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1章.出会い
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サントの誤算のふたつめは、ブラックゴブリンが一匹しかいないと思っていた事である。どうして、まだ他のブラックゴブリンがいるかもしれないと考えなかったのだろうと、再び現れたブラックゴブリンと多数のゴブリンの姿を見て思った。さっき逃げたゴブリンも多くいるようだった。
「ありゃ、逃げ切れなかったみたいだね。どうする、また力を使う?使える?」
テテが意地悪く言う。今の自分の状態を考えれば、連続して力を使う事は難しいとサントは思っていた。しかし、力を使わなければ、この状況を変えられないというのも分かっていた。
「くそ、こうなったら、何度でも…」
そう言いながら意識を集中しようとしたが、力がみなぎってくる気配は感じられなかった。
「あれれ、ダメみたい」
テテのガッカリした声が聞こえてきた。
「大丈夫です。私が戦います」
何かを決意したようにリラが言った。
近づいてくるブラックゴブリンとゴブリンの群れから逃げるようにサントが言おうとした瞬間、リラの体が突然白い光に包まれた。その光は何かを形作るように収束すると、バチッバチッと音を立て始める。魔法について、それほど詳しくはないサントでもはっきりと分かるほどの魔力がそこに集まっていた。
サントのみっつめの誤算、そして、最大の誤算はリラの魔法の力を甘く見ていた事だった。まだ幼さの残るリラが使える魔法と言っても大したものではないと思っていたのだ。恐らく初歩的な魔法を使えるぐらいだろうと思っていた。だから、牽制する事は出来ても、戦力としてはあまりあてには出来ないと考えていたのだった。しかし、それは間違いだった。
リラは呪文を唱える。それはごく初歩的な火球の魔法だった。その点で、サントの予想は間違っていなかった。ただ、威力が桁違いだったのだ。
ビリッビリッと周辺の空気が振動すると同時に小さな火球が空に現れたと思ったら、その火球が一気に巨大化した。それはその火球の魔法とは信じられないほどの大きさだった。その巨大な火球がブラックゴブリンとゴブリンの頭上にゆっくりと落ちていく。
あまりの巨大さに恐怖を感じたゴブリンは混乱の中、逃げ始める。ブラックゴブリンは呆然とそこに立ち尽くしていた。ゆっくりと落ちていく巨大な火球に圧倒され、逃げる事すらできなかったようだ。その火球がブラックゴブリンにぶつかると激しい衝撃波が伝わってきた。そして、その衝撃波が過ぎ去った後、ブラックゴブリンの姿は見えなくなっていた。呆気にとられるサントが目にしたのは、周辺にあった木が球形に切り取られていた姿だった。
「やり過ぎちゃった」
サントが驚きで言葉を失っている中、リラは照れたようにそう言った。
「ありゃ、逃げ切れなかったみたいだね。どうする、また力を使う?使える?」
テテが意地悪く言う。今の自分の状態を考えれば、連続して力を使う事は難しいとサントは思っていた。しかし、力を使わなければ、この状況を変えられないというのも分かっていた。
「くそ、こうなったら、何度でも…」
そう言いながら意識を集中しようとしたが、力がみなぎってくる気配は感じられなかった。
「あれれ、ダメみたい」
テテのガッカリした声が聞こえてきた。
「大丈夫です。私が戦います」
何かを決意したようにリラが言った。
近づいてくるブラックゴブリンとゴブリンの群れから逃げるようにサントが言おうとした瞬間、リラの体が突然白い光に包まれた。その光は何かを形作るように収束すると、バチッバチッと音を立て始める。魔法について、それほど詳しくはないサントでもはっきりと分かるほどの魔力がそこに集まっていた。
サントのみっつめの誤算、そして、最大の誤算はリラの魔法の力を甘く見ていた事だった。まだ幼さの残るリラが使える魔法と言っても大したものではないと思っていたのだ。恐らく初歩的な魔法を使えるぐらいだろうと思っていた。だから、牽制する事は出来ても、戦力としてはあまりあてには出来ないと考えていたのだった。しかし、それは間違いだった。
リラは呪文を唱える。それはごく初歩的な火球の魔法だった。その点で、サントの予想は間違っていなかった。ただ、威力が桁違いだったのだ。
ビリッビリッと周辺の空気が振動すると同時に小さな火球が空に現れたと思ったら、その火球が一気に巨大化した。それはその火球の魔法とは信じられないほどの大きさだった。その巨大な火球がブラックゴブリンとゴブリンの頭上にゆっくりと落ちていく。
あまりの巨大さに恐怖を感じたゴブリンは混乱の中、逃げ始める。ブラックゴブリンは呆然とそこに立ち尽くしていた。ゆっくりと落ちていく巨大な火球に圧倒され、逃げる事すらできなかったようだ。その火球がブラックゴブリンにぶつかると激しい衝撃波が伝わってきた。そして、その衝撃波が過ぎ去った後、ブラックゴブリンの姿は見えなくなっていた。呆気にとられるサントが目にしたのは、周辺にあった木が球形に切り取られていた姿だった。
「やり過ぎちゃった」
サントが驚きで言葉を失っている中、リラは照れたようにそう言った。
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