竜探しのお話

６章．隠された都市

３１．

リラは昨日、地図を見た時に感じた違和感の正体が分からなくて困っていた。いつも通り、作業は続けていたが、それがどうにも気になっていた。だからと言って、作業に手を抜く事は無い。それがリラのリラらしいところでもある。リラが気になっているのはそれだけでは無い。別行動している、サントやファムの事も気になっていたし、いつも留守番をさせているリアリの事も気になっている。ずっと鈍色鼠で働いているラテアの事も気になっていた。全ての事が気になる。

でも、今日、一番、気になっているのはコトの事だった。いつもとは違う何かを秘めた感じがしていた。それは恐らく、サントやファムがいない事が理由だと思った。でも、きっといい人だから大丈夫。そうすぐに思う。こう考えてしまうのもリラのリラらしいところでもあった。



「あそこがそうだな」

ファムは様子を伺いながら、少し離れた場所でそう言った。周囲と比べると少し大きめの民家だった。サントは人が集まっても不思議ではないと感じる。でも、取り立てて、何か異変を感じるような物では無かった。ここら辺を掃除した記憶はあったが、その詳細までは覚えていない。昨日、地図で見た時には、何か発見があるだろうと思ったが、改めて確認してみると何も違和感を感じる物はなかった。本当にここに何かあるんだろうか。

「よし、次行くぞ」

そういうと、ファムは次の場所に向かう。今ので何か分かったのか、サントには何も分からなかった。



掃除を続けていく内に、今日のコトはいつもより積極的に働いているようにリラには見えた。きっと、サントやファムがいないから、自分が責任を持って対応しないといけないと考えたんだろう。それは良い事だと思う。やっぱり、団長として、責任感が芽生えたんだと思うと嬉しくなった。どこか頼りないと思ってはいけないと思いながら、そう感じている部分があったので、余計に嬉しくなった。その張り切っている姿を見て、リラはある事に気が付いた。そして、どうして自分が地図のあの場所が気になったのか分かった気がした。

すぐにサントとファムに知らせた方が良いと思う。でも、どうしたら良いのか分からなかった。急にみんなに探すように言ったら、騒ぎになってしまうかもしれない。それは避けた方が良いだろう。

どうしたら良いんだろうと思った時、張り切っているコトの姿が目に入った。その姿は頼もしく見えて、コトに任せれば、大丈夫なのではと思った。