竜探しのお話

hachijam

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1章.出会い

9.

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リラの魔法の力により、ゴブリンたちを撃退したサントとリラはその後は何の危険も無く、サウステイルまでたどり着く事が出来た。竜の力を使った影響もあり、疲労していたサントはリラに支えられるような形で宿屋にたどり着いた。宿屋に入るとそこには昼間いなかった女将がいた。サントの様子を見て驚いていたが、リラが一緒にいた事で何かを悟ったようだ。

「また、やったのかい」

呆れたようにそう言った。

サントはそのまま部屋に向かい休むことになった。

そして、翌日を迎えた。サントの怪我は大したことが無かった。そもそも、ゴブリンとの戦闘で受けたダメージは全くなかった。力を使った疲労と言うのも、実際の所はそれほどでもなかった。一番のダメージはリラが使った魔法の衝撃波だった。それも休んだことで回復していた。部屋を出るとそこにリラの姿があった。心配していたようで、サントの顔を見て安心したようだった。女将もそこにいて安心した表情をする。

「全く、危なっかしいから魔法は使うなって言っているのに」

女将がリラを怒るように言った。

「すいません」

リラが言う。

「だから言っただろ、早く帰った方が良いって」

少し離れた所から昨日の老人が言った。

「ごめんなさい」

リラがまた謝った。

「あんたはうるさいから黙っていな」

女将が老人に向かって言う。老人はしぶしぶと言う感じで黙った。

「とりあえず、大したことがなさそうで良かったよ」

「いや、助けられたのは俺の方です。あのままだったら、無事にここまで戻って来れたかどうか」

「そう言ってもらえるとありがたいんだけどね。あの魔法の威力だろ。本人は悪気がないんだろうけどね」

「へへへ」

リラは気まずそうに笑っていた。

「あの魔法は昔から?」

サントはリラに尋ねた。

「うーん。子供の頃から魔法は使えたんだけど、あんな感じになったのは、半年ぐらい前からかな」

リラは言う。

「大体そんなものだよ。私ははっきり覚えているからね」

「ハハハ」

バツが悪そうにリラが笑った。

「丁度、この子と竜の遺跡の近くに行ったら、魔物の群れに襲われてね。そりゃ驚いたよ。この村の近くであれだけたくさんのゴブリンなんて見た事が無かったから。逃げようとしたけど、囲まれて逃げられなくて、私はもうだめだと思って覚悟したんだから」

丁度、昨日と同じ様な状況だったのかなとサントは思った。

「そしたら、この子が突然、不思議な光に包まれたと思ったら、魔法でゴブリンを全部やっつけちゃったんだから、本当にびっくりしたよ」

サントは竜の遺跡の近くにあった球形に切り取られていた木の姿を思い出していた。あれもリラの魔法の影響だったんだと思った。

「それからだよ。たまにこの子が魔物の群れに遭遇するようになって、そのたびに魔法を使うの繰り返し、おかげで森の木は酷い事になっているし、どうにかして欲しいよ全く」

そこまでを女将は一気にしゃべった。まるで日頃の鬱憤を晴らすかのようだった。女将はそれだけ言うと、用事があるのか席を外した。
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