黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第五章 大海原

第百十二話 幽霊の頼み事

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 白い女性の幽霊に誘われ、古い戦艦から更に古い木造船に渡った俺達は人の気配が無ない船内に入った。

「誰もいませんね」
「あの白い嬢ちゃんならいるんじゃねえか?」
「やだやだ、誰もいませんようにーー!」
「それじゃ来た意味無いですにゃ」

 木造船も古い船のはずなのに傷みがない。
 柱は折れ、穴も空いているが綺麗なのだ。
 なんとも不思議な船だ……。

「この先が船長室なはずだ」

 船の船尾にある船長室。
 入ろうとすると扉が勝手に開き、俺達を招き入れる。

「と、扉が勝手に開きましたよ!」
「自動扉なんだろ?」
「そんな訳無いでしょー!」
「ですよね」
「ふざけるのもその位でな」
「すいません」

 ダルマッチさんに続いて俺達も入る。
 すると急に扉が閉まり、閉じ込められた。

「くそ! 開かない!」

 扉は固く閉ざされてしまっているようで力をこめても開かない。
 今の俺の力でも開かないなんて……。

「お待ちしておりました……」
「わっ! 出た! またでたよ~!」

 ふわふわと宙に浮き、全身が白くうっすらと透き通っている。
 長い髪はわかるが顔はハッキリしない。
 
「あなたは誰です?」
「……、そう……、貴方達が解かれたのね……。 これも運命ですね」
「どう言う事だ? なんで俺達をここに?」
「協力して欲しいのです……」
「協力? 協力したらシュシュリラの船まで戻してくれるのか?」
「もちろんです……」

 この白い幽霊が言うには水中の魔生獣に大事な海晶石かいしょうせきを取られてしまったので、それを取り戻して欲しいと言うものだった。

「水中じゃ戦えないぞ」

 いくら人造人間の俺でも長い間は潜っていられない。 多分溺れる。

「安心して下さい……。 私が水中でも呼吸出来るようにいたします……」

 水中で息が出来るなら戦える。

「本当にその魔生獣を倒したら帰してくれるんだな!?」
「はい……」
「わかった、協力しよう」
「ありがとうございます……。 ……そうですね……、そちらのご老人以外の三人にお願いいたします」
「誰が老人じゃ! わしだってまだまだ若い者には負けんぞ!」

 そうは言ってもな……、ダルマッチさんにはここに残ってもらって俺達三人で戦った方が良さそうだが……?

「それでは、よろしくお願いしますね~」

 ダルマッチさんの事は無視したな。
 そして俺達は泡の様な物に包まれると転移した。
 
「ここが水中か?」
「きれーい!」

 青い海中には綺麗な珊瑚礁、魚達が泳いでいてまるで竜宮城だな。

「それにしても本当に息が出来るし水中で話せるなんて信じられないわ……」
「……レア、息止めて無くて平気だぞ」

 レアは前に溺れたのがトラウマなのか、鼻と口を押さえて息を止めている。

「ぷは……、本当に大丈夫でしたにゃ!」
「半信半疑だったんだな」
「それはそうですにゃ! あんな得体の知れない者の言う事を信じるご主人様がお人好し過ぎるんですにゃ!」
「ごめん、ごめん。 確かにそうだな。 これからは気をつけるよ」
「良いですにゃ。 そこがご主人様の良い所でもありますにゃ」
「そうかな?」

 結構な深さのはずだが暗く無い。 これもあの白い幽霊の力なのだろうか?

「この綺麗な海の中に海晶石かいしょうせきを持ってる魔生獣なんているのかな?」
「レア、わからないか?」
「生き物が多すぎてわからないにゃ。 ……あ、でも魔力が高いのがこの先にいますにゃ」
「行ってみるか」

 水中では地上の様には動けない。
 水中の砂の上を歩いていたが、反応がある場所までは泳いで行こう。

 泳ぎながら向かっていると、明るく光る場所が見えてくる。
 この水中で光ってる?

 近くまでくると光っていた正体がわかる。
 少し開けた場所、中心にとぐろを巻いた大きな岩が有り、その周りには金銀財宝が積み上げられている。
 それが輝いているのだ。

「すっごい財宝! これ貰っていいかな!?」

 目も眩む財宝とはこの事か……。
 これだけあれば一生遊んで暮らして行けそうだ。
 俺とエイルが財宝に見惚れていると、レアに「目的を忘れちゃダメですにゃ!」 と言われてしまった。
 そうだった、財宝じゃ無くて海晶石かいしょうせきを探しに来たんだった。

「ほらエイルさんも、海晶石かいしょうせきを探すにゃ」
「わ、わかってるよ~」

 まずは海晶石かいしょうせきを探さないとな。

「そうだ、財宝で忘れてた! 魔生獣はいるか?」
「そうですにゃあ……、い、いるにゃ……」
「どこだ!?」
「この場所ですにゃ!」

 この場所って……、巨大な岩と財宝しか無いけど?

「ケンジー! 海晶石かいしょうせきってあれじゃ無いー?」

 エイルが海晶石かいしょうせきを見つけたのか、岩の天辺を示す。
 確かに、何か輝いている物があるな。
 上に向かって泳いで行くと、岩にハマっているオレンジ色をしたバスケットボール程の玉がある。
 あの玉が光り輝いているから財宝も輝いているのか。
 俺はその玉を取りに向かい、岩から玉を外そうとするが、ガッチリハマっていて取れない。

「くそー! このっ!」

 力一杯引き抜こうとすると地震が起き、岩が動き出す。
 地震で岩が盛り上がっているのか!?

「ご主人様! この岩が魔生獣ですにゃ!」
「な、なに!」

 とぐろを巻いている岩が持ち上がり、岩の中からヤドカリの様な魔生獣が出て来た!
 この巨大な岩はこいつの殻か!
 魔生獣は巨大なハサミを俺に向けて奮ってくる。
 片方のハサミで器用に玉を殻から外すと、伸びてきた片方の目にはめ込んだ。

「幽霊が言っていたのはこの魔生獣のことか!」

 ヤドカリの魔生獣はハサミを振り回し、周りにある珊瑚礁の岩も軽々切り砕いていく。
 俺達とヤドカリの戦いが始まった。
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