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第13章

伝わりやすく情報をまとめるために必要な要素とはー第13の課題:限定ラジオからの企画書作成 企画書編ー

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音声起こしから整文までを今一度
今度こそ一発合格を目指して、僕は作業に打ち込んだ。

流れてくるラジオの音声に集中し
ひたすらタイピングしながら、文章へと変換する。

12分の書き起こしで、今度は2時間を切った。

休む間もなく、今度は不要な言葉を削り
口語を文語に直していく。

少しでも迷ったら、調べて確認した。
ゲーテさんからもらった見本が、悔しいことにとても役立った。

全体の意図は決して変えないように
意味が分かりやすくなるように、文章表現を変えていく。

何度か口に出して読んでみて
違和感があったら、また見直して手を加える。

地味な作業は1時間半ほど続いた。


「我ながら激甘だったな」


なにが4時間で企画書まで余裕で終わる、だ。
終わるわけがない。

あんこにシロップをドバドバかけたくらいの
激甘な見通しだった。

なんだか脳に糖分が足りないらしい。
甘いものが無性に食べたかった。

机の引き出しに入れていたアメを一つ
口に入れてかじると、ガリッと音を立てて砕けた。

色々とダメダメだ。
それでも、二度目こそは即合格を果たしたい。

僕は、必死に頭と手を動かした。


「できました!」


終わったと思った瞬間、叫んでいた。
そのままの勢いで、ゲーテさんに原稿を手渡す。

もうちょっと見直すべきだったかもしれないと思うと
そわそわしてしまう。

原稿を持つ手が少し震えてしまったのに
気づかれていないといいと思う。


「うんうん…ふむ」


ゲーテさんの裁決を、ただ黙って待つ。
一挙一動に心臓が反応してうるさい。


「よーし、それじゃあ企画書作りやってみよっか!」


はあっと大きく息を吐き出した。
どうやら僕はいつの間にか呼吸を止めてしまっていたらしい。

二度目はなんとか合格に届いたようだ。


「企画書作り、アドバイスいる?」


いりません!大丈夫です!と
言い切れたら格好いいのかもしれない。

一瞬だけ思った。
けれど、心のなかで大きく首を振る。

そんなことをしたって何の意味もない。

ゲーテさんは僕よりも経験も実力も豊富だ。
そんなことは、とっくに分かっている。

ただ、認めたくなかっただけだ。


「アドバイス、お願いします」


僕は、ゆっくりと頭を下げた。
精一杯の笑顔をうまく浮かべられているだろうか。


「りょーかい、じゃあカンタンなアドバイスね~」


ゲーテさんのアドバイスは言葉通り、とてもシンプルだった。

最初からパソコンに向かわず、構成を紙で考えること。
そして、過去の資料をきちんと見ること。

それだけだ。


「見やすい資料を作ってくれればいいからさ。よろしくねー」


僕は入社前まで事務系の仕事をしたことがなかった。

パワーポイントの扱いもまだまだ苦手だ。

だから、最初は紙で考えろというアドバイスは正直ありがたかった。

コピーの裏紙の束をばさっと机に持ってきて
データベースの中に入っている過去の企画書をもとに
ああでもないこうでもないとイメージを書いていく。

思いついた構想を紙の上でまとめて
パワーポイント上のデータに変えてみた。


「ううーん…なんか違う気がする」


パソコンの画面をじっくり眺めてみるが
どうにもしっくりこない。

多分、これではだめだろう。

とはいえ、自分ひとりで打開策が出せるとも思えず
僕はゲーテさんにまず見せることに決めた。


「ああーうん、そうだねえ…これじゃ見づらい、かな」


ゲーテさんから下された評価は一言、見辛い。
どうやら、その言葉に尽きるらしかった。


「YouTubeとかブログとか何でもいいんだけど、一度調べてからやり直してみて」


=====
<第13の課題>

Q.「伝わる」企画書に仕上げるために、必要な要素とは何か?

=====

パッと見て伝わる企画書に仕上げてほしい。
ゲーテさんの要求はそれだけだ。

ただ「伝わる」ための企画書構成を作るだけの技量が今の僕には足りない。

すでにヒントはもらった。
まずは、YouTubeから調べてみよう。
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