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あの夏の日を、今も
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蒸し暑い夏の夕暮れ
教室には君と僕しかいなかった。
幼い頃から腐れ縁の僕らは、この学校でも
同じクラスだ。
夏期登校を終えた後、部活もないのに
僕らはなぜかふたりでいた。
空調がおかしいのか、汗がじわりと肌ににじむ。
蝉だけが、命の終わりに向かって鳴いていた。
「ねえ、こんな謎掛けしってる?」
机ひとつ挟んで、君が僕に問いかけた。
いきなり何を言い出すのか。
僕は首を傾げつつ、彼女の言葉を待つ。
「世界の全てがそのものに掛かっている。
けれど、そのものは重たいとは感じない。
そのものは何だろう?」
歌うような問いだ。
その答えを僕は知っていた。
「ああ、地球だろ。そのクイズ、どっかで見たよ」
確か、「勇者」とか色んな誤回答があった気がする。
「うん、正解」
彼女は頷いて、薄く笑う。
冷ややかな笑みだった。
彼女は、こんな顔をする人だっただろうか。
「重たいって感覚は、物理上の重量とはずれているのよね」
彼女はもう僕を見ていなかった。
ただ空気に言葉を吐き出していく。
「究極『重たい』って感じる感覚がなければ、壊れていたなら
世界が掛かっていても、誰も何も重たくなんて、ない」
彼女はおもむろに席を立った。
スカートがひらりと揺れるのを僕はただ見ていた。
教室を出る間際、彼女は僕をふりかえった。
「ねえ、世界って重たいの?」
その一言を残して、彼女は消えた。
夏休み明け、彼女はもう学校に来なかった。
急な都合で転校が決まったのだと、教師から聞かされた。
きっともう二度と会えない。
あの謎掛けは、彼女が残したかった何かだ。
意味なんて、きっとない。
それでも、10年たった今も、あの言葉の答えを
僕はずっと探している。
今年も夏が、過ぎていく。
教室には君と僕しかいなかった。
幼い頃から腐れ縁の僕らは、この学校でも
同じクラスだ。
夏期登校を終えた後、部活もないのに
僕らはなぜかふたりでいた。
空調がおかしいのか、汗がじわりと肌ににじむ。
蝉だけが、命の終わりに向かって鳴いていた。
「ねえ、こんな謎掛けしってる?」
机ひとつ挟んで、君が僕に問いかけた。
いきなり何を言い出すのか。
僕は首を傾げつつ、彼女の言葉を待つ。
「世界の全てがそのものに掛かっている。
けれど、そのものは重たいとは感じない。
そのものは何だろう?」
歌うような問いだ。
その答えを僕は知っていた。
「ああ、地球だろ。そのクイズ、どっかで見たよ」
確か、「勇者」とか色んな誤回答があった気がする。
「うん、正解」
彼女は頷いて、薄く笑う。
冷ややかな笑みだった。
彼女は、こんな顔をする人だっただろうか。
「重たいって感覚は、物理上の重量とはずれているのよね」
彼女はもう僕を見ていなかった。
ただ空気に言葉を吐き出していく。
「究極『重たい』って感じる感覚がなければ、壊れていたなら
世界が掛かっていても、誰も何も重たくなんて、ない」
彼女はおもむろに席を立った。
スカートがひらりと揺れるのを僕はただ見ていた。
教室を出る間際、彼女は僕をふりかえった。
「ねえ、世界って重たいの?」
その一言を残して、彼女は消えた。
夏休み明け、彼女はもう学校に来なかった。
急な都合で転校が決まったのだと、教師から聞かされた。
きっともう二度と会えない。
あの謎掛けは、彼女が残したかった何かだ。
意味なんて、きっとない。
それでも、10年たった今も、あの言葉の答えを
僕はずっと探している。
今年も夏が、過ぎていく。
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