夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
181 / 275
凍える夢

5.

しおりを挟む
微かにぼーっとしている気もしたけど、随分、楽になった気はしている。ただ、はっきりと自覚的に行動できるほど、回復しているという訳ではない。だから、何となく、じーっと女の子の事を見てしまった。あくまで、無意識にだ。じーっと見ている自分に気が付いて、そう自分に言い訳してしまった。女の子は黙ったままで、そんな僕を見ている。僕と同じ様な感じだろうか。僕が照れたようにちょっと自然を外すと、それに気が付いたように女の子も視線を外した。何だろう、この感じは。

「なんかのんびりしているね」

女の子がそう言う。確かにそうだ、そんな風に思う。いつも夢で会う時は唐突で、それが一瞬で終わる気がする。でも、今日はそんな感じでは無かった。ゆっくりと休んでいる中で見ている夢だからだろうか、そんな風にも思った僕は、

「ゆっくり寝ているからかな」

と、言ってみた。

「そうかもね」

そう言って、女の子は笑った。その後、他愛のない会話が続いた気がするけど、はっきりと覚えていない。覚えていないほど、他愛のない会話だったのか、それとも、まだぼーっとしていたからだろうか。何となく楽しい会話をした気分だけは残った。もしかしたら、それは印象だけで、実際には会話していないのかもしれない。その方がしっくりくる気もした。そこでふと思い出した事があった。

口に出したら馬鹿らしい、馬鹿にされるかもと少し思ったけど、どうしても聞きたくなってしまった。体調不良でぼーっとしているからそんな事を思うんだろうか。そのせいにして良いんだろうか。そのせいにすれば良い、そんな風に思う。

「何か聞きたい事がありそう」

女の子が僕の考えを見抜いたように言う。

「いや、何でもないよ」

その言い方は何でもなくないなと思う。いかにもという感じで、慌ててしまった。

「そう?」

「あー、ええっと…」

急にしどろもどろになってしまう。でも、覚悟を決めた。

「この前、見かけた気がするんだけど?」

「どこ?」

「前に夢の中、確か福引の夢の時に会った後、花火を見に行こうとした途中で…」

言ってみて、言わなければ良かったと思う。夢と現実がごっちゃになっていると思われるのは恥ずかしい気がした。あれ、でもこれ自分の夢の中だから、恥ずかしがらなくて良いのか。やっぱり、頭の中がぼーっとしているようだ。

「それ、本当に私だった?」

そう言われると、自信が無い。

「分からない。たぶん、見間違いだと思う」

すぐにそう返事してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...