夢ノコリ

hachijam

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凍える夢

5.

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微かにぼーっとしている気もしたけど、随分、楽になった気はしている。ただ、はっきりと自覚的に行動できるほど、回復しているという訳ではない。だから、何となく、じーっと女の子の事を見てしまった。あくまで、無意識にだ。じーっと見ている自分に気が付いて、そう自分に言い訳してしまった。女の子は黙ったままで、そんな僕を見ている。僕と同じ様な感じだろうか。僕が照れたようにちょっと自然を外すと、それに気が付いたように女の子も視線を外した。何だろう、この感じは。

「なんかのんびりしているね」

女の子がそう言う。確かにそうだ、そんな風に思う。いつも夢で会う時は唐突で、それが一瞬で終わる気がする。でも、今日はそんな感じでは無かった。ゆっくりと休んでいる中で見ている夢だからだろうか、そんな風にも思った僕は、

「ゆっくり寝ているからかな」

と、言ってみた。

「そうかもね」

そう言って、女の子は笑った。その後、他愛のない会話が続いた気がするけど、はっきりと覚えていない。覚えていないほど、他愛のない会話だったのか、それとも、まだぼーっとしていたからだろうか。何となく楽しい会話をした気分だけは残った。もしかしたら、それは印象だけで、実際には会話していないのかもしれない。その方がしっくりくる気もした。そこでふと思い出した事があった。

口に出したら馬鹿らしい、馬鹿にされるかもと少し思ったけど、どうしても聞きたくなってしまった。体調不良でぼーっとしているからそんな事を思うんだろうか。そのせいにして良いんだろうか。そのせいにすれば良い、そんな風に思う。

「何か聞きたい事がありそう」

女の子が僕の考えを見抜いたように言う。

「いや、何でもないよ」

その言い方は何でもなくないなと思う。いかにもという感じで、慌ててしまった。

「そう?」

「あー、ええっと…」

急にしどろもどろになってしまう。でも、覚悟を決めた。

「この前、見かけた気がするんだけど?」

「どこ?」

「前に夢の中、確か福引の夢の時に会った後、花火を見に行こうとした途中で…」

言ってみて、言わなければ良かったと思う。夢と現実がごっちゃになっていると思われるのは恥ずかしい気がした。あれ、でもこれ自分の夢の中だから、恥ずかしがらなくて良いのか。やっぱり、頭の中がぼーっとしているようだ。

「それ、本当に私だった?」

そう言われると、自信が無い。

「分からない。たぶん、見間違いだと思う」

すぐにそう返事してしまった。
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