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6章.隠された都市
32.
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「それでどこが怪しいと思った」
ファムがそう聞いた。サントは今まで見た来たところを思い出す。でも、一目見て、どこが怪しいというのは浮かばなかった。どこも変わり映えしない気がした。逆に怪しいと思って見てしまうと、どこも怪しいと感じてしまう。
「分からない」
下手に理屈を付けて答えるよりも、直感的に答えた方が良いと思い、そう答えた。
「そうだよな」
とファムが言った。その表情はそれが正解だと言っている気がする。
「もう少し、ひとつひとつ調べてみるか、それとも山を張っていくかどっちか」
その時、前日にリラが言っていた事を思い出した。でも、そこで特徴的な事は何もなかったとサントは思った。ファムも何も言わないという事は、そういう事なんだろう。確実に行くとなれば、ひとつひとつ丁寧に探る事だと思う。しかし、気になるのは二つある。ひとつは、時間が掛かれば掛かるほど、相手に気が付かれる恐れがあるという事だ。それだと、目的を果たす事が出来ない。もうひとつは、次の襲撃がいつになるのかというところだった。この間の襲撃で全てが終わったとは思えなかった。その次の襲撃に間に合わなければ意味が無い。
今日は一度引き上げるべきか。様子見はしたが、何も収穫が無い状態で良いのかと言うのがサントには気になっていた。ファムがどう思っているのかは定かでは無かったが、自分なりには決断しないといけないと考えていた。
「もう一度、リラが言っていたところを見に行こう」
それがサントが出した結論だった。結論を先延ばししただけと言えなくもなかったが、リラが感じていた何かが分かるかもしれないと思った。
「そうか」
ファムはそうとだけ言った。
コトは頼まれたリラに頼まれた事の意味を正確には理解していなかった。出来るだけ、急いでと言われて、やってきたのだが、それでいいのだろうか。リラに頼まれた事を断る事は出来なかった。そんな事をしたら、他の団員の冷たい視線にさらされる。やっぱり、自分よりもリラの方が地位が高いのではと思ってしまうのだが、そういうところで反論してしまうと、更に自分の地位を下げる事になってしまう。だから、堂々とその話を聞いた。仕方ないという風に余裕を見せた方が良いと思った。
でも、実際にここまで来て、本当に大丈夫なのか、急に不安に思った。今は自分ひとりだ。何かあったらどうするんだ。守ってくれるはずのサントやファムもいない。リアリだっていないのだ。
でも仕方ない、これが団長の務めだ。そう覚悟を決めると、その家のドアを叩いた。
「すいません」
小さく声を掛ける。でも、返事が無い。帰ろうかと思ったけど、それでリラに失望されるのは嫌だと思った。覚悟を決めて、思いっきりドアを叩いて
「すいませーん」
と大きな声を上げた。
ファムがそう聞いた。サントは今まで見た来たところを思い出す。でも、一目見て、どこが怪しいというのは浮かばなかった。どこも変わり映えしない気がした。逆に怪しいと思って見てしまうと、どこも怪しいと感じてしまう。
「分からない」
下手に理屈を付けて答えるよりも、直感的に答えた方が良いと思い、そう答えた。
「そうだよな」
とファムが言った。その表情はそれが正解だと言っている気がする。
「もう少し、ひとつひとつ調べてみるか、それとも山を張っていくかどっちか」
その時、前日にリラが言っていた事を思い出した。でも、そこで特徴的な事は何もなかったとサントは思った。ファムも何も言わないという事は、そういう事なんだろう。確実に行くとなれば、ひとつひとつ丁寧に探る事だと思う。しかし、気になるのは二つある。ひとつは、時間が掛かれば掛かるほど、相手に気が付かれる恐れがあるという事だ。それだと、目的を果たす事が出来ない。もうひとつは、次の襲撃がいつになるのかというところだった。この間の襲撃で全てが終わったとは思えなかった。その次の襲撃に間に合わなければ意味が無い。
今日は一度引き上げるべきか。様子見はしたが、何も収穫が無い状態で良いのかと言うのがサントには気になっていた。ファムがどう思っているのかは定かでは無かったが、自分なりには決断しないといけないと考えていた。
「もう一度、リラが言っていたところを見に行こう」
それがサントが出した結論だった。結論を先延ばししただけと言えなくもなかったが、リラが感じていた何かが分かるかもしれないと思った。
「そうか」
ファムはそうとだけ言った。
コトは頼まれたリラに頼まれた事の意味を正確には理解していなかった。出来るだけ、急いでと言われて、やってきたのだが、それでいいのだろうか。リラに頼まれた事を断る事は出来なかった。そんな事をしたら、他の団員の冷たい視線にさらされる。やっぱり、自分よりもリラの方が地位が高いのではと思ってしまうのだが、そういうところで反論してしまうと、更に自分の地位を下げる事になってしまう。だから、堂々とその話を聞いた。仕方ないという風に余裕を見せた方が良いと思った。
でも、実際にここまで来て、本当に大丈夫なのか、急に不安に思った。今は自分ひとりだ。何かあったらどうするんだ。守ってくれるはずのサントやファムもいない。リアリだっていないのだ。
でも仕方ない、これが団長の務めだ。そう覚悟を決めると、その家のドアを叩いた。
「すいません」
小さく声を掛ける。でも、返事が無い。帰ろうかと思ったけど、それでリラに失望されるのは嫌だと思った。覚悟を決めて、思いっきりドアを叩いて
「すいませーん」
と大きな声を上げた。
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