夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
267 / 275
記憶喪失と言われる夢

5.

しおりを挟む
次のページは個人の写真が並んでいて、これはすぐに誰だか分かる写真が一枚一枚並べられてその下に名前が書いてあるからだ。しかも、名前順。羽田篤郎なので、ハ行。名前の順だと後ろから見た方が早いけど、前から確認する。名前を見て、写真を見ると、こう言う奴がいたなとすぐに思い出す事が出来た。そこら辺の記憶は確からしい。

三年生の時、同じクラスだったかなみたいな少し怪しげな所もあったけど、でも、誰か分からない人はいなかった。そういう点では、自分の写真と言うのが一番見慣れなくて、違和感を感じてしまうのかもしれない。改めて、この時の自分の姿を認識する。やっぱり、幼いと思う。

個人写真を撮った時の事は何となく、覚えていて、一人一人、人数が多い中で流れ作業で行われていった。待ち時間が多くてぶつぶつと文句を言っていた記憶がある。至って真面目な顔で撮られているが、ふざけようとして、怒られていた人が何人かいたなと思う。取り直しさせられていた人もいた気がする。

僕はと言うと、やっぱり、睨んでいるような表情で、不機嫌そうに見えた。けど、この時、不機嫌な訳では無かった。カメラマンの人の後ろでふざけて笑わせようとした人がいて、それにつられて笑わないように堪えた結果、こんな結果になったのだ。そいつは笑わせる事自体には失敗して悔しがったけど、多分、僕のこの写真を見たら、ニヤッとしているに違いない。そんな事も思い出した。

女子の方を見ると、ア行の赤岡さんが一番最初にいた。やっぱり、幼い。でも、顔の感じは今でも変わらない。僕は再会してすぐにその顔を思い出す事が出来た事に納得してしまった。

女子の方の記憶は男子と比べると曖昧だった。名前を見れば、微かに記憶があるくらいで、違うクラスの子が間違って紛れ込んでいたなんて言われても、そうかもしれないと思う人もいたりした。誰が一番可愛かったのかなとか、偉そうに考えてみる。でも、ちょっと恥ずかしくなってしまい止めた。

あの頃はどうだったんだろうなと、何となく覚えているのに、それをはっきりと意識しないようにしている。別に誰かに指摘されるなんて事はないのだけど、それは今となっては、はっきりとしない物で、それを改めて考えてしまうと、壊れてしまいそうな淡い思い出で、そういうのを何となく、そのままにしておきたいと思ったからだ。そういう思い出に浸るのが出来るのが、卒業アルバムの良い所なのかなと思いつつ、そういう思い出に浸りたくないという気持ちが、卒業アルバムをめくるのが面倒と思わせる理由なのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...