俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第71話 決戦そして決着

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 復活したアルヴァニスオロチの超巨大な魔力に飲み込まれた俺は、気がつくと、ジュリムさんの前にいた。

「危機一髪でしたね」
「ジュリムさん……、もしかして転移魔法で助けてくれたんですか?」
「アルヴァニスオロチがカケルさんめがけて攻撃しようとしていたのが見えたので、咄嗟に転移魔法を使いました」
「ありがとうございます。 助かりました」

 ジュリムさんにお礼を言っていると、ジュリムさんの隣に降り立った人から声がかかる。

「休んでる暇なんてねえぞ!!」
「そうじゃな……、ワシらでは首1本も取ることは出来なんだ」
 
 エクリシュさんとマリウス師匠も息が上がっている。
 ジュリムさんも魔法力がつきかかっている様子。

 アルヴァニスオロチは俺を倒したと思っているらしく歩みを始めた。

 この大陸から出る気か。
 ここで倒さないと、他の国が壊滅する。

 俺は直ぐ様アルヴァニスオロチに向かい、首を切り落とす。
 だが、やはり直ぐに再生してしまう。

「駄目か……、いや、もしかしたら……」
 
 俺はある1つの賭けにでた。

 1本の首を切り落とすと、再生する前に首の付け根まで切り込んで行く。
 そしてその首の奥に黒く耀く魂をの反応を見つけ、魔力の刀身を突き刺す。
 勿論突き刺したり切ったりしても魂には効果が無い。
 だが、こうすれば……。

 俺は魔力を逆流させ、自分の中に魂ごと吸収し、取り込み始めた。

 俺は邪龍の魂と生まれた時から一緒だった。
 いっときは俺の魂と融合までしたんだ。
 ならもう一度魂を吸収出来る筈だ!

「うおおおおお!!」
 
 俺はアルヴァニスオロチの魂を吸収した。
 その魂は俺の魂と融合をする。

 俺の魔力と力が更に上がる。
 だが、アルヴァニスオロチの魂と融合したせいなのか、シャルが光りの玉となって俺の外へ弾き飛ばされた。

「え? 翔さん!?」
 
 飛ばされたシャルは驚いている。
 俺も何が起きたのかわからないが、魔力も力も変わっていない。

 更に次の首を飛ばし、同じように魂を吸収する。
 そしてマリスが弾き飛ばされた。

「兄ちゃん!!」
 
 シャルもマリスも何が何だか分からず、その場に留まる。

 幻術の偽の首も構わず切り落とす事が出来る。
 恐らくこの黒くなった刃のお陰だろう。
 そして更に切り落とし、魂を取り込む。

 エルザもシルクもラジュナも俺の体から弾き飛ばされる。

『カケル! カケル!!』
 ルマが止めようとしているが、倒すなら今しか無い。

「翔! 駄目だ!」
「翔様!!」
「それ以上取り込んじゃ駄目にゃ!」

 アルヴァニスオロチの6本目の首を切り落とし、魂を吸収すると、ルマが俺から弾き飛ばされた。

「カケル! 駄目だよ!!」
 
 ルマは妖精の姿のまま弾き飛ばされているので、俺の腕を押さえつけた。

「大丈夫さ。 任せとけ」
 
 ニコッと笑ったつもりでルマを見つめたが、「ひっ!」とルマの小さい悲鳴が聞こえる。

「カ、カケル……、その顔……」
 
 俺はアルヴァニスオロチの魂を取り込み過ぎていたせいか、精霊達と融合して変身した姿では無く、左半身が黒く染まり、黒い片翼が生え、口には牙が生え、左目は紅く染まり、小さい角まで生えていた。

