10 / 275
上京する夢
1.
しおりを挟む
その夢の中で、僕はテレビで見かけるお笑い芸人の片割れだった。ただ、まだ芸人として活躍するずっと前の事みたいだった。感覚としては20歳前後と言うところだろうか。ただ、その顔は僕が知っているお笑い芸人の人と同じ顔で、もうすでに40歳を過ぎているその芸人さんの顔のまま20歳前後を演じているのは何とも奇妙な気もする。ただ、それは夢の中の話なので、気にするべき事ではないのかもしれない。実際、夢の中ではそんな事、誰も気にしていなかった。そもそも何で、僕がその芸人さんの役回りを演じているのかも良く分からない。
僕は自転車に乗っていた。彼女を駅へと送るためだった。その彼女はどこかで見たような記憶がある。ただ、はっきりと誰かと言う事は分からない。二人の関係性も曖昧だ。お互いに好意を持っている事は確かなようだが、明確に彼女、彼氏と言っていいのかも良く分からない感じだった。その二人が自転車で駅へと向かっていた。
彼女は都会へ出て、歌手になるという夢を持っているみたいで、その彼女を見送ろうとしていた。彼女が上京する事は、親にも内緒にしている事で、僕と僕の相棒だけがそのことを知っていた。正確に言えば、僕の相棒が気づいて、僕に教えてくれたのだった。
僕は慌てて彼女の元へと向かった。彼女は、丁度、家を出るところだった。その彼女の事を引き留めようとして、僕は何も言えないと思う。結果、僕は彼女を駅まで送る事になった。
駅まで送る道の間、僕と彼女の間に会話は無かった。ただ、これまでの二人の思い出がよみがえってくる。その中には相棒の姿もあって、いろいろと馬鹿な事をやっていたのを思い出す。その二人の様子を見て、時々、呆れたような表情をするのが印象的だった。
「いつかは大物芸人になる」
と言うのが、僕の相棒が語っている事だった。でも、結局、僕と相棒は何もせずに、そこにとどまり、彼女は都会へ出て夢へ挑戦しようとしていた。そんな彼女に僕は何を言えるのだろうか。
だんだんと駅が近づいてくる。何かを言わなければいけないという思いが強くなるのと、同じくらい何も言えないという思いも強くなってきた。このままで良いのか、じりじりとした気持ちが強くなってきた。
「ありがとう」
そんな僕の事を知ってか、彼女がそう言った。ただ、僕と視線を合わす事なく、ポツリとつぶやいた事だった。彼女自身、何に対して、お礼を言ったのかも分かっていないのかもしれない。
そんな事を思った。
僕は自転車に乗っていた。彼女を駅へと送るためだった。その彼女はどこかで見たような記憶がある。ただ、はっきりと誰かと言う事は分からない。二人の関係性も曖昧だ。お互いに好意を持っている事は確かなようだが、明確に彼女、彼氏と言っていいのかも良く分からない感じだった。その二人が自転車で駅へと向かっていた。
彼女は都会へ出て、歌手になるという夢を持っているみたいで、その彼女を見送ろうとしていた。彼女が上京する事は、親にも内緒にしている事で、僕と僕の相棒だけがそのことを知っていた。正確に言えば、僕の相棒が気づいて、僕に教えてくれたのだった。
僕は慌てて彼女の元へと向かった。彼女は、丁度、家を出るところだった。その彼女の事を引き留めようとして、僕は何も言えないと思う。結果、僕は彼女を駅まで送る事になった。
駅まで送る道の間、僕と彼女の間に会話は無かった。ただ、これまでの二人の思い出がよみがえってくる。その中には相棒の姿もあって、いろいろと馬鹿な事をやっていたのを思い出す。その二人の様子を見て、時々、呆れたような表情をするのが印象的だった。
「いつかは大物芸人になる」
と言うのが、僕の相棒が語っている事だった。でも、結局、僕と相棒は何もせずに、そこにとどまり、彼女は都会へ出て夢へ挑戦しようとしていた。そんな彼女に僕は何を言えるのだろうか。
だんだんと駅が近づいてくる。何かを言わなければいけないという思いが強くなるのと、同じくらい何も言えないという思いも強くなってきた。このままで良いのか、じりじりとした気持ちが強くなってきた。
「ありがとう」
そんな僕の事を知ってか、彼女がそう言った。ただ、僕と視線を合わす事なく、ポツリとつぶやいた事だった。彼女自身、何に対して、お礼を言ったのかも分かっていないのかもしれない。
そんな事を思った。
0
あなたにおすすめの小説
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる