竜探しのお話

hachijam

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序章.竜探し

2.

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かつて世界を創造し、支配していたと語られる竜。その存在は神話の時代から語られているが、およそ1000年前のその姿を消したと言われている。今では伝説の存在で、本当に存在していたかも含めて謎多き存在として語られている。竜の遺跡は、その竜が祭られている遺跡のひとつで、世界各地に点在している。各地の竜の遺跡を巡る事を目的としている冒険者もいるくらいだった。サントも当然のように竜の遺跡には興味があった。ただ、ミリアバウスについて、現実を思い知らされてからは、行く気にはなれなかった。そういう事も含めて、丁度良い内容の仕事でもあった。

ミリアバウスから竜の遺跡に行くまでには二つのルートがある。ひとつは平坦な道を進むルートで山をひとつ迂回するため二日程度、時間は掛かるが人通りも多く安全な道である。もうひとつはその山を迂回せずに真っ直ぐに進むルートで距離が短いため一日掛からずに着く事が出来るが、途中険しい山道があり、魔物も出現するルートである。安全面だけを考えれば迂回ルートを選ぶべきだが、時間を考えると真っ直ぐに進むルートを選んだ方が良いとサントは考えた。魔物が出るとは言っても、それほど危険な魔物が出現するようなところでは無く、まだまだ、駆け出しとは言え、冒険者を名乗るのであれば、そのルートを選ぶことを躊躇してはいけないと思った。まだ、午前中の早い時間帯であったので、この時間に出れば今日中に着く事も可能だと思っていた。

ミリバウスを出発してすぐに道の分岐がある。サントは迷う事なく自分の決めた道に進んでいった。



「ハァハァハァ」

少し息を切らしながらサントは道を進んでいた。竜の遺跡を目指す人の多くは安全な迂回ルートを選ぶため、その道で人に会う事は無かった。ただ、道自体はしっかりとしていて、それほど険しい所も無かった。故郷の村の近くの山の方がよっぽど険しかった思った。それでも何となく不安を感じてしまったのは、初めて通る道だったからだろう。しかも、うっそうと茂った木々に囲まれているせいで、昼間なのに薄暗く、時間感覚を失いそうだった事もサントを不安にさせた。その不安がサントを先に急がせる。

(まるで冒険をしているようだ)

サントは思い、少し笑ってしまった。曲がりなりにもギルドに頼まれた仕事を果たそうとしているのだから、遊びでは無いんだなと思った。荷物を確認してその事を強く思った。このまま一気に行けそうな気もしたが、少しペースが速い気もしていた。竜の遺跡の近くが一番険しいという話は聞いた事があり、そこで時間が掛かるのは避けたい。そう考えると、少し休憩を入れた方が良いのかもしれない。わずかに入る日差しを見ても、時間としては少し余裕がありそうだった。それほどのんびりは出来ないが呼吸を整えるぐらいは良いだろうと思った。
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