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それからどのくらい時間が経ったのだろうか。
「玖音っ!」
秋人さんとの出会いや楽しかったことを思い出しては涙を流していたらガラッと引き戸を勢いよく開ける音と大好きな声が聞こえた。顔を上げる前にその声は近づいてきて俺の事を抱きしめた。
「玖音……ごめん…身体が冷えてる。とりあえず部屋に入って暖まろう。話したいことがあるんだ」
「秋人さん…」
11月という季節の中、薄着で外にいた玖音の体は冷えきっていた。
…話したいことって、それって別れ話かな、嫌だな別れたくない
「嫌だっ!入りたくない!」
「っ、玖音っ!」
玖音は自分の出せる全力の力で秋人を叩いた。
玖音の体格は平均より小さいしやせ型だ。
秋人の方が5cm以上も大きいし体格も良い。
秋人は叩かれても体を引き離そうとされても動じることなく玖音を抱きしめていた。
「嫌だ……、ごめんなさい、ごめんなさい、嫌いにならないで……お願い…俺のこと、どうしたら許してくれる…?」
「…っ、玖音、大丈夫だよ。嫌いになるわけないだろ。ずっとこんな所にいて玖音が風邪を引いたら心配なんだ。」
顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら必死に秋人に縋り付く玖音をより力強く抱きしめる。嫌いじゃない、という言葉に少し落ち着いたようで秋人の首に手を回し首元に顔をうずめてごめんなさい、と呟きながら泣いている。
秋人が着ていた上着を玖音に被せる。
部屋に戻るよ、と声をかけ玖音を横抱きにして部屋の中へ入る。
リビングに戻り玖音を1度ソファに座らせる。
ちょっとまってて、と声をかけて部屋の暖房を付け、玖音を暖めるために風呂を沸かす。
ソファに戻るとソファの上で体育座りをしてぐずぐずと泣く玖音が居る。
秋人は隣に座ると玖音に自分の膝に座るよう促す。
ゆっくりと秋人の上に座ろうとする玖音の脇の下から持ち上げて向かい合わせになるように座らせた。
玖音は秋人の肩に顔を埋めたままぐすぐすと鼻を啜っている。
秋人は玖音を抱きしめてトントン、と背中を叩きながら耳元で話しかける。
「玖音、ごめんね。友達って聞いてたけど玖音とずっと一緒にいるしすぐベタベタするからあいつに嫉妬してた。あいつと抱き合って寝てる写真見て嫉妬して意地張って玖音の事無視してた。…羨ましかったんだ。玖音は恥ずかしがってあまり抱きついてくれることがないから…。
今日も連絡なしに帰るの遅くなってごめん。誕生日、祝ってくれようとしてたんだよね?大人気なくてごめん。」
玖音が体を持ち上げて秋人の目を見る。
「……俺、別れたくない、俺の悪いところ全部治すから。もう、飲みに行かないし、遊びにも行かない。秋人さんが、安心するなら友達も要らない。我儘も、言わない。嫌わないで、お願い」
「浮気も、ほんとにしてない……!酔ってて、きおく、ないんだけど、俺が好きなのは、秋人さんだけなの……!浮気なんて、絶対しない、!」
どんどん顔が歪んでいき止まっていた涙がまた流れ始める。しゃくりあげながらも必死に弁明する玖音に秋人は胸が痛んだ。
涙を指で拭ってあげた時に濃く隈ができていることに気づく。
きっと今までちゃんと寝付けなかったんだろう。
こんなことになるまで玖音を無視してしまった俺は彼氏失格だ。
「玖音のこと大好きだよ。…俺以外の男を抱きしめていたのは悲しかったけど事故なんだよね?
玖音に悪いところなんてないよ。全部俺が悪い。だから自分を責めないで…」
「玖音の事を束縛したい訳じゃないんだ。友達と思い出を作って欲しいし遊びにも言って欲しい。
だけど、心配するからこれからはちゃんと連絡すること。
これは俺たちのお互いの約束だよ」
涙を拭っても拭っても止まらない。
目元に優しくキスを落とすと驚いたように目を見開いて更に泣き出してしまった。
「玖音っ!」
秋人さんとの出会いや楽しかったことを思い出しては涙を流していたらガラッと引き戸を勢いよく開ける音と大好きな声が聞こえた。顔を上げる前にその声は近づいてきて俺の事を抱きしめた。
「玖音……ごめん…身体が冷えてる。とりあえず部屋に入って暖まろう。話したいことがあるんだ」
「秋人さん…」
11月という季節の中、薄着で外にいた玖音の体は冷えきっていた。
…話したいことって、それって別れ話かな、嫌だな別れたくない
「嫌だっ!入りたくない!」
「っ、玖音っ!」
玖音は自分の出せる全力の力で秋人を叩いた。
玖音の体格は平均より小さいしやせ型だ。
秋人の方が5cm以上も大きいし体格も良い。
秋人は叩かれても体を引き離そうとされても動じることなく玖音を抱きしめていた。
「嫌だ……、ごめんなさい、ごめんなさい、嫌いにならないで……お願い…俺のこと、どうしたら許してくれる…?」
「…っ、玖音、大丈夫だよ。嫌いになるわけないだろ。ずっとこんな所にいて玖音が風邪を引いたら心配なんだ。」
顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら必死に秋人に縋り付く玖音をより力強く抱きしめる。嫌いじゃない、という言葉に少し落ち着いたようで秋人の首に手を回し首元に顔をうずめてごめんなさい、と呟きながら泣いている。
秋人が着ていた上着を玖音に被せる。
部屋に戻るよ、と声をかけ玖音を横抱きにして部屋の中へ入る。
リビングに戻り玖音を1度ソファに座らせる。
ちょっとまってて、と声をかけて部屋の暖房を付け、玖音を暖めるために風呂を沸かす。
ソファに戻るとソファの上で体育座りをしてぐずぐずと泣く玖音が居る。
秋人は隣に座ると玖音に自分の膝に座るよう促す。
ゆっくりと秋人の上に座ろうとする玖音の脇の下から持ち上げて向かい合わせになるように座らせた。
玖音は秋人の肩に顔を埋めたままぐすぐすと鼻を啜っている。
秋人は玖音を抱きしめてトントン、と背中を叩きながら耳元で話しかける。
「玖音、ごめんね。友達って聞いてたけど玖音とずっと一緒にいるしすぐベタベタするからあいつに嫉妬してた。あいつと抱き合って寝てる写真見て嫉妬して意地張って玖音の事無視してた。…羨ましかったんだ。玖音は恥ずかしがってあまり抱きついてくれることがないから…。
今日も連絡なしに帰るの遅くなってごめん。誕生日、祝ってくれようとしてたんだよね?大人気なくてごめん。」
玖音が体を持ち上げて秋人の目を見る。
「……俺、別れたくない、俺の悪いところ全部治すから。もう、飲みに行かないし、遊びにも行かない。秋人さんが、安心するなら友達も要らない。我儘も、言わない。嫌わないで、お願い」
「浮気も、ほんとにしてない……!酔ってて、きおく、ないんだけど、俺が好きなのは、秋人さんだけなの……!浮気なんて、絶対しない、!」
どんどん顔が歪んでいき止まっていた涙がまた流れ始める。しゃくりあげながらも必死に弁明する玖音に秋人は胸が痛んだ。
涙を指で拭ってあげた時に濃く隈ができていることに気づく。
きっと今までちゃんと寝付けなかったんだろう。
こんなことになるまで玖音を無視してしまった俺は彼氏失格だ。
「玖音のこと大好きだよ。…俺以外の男を抱きしめていたのは悲しかったけど事故なんだよね?
玖音に悪いところなんてないよ。全部俺が悪い。だから自分を責めないで…」
「玖音の事を束縛したい訳じゃないんだ。友達と思い出を作って欲しいし遊びにも言って欲しい。
だけど、心配するからこれからはちゃんと連絡すること。
これは俺たちのお互いの約束だよ」
涙を拭っても拭っても止まらない。
目元に優しくキスを落とすと驚いたように目を見開いて更に泣き出してしまった。
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