121 / 155
6章.隠された都市
8.
しおりを挟む
ドンゴはお茶を運んできた執事に指示を与えて、書類を渡す。
「あっ、すいません。お邪魔してしまったようで」
ラテアは恐縮するように言った。
「いやいや、とんでもない。立場上、忙しいふりをしていますが、ほとんど雑用ですから、黙ってサインするだけの仕事ですよ」
ドンゴは謙遜するように笑った。その表情は、最初に会った時の印象に近かった。昨日、部屋を尋ねて来た時とは、違うように感じた。そういうのを上手く使い分ける事が出来る人なんだなと思う。少し警戒感が強まった。
「そんなに警戒しないでください」
ラテアの心を見透かしたように言う。ラテアはドキリとした。それが表情に現れていないか気になった。
「私なんて、ただの親ばかですから」
そう言って笑う。
ラテアはこのまま、話を続けるのか少し迷った。
「ああ、昨日の事は忘れてください。お恥ずかしい、ついつい失礼な事を言ってしまって」
そう臆面もなく言ってしまうところに感心してしまう。そういうところは、コトに似ているのかもしれない。いや、親はドンゴだから、コトがその性格を受け継いでいるという方が正しいだろう。そんな事をラテアは考えていた。警戒をしながらも、何か、情報が引き出せないかなとラテアは思う。
「実はね。今、この街ではちょっと、いや、だいぶかな、困っている事がありましてね。まあ、君たちもここに来たくらいだから、おおよその話は知っているかもしれないが…」
そう言いながら、アリアドットの現状について説明し始めた。それは、とある盗賊団がアリアドットを狙っているという話だった。その話は、ラテアも知っている話だった。問題はどこを狙っているかと言う事だった。
「どこも狙われる理由はたくさんありますからね」
そうドンゴは笑った。当然、その狙われているところのひとつとして、ここも入っているらしかった。そういう話を聞くと、自分たちに警戒心を抱くのは分かる気がした。そんな自分にこんな話をして良いのかとラテアは疑問に思う。
「正直ね。皆さんの事を疑っているんですよ」
ドンゴは笑いながらそう言う。
「だったら、何で?」
急に緊張感が増してきた。いきなり、人が飛び出してきて、自分が狙われるなんて事を想像してしまった。少し身構える。
「ああ、大丈夫です。別に誰かが隠れてあなたを狙っている訳じゃないですから」
また、見透かされているとラテアは思った。
「でもね。何となく大丈夫な気もするんですよ。きっと、何かを隠して、この街に来ているんだろうなと思うんですけどね。それで、どうしようかなと思案しているところです」
底知れぬ不気味さをラテアは感じてしまった。
「あっ、すいません。お邪魔してしまったようで」
ラテアは恐縮するように言った。
「いやいや、とんでもない。立場上、忙しいふりをしていますが、ほとんど雑用ですから、黙ってサインするだけの仕事ですよ」
ドンゴは謙遜するように笑った。その表情は、最初に会った時の印象に近かった。昨日、部屋を尋ねて来た時とは、違うように感じた。そういうのを上手く使い分ける事が出来る人なんだなと思う。少し警戒感が強まった。
「そんなに警戒しないでください」
ラテアの心を見透かしたように言う。ラテアはドキリとした。それが表情に現れていないか気になった。
「私なんて、ただの親ばかですから」
そう言って笑う。
ラテアはこのまま、話を続けるのか少し迷った。
「ああ、昨日の事は忘れてください。お恥ずかしい、ついつい失礼な事を言ってしまって」
そう臆面もなく言ってしまうところに感心してしまう。そういうところは、コトに似ているのかもしれない。いや、親はドンゴだから、コトがその性格を受け継いでいるという方が正しいだろう。そんな事をラテアは考えていた。警戒をしながらも、何か、情報が引き出せないかなとラテアは思う。
「実はね。今、この街ではちょっと、いや、だいぶかな、困っている事がありましてね。まあ、君たちもここに来たくらいだから、おおよその話は知っているかもしれないが…」
そう言いながら、アリアドットの現状について説明し始めた。それは、とある盗賊団がアリアドットを狙っているという話だった。その話は、ラテアも知っている話だった。問題はどこを狙っているかと言う事だった。
「どこも狙われる理由はたくさんありますからね」
そうドンゴは笑った。当然、その狙われているところのひとつとして、ここも入っているらしかった。そういう話を聞くと、自分たちに警戒心を抱くのは分かる気がした。そんな自分にこんな話をして良いのかとラテアは疑問に思う。
「正直ね。皆さんの事を疑っているんですよ」
ドンゴは笑いながらそう言う。
「だったら、何で?」
急に緊張感が増してきた。いきなり、人が飛び出してきて、自分が狙われるなんて事を想像してしまった。少し身構える。
「ああ、大丈夫です。別に誰かが隠れてあなたを狙っている訳じゃないですから」
また、見透かされているとラテアは思った。
「でもね。何となく大丈夫な気もするんですよ。きっと、何かを隠して、この街に来ているんだろうなと思うんですけどね。それで、どうしようかなと思案しているところです」
底知れぬ不気味さをラテアは感じてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる