1 / 155
序章.竜探し
1.
しおりを挟む
「こんなはずじゃなかったのに…」
薄れゆく意識の中でサントはそうつぶやいていた。まさか、こんなところで…。
サント・パークは冒険者になる事が夢だった。各地を旅して、世界の神秘を解き明かすのに憧れていた。だから、18歳になり、自分の道を選ぶことが出来るようになると、すぐに故郷の村を後にした。目指すのは冒険者の町、ミリアバウス。そこにたどり着けば、様々な冒険が始まるはず、そう考えていた。ただ、現実は甘くなかった。
「新米のあんたに頼める仕事なんてないよ」
冒険者を名乗る事は誰にもできるが、冒険者として認められるかは別の問題である。ギルドに行けば、冒険の仕事はいくつもあったが、新米のサントが受けられるような依頼はなかなか見つからなかった。ミリアバウスは冒険者の町として知られているだけあって、依頼は様々だが、そのほとんどが熟練者向けの内容だった。冒険者も他の町で経験を積んだ者が多く集まっていて、サントのようにいきなりミリアバウスに来るものは少なかった。
それでも懲りずにギルドに通い続けた結果、その仕事を紹介してもらえた。
「あんたも懲りないね。普段はこういう仕事はあまり引き受けないんだけどね。あんたには丁度良いだろう」
すでに顔なじみになった受付の親父はそういうと、その仕事の内容を説明した。竜の遺跡に荷物を届けるという物だった。竜の遺跡はミリアバウスからすぐ近くにある遺跡だ。冒険初心者が最初に行くところとも言われている。そこに荷物を届けるだけの簡単な仕事だ。その分、報酬は安い。このギルドでは考えられない。サント向けの仕事だと思って、受け付けてくれたようだった。通い続けて良かったと思う。報酬は大したことが無かったが、故郷を旅立つときに持っていた資金は底をつきかけていて、今のサントにとっては魅力的だった。そして、何よりも近くとは言え、冒険者として冒険できるというのが嬉しかった。
「そうそう、注意事項として、荷物の中身を見ない事と、期日を守るというのがあるから気を付けて」
そう受付の親父に説明された。渡された荷物は小さな箱だった。中身を確認できないので慎重に手に取った。
「そこまで慎重に扱う必要はないと思うけど、一応、落したり、傷つけたりはしないようにな」
とも言われた。指定された日時を考えると、すぐに出発した方が良さそうだった。いつでも冒険できる準備は整っていたので、その足で竜の遺跡へと向かう事にした。
薄れゆく意識の中でサントはそうつぶやいていた。まさか、こんなところで…。
サント・パークは冒険者になる事が夢だった。各地を旅して、世界の神秘を解き明かすのに憧れていた。だから、18歳になり、自分の道を選ぶことが出来るようになると、すぐに故郷の村を後にした。目指すのは冒険者の町、ミリアバウス。そこにたどり着けば、様々な冒険が始まるはず、そう考えていた。ただ、現実は甘くなかった。
「新米のあんたに頼める仕事なんてないよ」
冒険者を名乗る事は誰にもできるが、冒険者として認められるかは別の問題である。ギルドに行けば、冒険の仕事はいくつもあったが、新米のサントが受けられるような依頼はなかなか見つからなかった。ミリアバウスは冒険者の町として知られているだけあって、依頼は様々だが、そのほとんどが熟練者向けの内容だった。冒険者も他の町で経験を積んだ者が多く集まっていて、サントのようにいきなりミリアバウスに来るものは少なかった。
それでも懲りずにギルドに通い続けた結果、その仕事を紹介してもらえた。
「あんたも懲りないね。普段はこういう仕事はあまり引き受けないんだけどね。あんたには丁度良いだろう」
すでに顔なじみになった受付の親父はそういうと、その仕事の内容を説明した。竜の遺跡に荷物を届けるという物だった。竜の遺跡はミリアバウスからすぐ近くにある遺跡だ。冒険初心者が最初に行くところとも言われている。そこに荷物を届けるだけの簡単な仕事だ。その分、報酬は安い。このギルドでは考えられない。サント向けの仕事だと思って、受け付けてくれたようだった。通い続けて良かったと思う。報酬は大したことが無かったが、故郷を旅立つときに持っていた資金は底をつきかけていて、今のサントにとっては魅力的だった。そして、何よりも近くとは言え、冒険者として冒険できるというのが嬉しかった。
「そうそう、注意事項として、荷物の中身を見ない事と、期日を守るというのがあるから気を付けて」
そう受付の親父に説明された。渡された荷物は小さな箱だった。中身を確認できないので慎重に手に取った。
「そこまで慎重に扱う必要はないと思うけど、一応、落したり、傷つけたりはしないようにな」
とも言われた。指定された日時を考えると、すぐに出発した方が良さそうだった。いつでも冒険できる準備は整っていたので、その足で竜の遺跡へと向かう事にした。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる