俺の魔力は悠々自適 〜精霊達と気ままな旅路〜

かなちょろ

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第2話 新たな精霊

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 森の中を歩いてどの位経ったのだろう。
 まだ空は明るいが、太陽らしき物は真上を通過した位だ。

 化物に襲われないか少し警戒しながら下山するも、頭の中ではエルザの『そんなにビビんなくて大丈夫だって!』とか『早く酒飲みてーなー』とか聞こえてくる。

 正直うるさい……。
 でも怒らせると緑の化物みたく燃やされてしまうかもしれないからな……。

 しばらく歩いていると、水の流れる音が聞こえてくる。
 水だ! 水が飲めるかもしれない!

 俺は足早で音の方に行くと、川が流れている。
 川の水は澄んでいてとても綺麗に見える。
 手ですくってみると冷たくて美味しそう。

『川の水は飲まねー方が良いぞ。 腹壊すぞー』

 エルザの声が聞こえる。
 確かに煮沸して無い川の水は危険だ。

 でも……水飲みてー……。

 川辺にある石に腰を下ろし休憩しながら、どうにかして水が飲めないかと考えていると、突然目の前に青い魔法陣が現れた。

「うわっ!」

『やっと呼んでくださいましたね。 お水でしたら私がお出しできますわよ』

 頭の中ではエルザとは違う声が聞こえる。

『さぁ、召喚してくださいませ』

 またあの恥ずかしい呪文を叫ぶのか……。
 でも水飲みたい。

「赤き紅より……」
『違いますわよ、私を召喚する時はこうですわ』

『青く澄んだ清流の流れよ、盟約に基づきその姿を見せよ~ですわ』

 どうやらまた別の呪文があるらしい。
 
「青く澄んだ清流の流れよ 盟約に基づきその姿を見せよ!」

 魔法陣が輝き、青い髪の女性が魔法陣から登場した。


「初めまして翔様。 私は水の精霊、シルクと申します」

 今度は水の精霊か。

「翔様はお水が飲みたいのですよね?」
「ああ、喉がカラカラなんだ」

「ではこちらをどうぞ」

 シルクは両手で器を作ると、俺の口元に持ってきた。
 手の中には水が溜まっている。

 シルクは俺をみてニコニコしている。
 飲んでも大丈夫なんだろうか……。

 でも、水の精霊が出してくれた水なら大丈夫だろうと、俺はそっとシルクの手の中にある水に口を寄せた。

 ごく
 ごく
 ごく
 ぷあー!!

 美味い!!
 こんな名水飲んだことがない!!

「美味しかったよ。 ありがとう」
「喜んでいただけてよかったですわ。 それで翔様はどこに向かっていますの?」

 とりあえず近くの村を目指している事をシルクに伝えると……。

「わかりましたわ。 私が調べてみます」

 シルクが川に手を入れ目を閉じる。

「村の場所がわかりましたわ。 ここから川沿いに下って行けば村の近くまで行けますわ」
「ありがとう!助かったよ……」

 そして俺は少し休憩した後、シルクさんと一緒に川沿いを歩き出した。

「翔様、良い天気ですわね~……、翔様、また喉乾いたら言ってくださいませね」

 シルクさんは楽しそうに歩いている。

 しかし、このシルクさん……。
 歩くたびにお胸が揺れる揺れる……。

 エルザと服装は違って、背中だけ大きく開いている長いドレスのような衣装に、細身だけど、出ている所は出ているし、引き締まっている所は引き締まっている。
 長く青い髪もストレートで綺麗。
 話し方や動作一つ一つが綺麗で、どこかのお姫様みたいだ。

『シルクばっかりずりーぞー』

 頭の中ではエルザの声が聞こえるけど、気にしない気にしない。

 シルクさんを召喚してから少ししか歩いていないのに、なんだかもう疲れてきた。

『あたし達精霊を召喚したままだと魔力が少しずつ減っていってるんだよ。 だからすぐ疲れるんだろうよ』

 え、まじで!

