夢ノコリ

hachijam

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迷路に迷い込む夢

5.

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こういう場面で冷静になって突っ込んではいけないと思う。だから、話の腰を折らないようにした。そうしたら、三戸さんの話は続いた。

「そのまま、ギュッと手を握り返す。で、相手の鼓動が伝わってくる。おー、ドキドキするね。それで、そのまま…」

だんだんと過激になりそうだったので、ちょっと咳払いしてみた。

「ああ、ごめんごめん。ちょっと、調子に乗り過ぎた」

三戸さんは気が付いたようにそう言う。

「まあ、でもあれだな。きっと良い雰囲気になると思うよ。で、映画の後は?」

三戸さんは懲りずに聞いてくる。

「後ですか?何も考えていないですけど」

「それじゃあ、ダメだな」

また、断言するように言う。

「相手の要望を把握しつつ、ちゃんと準備しておかないと」

「難しいですね」

「そりゃ、難しいよ。だからこそ、ミッション成功した時の成果は大きいんだよ」

また、ノリノリになってきた。

「どういうところが良いんですか?」

「そうだな。学生だから、超豪華なレストランなんて無理だろうからな。ちょっとしゃれたこじんまりとしたところとかで、適度な料金で、美味しい所かな」

「どんなところなんですか」

何か分かりにくくて思わず、そう言ってしまった。ちょっとしどろもどろなところを見ると、その辺の知識は怪しいらしい。いやまあ、この関連の話全体がちょっと怪しい気もするが、そう思った。

「とにかく、感じが良い所だよ」

と言い切った。まあ、間違ってはいないだろうなとは思う。

「それで、お酒とか飲んで、良い感じになって…」

「あの、僕まだ十九なんですけど」

また、話が怪しくなりそうなので、そう言ってみた。

「あれ、そうなの、いつ誕生日?」

「十一月です」

「それなら、四捨五入して二十歳で良いんじゃない」

「いや、ダメだと思います」

冷静に返す。

「そうか、そうなんだ。相手は?」

そう言えばいつなんだろう。

「いや、分からないですけど、学年は僕と同じですから、誕生日迎えてなければ、まだ、十九です」

「なに、誕生日も知らないの?ダメだよ、そういうリサーチは怠っちゃ」

何だか分からないけど、怒られた。

「そういうのも知らないで付き合おうと思っているの?甘いよ、考えが。ダメだよ、全く」

急にダメ出しに変わった。付き合いたいって話を相談したんだっけと思いながらも、何か言うと、更に言われそうになる気がして、とりあえずは黙っていた。

そうこうしている間に会社にたどり着いた。とりあえず、この場から去れる事にホッとした。お疲れさまでしたと言って、逃げるように倉庫に戻った。必要以上に疲れてしまった。
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