 だが、魂を取り込んだお陰で力は溢れんばかり。
 アルヴァニスオロチの魂を半分以上取り込んだ俺はアルヴァニスオロチより強くなっている。

「残り2本」
 
 1本の首を刎ね、魂を取り込む。

 アルヴァニスオロチは魂を取られ、焦っているのか、口から魔力をバンバン飛ばしてくるが、その魔力は片手で防げる。

「これで! 最後だああああ!!」
 
 頭上に掲げた剣の黒い刃は天高く伸び、山程あるアルヴァニスオロチの体ごと首を一刀両断した。

 そして血溜まりの中、最後の魂を取り込む事に成功する。
 全ての魂を俺に吸収されたアルヴァニスオロチの体は塵となっていく。

「これで、終わった……。 いや、最後の仕事がまだだな」

 全ての霊を取り込んだ俺の体は完全に変わり、両目は紅く染まり、角は大きく、翼は4枚も生えていた。
 全身何処からどう見ても魔物だ。

 魔物が消え、アルヴァニスオロチが塵となり消えて行くのを皆んなは歓声を上げて喜んでいる。

 アルヴァニスオロチの血溜まりも消えると、そこから誕生した魔物達も消え、俺はアイゼスト王やアイジャの前に降り立った。

 勿論アイゼスト王やフィフィさん、アイジャ、トーマさん、リアスも皆んなが歓声を上げているが、降り立った俺の姿を見て、周りの人の歓声が止まる。

「おのれ魔物め!」
「まだいたか!」
 
 兵士が王を守り、エクリシュさん、マリウス師匠が俺に剣を向けてくる。

 そう、後は俺が死ねば融合している魂も消える筈と判断したんだ。
 今のままでは俺の魂は邪龍の魂に食い尽くされ、アルヴァニスオロチが復活してしまうだろう。

 そんな異形の魔物の姿となった俺の周りを5色の光りが回り、うっすらとした妖精のルマが俺の前に立ちはだかって何かを叫んでいる。

「なんだ、この光りは?」
「何か訴えとるようじゃな」
 
 エクリシュさんとマリウス師匠はいつでも斬りかかれる体勢をそのままに様子を見ている。

「待ってください!」
 
 隊の奥から魔力が枯れて走ってきたジュリムさん。

「彼はカケルさんです!」
「なんじゃと!?」
「どう言う事だ?」
 
 そのひと言で2人共臨戦体勢を解く。

「私見ていたんです。 カケルさんが首を切り落とす事に姿が変わっていく様子を! 恐らく再生させない為に何かをしてんじゃ無いですか!?」
「カケル! 本当か!?」
 
 アイゼスト王は俺に問いかける。
 俺は何も言わず、頷いた。

「その姿は元に戻るのか!?」
 
 再び問われる。
 恐らくこの姿はもう戻らない。
 融合した魂を解放すれば戻るかも知れないが、そんな事をすればアルヴァニスオロチは復活してしまうだろう。

 俺は王の問いに首を振る。

「そうか……」
 
 アイゼスト王は目を瞑り頷く。

「そんな……、カケル! どうにかすれば戻るんじゃろ!?」
 
 アイジャは目を潤ませ聞いてくる。
 その問いには首を振るしか無い。

 その時、俺と王達の前に大精霊様が現れた。

 俺の周りを回っていた光りは大精霊様の元へ飛ぶと、またくるくる回りだし、何やら話しているようだ。

 そして赤い光りが俺の体めがけて突進しては弾かれる。
 続けて青、白、緑、黄、全ての光りが俺の体に入ろうと突進してくるが全て弾かれるが諦めずに突進を繰り返す。

 ルマも俺の体をギュッと抱きしめている。

 俺にはもう精霊皆んなの声が聞こえていない。
 ルマの声も同じく聞こえて無い。
 わずかに大精霊様の声が聞こえてくる。

「翔さん、それは覚悟の上におこなった行為ですか?」
 
 大精霊様の問いに頷く。

「そうですか……、では私が全ての罪を受けましょう」

 大精霊様は細く長い槍を取り出す。
 その槍は神々しく輝き、全ての邪を祓うそんな力強さがある。

「この女神の槍で突けば翔さんの魂と融合したアルヴァニスオロチの魂も消滅させられるでしょう……。 それで構いませんか?」
 
 俺は頷く。

 俺にぶつかっていた5色の光りは大精霊様の元へ行き、また何かを言っているようだ。
 多分、「やめてくれ」とか「なんとかするから」とかだろう。
 皆んなが言いそうだ。

 だが、女神の槍は大精霊様の手から離れ、俺に向かって飛んで来る。

 ルマは俺の前に立ち、槍をその身に受けようとするがすり抜け、俺の体に突き刺さり、アルヴァニスオロチの魂と融合している俺の魂に突き刺さった……。
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