 だからエルザはすぐに魔法陣に戻ったのか……。

 とは言え、俺の魔力が全開するまではおそらくもう召喚は出来ない。
 シルクを魔法陣に戻してしまったら、化物が出た時にピンチになる。
 ここは限界ギリギリまで頑張るしかない。

 道中、シルクさんに水を出してもらいながら、なんとか森を抜け村の近くまでたどり着いた。

「翔様、本日はここまでにしておきますね。 ふふふ」

 シルクさんはそう言って、魔法陣へ戻っていった。
 頭の中ではシルクさんに『お散歩楽しかったですわ』と喜んでいただけたようだ。

 とりあえず今日は村で休ませてもらおう。
 俺は気力を振り絞って村まで歩くのだった。
 
「おい、止まれ!」
 村の入り口まで来た俺は入り口にいる警備兵に呼び止められた。

「君はどこから来た?」
「森です」
 来た方角に指を指す。

「森を抜けて来たのか!? じゃあ森の爆発音は君かい?」
「え?……いや……」
 確かにあの爆発は俺の中にいるエルザがやった事だけど……、秘密にしておこう。

「そうか……、しかし良く無事だったな」
「無事だった?」
「ああ、あの森でゴブリンの巣が見つかってな……、今、村は厳戒態勢なんだよ」
 あの緑の肌の化物がゴブリンだったのか。

「あ、でもそのゴブリンに襲われて逃げる時に持ち物は全て無くしてしまいまして」
 何にも持っていないのを怪しまれないように適当に嘘をつく。
 半分本当だから良いよね。

「そうか、それは大変だったな。 とりあえず村の入場は許可するから村長の【マキリ】さんに森の話をしてくれないか?」
 事情を説明して入れてくれるなら。
「わかりました」
「村長の家はこの村で1番デカい家だからすぐにわかるはずだよ」
「ありがとうございます」
 俺は礼を言って村に入れてもらった。

 石造りの家々が立ち並び、派手さはないけど凄く居心地が良さそう。
 人通りも殆どなく、結構静かな村だ。

『翔、酒場に行こうぜ、酒場!』
 頭の中にエルザの声が聞こえる。
『あら~、ダメですわよ。 まずは村長様の家でしょう?』
 そうだぞエルザ、まずは村長の家に行かないと。
『チェッ!』
 金もないんだから仕方ないだろ。

 村長の家らしい場所を見つけると壁の辺りをキョロキョロしてしまう。
『何してんだ?』
『何をされているのでしょう?』
 あ、そうか、思わずインターホンを探してしまった……。

「あら? どちら様ですか?」
 俺が家の前で不審な動きをしていたら庭を掃除していた女性が声をかけて来た。

「あ、すいません、村長さんに森のゴブリンについてお話しをしようかと……」
「まぁ! それでしたらこちらにぞうぞ!」
 金髪の三つ編みに三角巾をかぶっている可愛い女性に入り口まで案内されると、玄関のドアを開けてくれた。

「こちらにどうぞ」
「お邪魔します」
「おじゃま?」
 女性に不思議な顔をされながら村長の部屋へと案内される。

「お父様、お客様です」
「誰じゃ?」
「なんでも森のゴブリンについての事だそうです」
「なに!ゴブリンについてじゃと!」

 扉がバンッ! と開き、小太りの小さい男性が出てきた。
 男性は俺を頭から足まで見ると、部屋の中に戻って行き、手招きしてくる。
「失礼します」
 村長と対面の椅子に座ると森での出来事を話す。
 もちろんゴブリンを倒した話は無しで、逃げた事にしておいた。

「ふ~む……やはりゴブリン共が増えているようじゃな…。」
 村長は何やら腕を組んで考えている。

「どうじゃろ? お主もゴブリンの討伐隊に参加してはみんか?」
「討伐隊?」
「そうじゃ、村に被害が出る前に討伐隊を組んでゴブリンを巣事たたき潰してやろうと計画を立ててるのじゃよ」
 ゴブリン……、あれと戦うのか……。

「お主、見たところゴブリンに襲われて金無しじゃろ? 隊に参加してくれるなら宿はわしが何とかしても良いぞ」
 そういえば俺今、一文無しだった……。
 そうだ、エルザ、シルクはどう思う?

