夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
80 / 275
二者択一の夢

1.

しおりを挟む
「さて、ここに道が二つある。左の道と右の道。君はどっちを選ぶ?」

その人は言った。

「左の道はどこに繋がっているの?」

僕は尋ねる。

「たぶん、始まりの方」

そう答える。

「右の道は?」

僕は聞く。

「きっと、終わりの方」

そんな答えが返ってきた。

僕は考える。始まりと終わり、どっちに行きたいんだろう。

「どっちの道を僕は選んだ方が良いですか?」

そんな事を僕は聞いてみた。

「さあ、見てみたい方を選んだら?」

僕はどっちを見てみたいのだろう。

「何の始まりと終わりなんですか?」

僕はそれが気になってしまった。

「それは僕も知らない。そもそも、始まりと終わりに違いはあるのかい?」

逆に聞かれてしまった。始まりと終わり、それは全然違うものだと思った。そんなの当たり前のような気がする。でも、何が始まりで終わりなんだろうとも思ってしまった。何かの始まりは何かの終わりで、何かの終わりは何かの始まり、始まりの終わりで、終わりの始まり。何だか始まりと終わりという言葉が頭の中をグルグルと回っている。

「じゃあ、こういうので決めれば」

そういうと、その人はポケットから、一枚のコインを取り出した。

「こっちが表で、こっちが裏だ」

表には星のマークが書かれていて、裏には何も書かれていなかった。

「コインに任せて、表が出たら左、裏が出たら右とかでどうだい?」

そんな提案をしてきた。

「うーん」

僕は考え込んでしまう。

「逆じゃダメなの?表が右で、裏が左じゃ?」

「それでも構わないよ。そうする?」

特別に意識した訳でなく、ただ思い付きで言っただけなので、そう聞かれても困るなと思っていた。

「今、選ばないとダメなの?」

なかなか答えが出せない僕はそう聞いてみた。

「僕は道を示すだけだから、君が決めれば良い。今いる、そこに留まるのも、戻るのも、先に進むのも自由だよ」

そう言われて、選択肢は他にもある事に気が付いた。二者択一だと思っていたのは間違いなんだろうか。

「ただね」

その人は真面目な顔をして言う。

「いつまでも同じ選択肢があるとは限らないよ。その場にとどまる事が出来なくなることもあるし、決断しなければいけない時もある。先に進めず、戻るしかない時だってあるかもしれない」

だったら今、決めた方が良いのかと僕は思う。それを知ったのか、ちょっと意地悪そうに、その人は続ける。

「でもね。待つことによって、増える選択肢もあるかもしれない」

選ぶべき道があるのか、僕は悩んでしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...