夢ノコリ

hachijam

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迷路に迷い込む夢

8.

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「でも、それで大丈夫なんですか?当日、急に休んだら、困りますよね?」

僕の方が不安になって聞いてみた。

「そん時はそん時だよ。この間だって、大丈夫だったじゃない」

僕が休んだ時の事を言われた。それを言われると、ちょっと心が痛い。

「いや、でも、あの時は体調不良でしたし…」

と言い訳めいた事を言う。

「あ、ううん。別に責めている訳じゃないよ。…でも、お願い、無理じゃなかった頼むよ」

そう拝むように言われた。三戸さんと下山さんの顔を見ると、こうなると無理だよと言ってる気がした。僕もそう思う。

「大丈夫だよ。俺たちがしっかりフォローするから」

下山さんがそう言い、三戸さんも頷いた。

「分かりました。でも、本当に急に休む事になったら、すいません。先に謝っときます」

「平気平気、それが条件だから…」

社長は嬉しそうに言って、その場から去った。三戸さんも一緒に外に出る。

「大丈夫なの?」

下山さんが二人きりになったところで、聞いてきた。

「はい、大丈夫です。でも、迷惑かけたらすいません」

とまた先に謝っとく。

「いや、そうじゃなくて。バイトがあるから、約束断る事になったりしない?そっちの方が心配だよ」

それはちょっと考えていた事なので、ドキッとした。

「そういうチャンスってあるようで意外と無かったりするよ」

「…」

言葉が出なかった。

「俺から、やっぱり、無理って言っておこうか?」

「…、いや、大丈夫です。まだ、約束が本当にあるのか分かりませんから…」

「じゃあ、俺との約束な。その約束が決まったら、そちらを優先する。それは絶対に守れよ」

「…はい」

率直にそう言ってもらってありがたいなと思うのと、でも、休むのはどうなんだろうと思ったりした。

いっそ、僕の方から連絡して、日時を決めてしまえば、悩まなくてすむ気もしたけど、そちらのハードルも高そうな気がした。結局、自分で決めずに成り行き任せになっているなと思う。

僕自身の気持ちがはっきりしていないからなんだろうなと思う。分かりやすく一直線に進むのであれば、迷わないで、約束してダメな事は断れば良いと思う。でも、それが分からないから、結局、迷う事になるんだろう。

僕はちゃんと休むという事が出来るのだろうか。そもそも、映画に行く約束は果たされるのだろうか。急に考えないといけない事が増えて困るような気もしたけど、自分にとってはともかく、人にとってはどう感じるんだろうとか思ったりした。

僕をこれだけ悩ませている事に赤岡さんは気付いているのだろうか。
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