竜探しのお話

hachijam

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5章.盗賊見習いと竜見習い

20.

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「それで首尾は?」

中央の豪華な椅子に座っている男が質問する。

「申し訳ありません。一人逃しました」

冷たい殺気を持つ者が答えた。

「珍しいな」

「魔物が一匹、邪魔をしまして」

「まあ良い。完ぺきは求めていない。そんな計画じゃ、成功はしない。なあ」

横に立っている男に言う。

「見せしめとしては十分かと…」

「後、二つ、三つ始末したら、いよいよ本番だ」

楽しそうに言う。

「ひとつご報告が…」

視線で続きを促す。

「その魔物の事です。一瞬しか姿は見えなかったのですが、あれは竜かと…」

「竜?」

椅子の男は驚いたように言う。

「…」

横に立っている男は黙ったまま眉をひそめる。

「どう思う?」

「…」

椅子の男の問いに横に立っている男は黙って首を横に振った。

「そうか、あの話は本当だったのか」

そう椅子の男は呟いた。



苦労しながらも、リアリはコトをサントたちの元へと運んだ。人を運んできたことに驚いたサントたちだったが、状況を説明すると、事情は理解してくれた。コトは気を失ったままで、その扱いをどうするかが話し合われた。サントは盗賊と言う事で、事情を理解しつつも難色を示した。リアリは成り行き上、コトと行動を共にする事を主張したが、そこまで熱心では無かった。一番、熱心に説得したのは、リラだった。困っている人は助けるべきだという正論をかざす。そう言われると、サントは何も言えなくなる。ファムとラテアはどちらでも良いと考えていた。いれば役に立つだろうがいなくても差し支えない。アリアドットまでと考えれば、無理に拒絶する理由も無かった。結局、リラとリアリが面倒を見るという約束で一緒に行動する事になった。

ようやく目を覚ましたコトにそのことを告げると大喜びした。

先に進もうと決めた時、ラテアは少し気になった事を聞いた。どうして、そこまでコトをかばったのかを

「うーん」

少し考えながら、

「コトさんは盗賊見習いでしょ。だったら、リアリさんも竜になりたてだから、竜見習いなのかなと思って、だったら仲良く出来るかなと思ったんです」

と言った。ラテアにはあまり理解できない理屈だったが、何となく言いたい事は分かった気がする。

(何が竜見習いだ)

少し離れた場所でその会話を聞いていたリアリはそう思った。でも、今の自分には妙に当てはまっている気もした。それがどこか照れくさく感じたリアリは、憂さを晴らすように、コトに向かって軽く吠える。一瞬、ビクッとするコトを見て、満足する事にした。
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