夢ノコリ

hachijam

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迷路に迷い込む夢

4.

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「今度、映画に行こうって誘われたんですけど」

何となく得意気にそう言っている自分がいた。

「誘われたの?誘ったんじゃなくて」

三戸さんの確認。

「あっ、はい。向こうから」

「それはもう気があるね」

「本当ですか」

「うん、間違いないね」

と断言する。そう言われるとそうなのかなと思ってしまった。思いたかったのかもしれない。

「あー、いいな。羨ましい」

そんな事、言われる。

「えっ、あ、でも映画に行くだけですよ」

冷静に返したつもりだけど、

「いつ行くの?何見に行くの?」

と興奮気味に尋ねてくる。

「ええっと、まだ具体的には、一応、来週って話なんですけど」

「なるほど、それはすぐにでも連絡して、日にちを決めた方が良いね」

「そうなんですか」

「そうだね。向こうはアプローチを待っているところだね」

三戸さんはそう断言する。

「同時にセンスを問われているね」

「センスですか?」

「そうどの映画を選ぶかってところだよ。ちゃんと考えてる?」

「いや、相手が見たい映画を…」

「それは、そうなんだけど、それを相手に言わせちゃだめだね」

「そうなんですか」

また、そう聞いていた。

「そうだね。自分が見たい映画を分かって欲しいって事だね。自分の事を分かっているかをテストしているってとこだよ」

「そうなんですか」

何か自分もこのノリで楽しんでいる気もしてきた。

「もう考えているの?」

「いや、全然。僕は何でも良いなと思っていたので…」

「それは最悪だね。優柔不断に思われる」

「そうなんですか」

「そうなったら終わりだね。一気に見限られる」

「最悪ですね」

「最悪だ」

「どういう映画だったら良いんですか?」

そう聞いてみた。

「どう思う?」

僕の意見を知りたいようだ。

「ベタな恋愛映画とかですかね」

そう答える。

「まあ、定番で悪くないけど、いきなり恋愛映画で大丈夫?気まずいシーンとか耐えられる?」

そう言われるとドキドキしてしまう。

「ド派手なアクション映画とかですか?」

「まあ、分かりやすく楽しいのは良いんだけど、意外とそういうノリが苦手な女の子もいるよ」

赤岡さんはどうだろう。大丈夫そうな気がするけど、はっきりとそう言えるほどではない。

「じゃあ、何が良いんですか?」

「それはもう、ホラーだよ。ホラー」

「ホラーですか?」

「そう、意外と女の子でも好きな子が多いし、ドキドキする感じが良いんだよ。それと恋愛のドキドキが結びつくわけだ。怖がって、手を握り締めてきたりすれば、完璧だね」

どこかうっとりとするように三戸さんが言っていた。
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