてくれたことだ。ショコラちゃんは、以前、街中で見たかわいこちゃんたちと同じか、それ以上に可愛らしい。本来は灰色のローブを、ピンクの色に染めて、生足が見えるように足元の装備を変えている。ふわふわのピンクの髪のツインテールも、服に合っているし、当たり前だけど、目鼻立ちがはっきりとして顔立ちも良い。キャラメイクをした人のセンスが窺えた。
【アキも来る?】
【ん、まだ日課終わってないー。ありがと】
【そか。じゃあ行ってくるよ】
【行ってらっしゃーい】
連れ立ってダンジョンに行く二人を、手を振って見送った。
べつに、仲良くしてる二人を間近で見るのがやだとか、そーゆーことじゃないんだけど。――俺ってこんなに独占欲、強かったかなあ。友達を独り占めしたいとか、あんまり、思わないのにな。
何だかもやもやする気持ちを反映するように、装備品作りも、失敗続きだ。結局納品はあきらめて、その日は、早くゲームの電源を落とした。楽しくできないなんて、そんなの、ゲームの意味を成してない。……なんで楽しくないのかは、よくわかんない。
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