竜探しのお話

hachijam

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序章.竜探し

3.

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ちょっと落ち着くと荷物の小さな箱が気になった。中には何が入っているんだろう。中身を見るなと言われると余計に気になってしまう。少し開けたい誘惑にかられたが、慌てて首を振る。最初の仕事で不手際があったら、二度と仕事は来ないだろう。興味は残ったが、余計な事はしないと強く思った。

ガサガサ。

周囲の草むらが動く気配を感じた。魔物かと思い、気配を探った。この辺りでは、ゴブリン、コボルトが出るという話は聞いていた。数が多いと厄介だが、それほど苦戦する相手ではない。サントはこれまでの経験から考えていた。ただ、戦闘になると荷物の事を気にしないといけなくなるので、なるべくなら避けたいと考えた。

ガサガサ。

また、音がした。気配から明らかに魔物だと分かった。数はそれほど多くはないようだ。すぐに飛びかかってくる気配はしなかった。サントはすぐに動ける準備をすると、見えない魔物を刺激しないようにその場を立ち去ろうとした。

ドテッ。

自分では落ち着いていたつもりのサントだったが、実際は慌てていたようで、その瞬間、足元の石につまずいて転んでしまった。

(やばい)

そう思った瞬間には荷物が転がり落ちていた。そして、落ちた衝撃で箱が割れてしまった。

「あっ」

思わず大きな声を上げるサント。周囲に魔物の気配があった事を一瞬忘れてしまった。その声に反応した魔物が姿を現した。それはサントが予想していたコボルトだった。しかし、サントはそれどころでは無かった。慌てて箱を拾い上げるが、割れたのは元には戻らない。そして、その箱の中からまばゆい光が溢れた。その光に反応するコボルト。サントは一瞬判断が遅れて、コボルトの攻撃を直接受けてしまった。

それほど危険ではないと言われているコボルトとは言え魔物である。まして、冒険者としてまだまだ未熟のサントにとっては油断して良い相手では無かった。その事を激しい痛みの中で思うサント。

「こんなはずじゃなかったのに…」

薄れゆく意識の中でサントはそうつぶやいていた。まさか、こんなところで、コボルト相手にやられるなんて結末は想像もしていなかった。冒険者なんて無理だったんだ。

その時、サントの足元に何者かが現れた。サントにとどめを刺そうとしていたコボルトがそれに気が付き、その何者かを攻撃しようとした。その何者かはコボルトに黙って手をかざすと、コボルトの体は突然はじけ飛び、消滅してしまった。真黒なローブに包まれた、その何者かは、サントに近づくと、落ちていた割れた箱を拾う。そして、その箱の中から、光る何かを取り出した。

「呪ワレル者ニハ相応シイ運命カモシレナイ」

そう言うと、その光る何かを持ったままの手で、サントの胸を貫いた。全身に激痛が走った。さっきのコボルトの攻撃とは別の何かが生まれるような激しい痛みだった。

「後ハ任セタ」

その黒いローブに包まれた何者かはそういうと、その姿を消した。そして、代わりに淡い光に包まれた小さな別の何かが姿を現した。サントはその中で激しい痛みに必死に耐えていた。
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