『ゴブリンなんて雑魚には興味ないな。 ま、暴れさせてくれるならやってやっても良いけどな』
 エルザは相変わらず物騒な事しか言わない。
 エルザが暴れたら隊の人達も全滅しかねない。
『わたくしは翔様が村をお救いになりたいならお力添えをいたしますわ』
 シルクは大丈夫そうだな。
 ありがとうシルク、もしもの時は頼むよ。
『はい、お任せください』

「わかりました、ゴブリン討伐隊に参加いたします」
「おお、そうか。 え~と……」
「カケルと言います」
「おお、そうか。 ではカケルくん、よろしく頼むよ」
 村長は俺の両手を握って嬉しそうにしている。

「アミル、アミルはおるか!?」
「はい、お父様」
 ガチャリと扉が開き、先ほどの女性が立っていた。

「アミルよ、このカケルくんを宿まで案内してやりなさい」
「わかりました。 ではカケル様こちらに」
 アミルさんに案内され、宿まで歩く。

 日も傾きだしてお腹がぐーっと鳴ってしまう。
「クスクス、着きましたよ」

 着いた宿は結構大きく、一階は食事が出来るレストランになっているようで、そこから漂ってくる良い香りでお腹がまたもぐーっと鳴る。

「ここの料理は美味しいですよ」
 アミルさんにそう言われて余計にお腹が空いてくる。
「でもお金が無いので……」
「それでしたら、大丈夫ですよ。 討伐隊の方は私のお父様、村長が支払いますから」

 まじか! やったぜ!
 てかアミルさん村長の娘さんだったのか……。
 似てないな……。

『翔! 早く召喚してくれ! 酒だ! 酒ー!』
 俺とアミルさんの話を聞いていたエルザはタダ酒が飲めると聞いて大はしゃぎ。
『エルザ、ダメですよ! 翔様の迷惑になるでしょう』
『え~、良いじゃんか~よ~』

 エルザには悪いが今日はもう召喚出来ないって言ってなかったっけ?

「あら、アミルちゃんいらっしゃい」
「おばさま今晩は、今日はこちらのカケル様の宿と、お食事をお願い出来ますか?」
「ああ、構わないよ。 カケルくんだっけ? うちの料理は美味いよ~、たくさん注文しとくれ。 村長が持ってくれるんだからね」
「ありがとうございます。 でも、今日は疲れているので、部屋で頂いても良いですか?」
「あいよ」

 とりあえずここの定番料理を注文し、部屋の鍵を持って部屋に入る。
 1人ならちょうど良い広さだろう。

 しばらくすると料理が運ばれてきた。
「お待たせね。 この村名物のキノコを使ったキノコ尽くし料理さ。 味わって食べとくれ」
「はい、いただきます」

 料理はどれも良い匂いがする。
 キノコのスープ、キノコを焼いた物にチーズがたっぷりかかっている物、肉に香草とキノコをソテーした物、パン、そしてワイン。

 どれもこれも美味しすぎる!!

『翔ずりーぞー!!』
『流石に美味しそうですわね』

 2人には悪いが、手が止まらん。
 俺は瞬く間に食事を平らげ、食器を部屋の前に出して、ベッドに入った。
 今日は本当に疲れた……。
 色々なことがありすぎた。
 ゴブリンと言う魔物にも会うし、精霊と言う2人も俺が召喚するとか……、しかも美人だし……。
 明日はまた村長の所に行ってゴブリン討伐の説明を聞かないとな……。

 そう考えていたらいつの間にか眠ってしまっていた。
『おやすみ、良く眠れよ』
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