黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第八章 鍵

第百六十ニ話 【師匠の名】

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 メメルの操縦とサクの息がピッタリとハマり、危機を脱出した一同はキャシス村へと到着した。

「やっと着きました~!」
「ここまで大変でしたね」
「皆さんすいませ~ん……」
「でもでもちょっと楽しかったよ」

 メメルはペコペコと頭を下げているが、皆んなはメメルのおかげと言って気にしないようにと伝えた。

「それで、ここがエイルさんが育った村ですか?」
「そうね~、昔とずいぶん変わっちゃったし、私のいた家はここから少し離れた場所だから……」
「ともかく行ってみましょう!」

 サク戦車は目立つので雪で隠したが、皆んなはちょっと楽しそうに雪で隠していた。
 ルルアとムーンに背中を押され、記憶を頼りに村外れにある家を目指す。

「そう言えばエイルさんのお師匠さんのお名前伺って無かったですね? おじいちゃんみたいな人ですか?」
「う~ん……、マブルさんに似てると言われれば似てるかも知れないけど、結構厳格な人だよ」
「厳しいんですか?」
「そうね、錬金技工術師アルケミスターは危険な薬品なんかも使うから……一歩間違えたら大怪我じゃ済まないもの」
「厳しくなるわけですね」
「おじいちゃんも作業の時は厳しいから、良くわかります」
「そうでしょう」
「それでお名前はなんて言うのですか?」
「そ、それは……」

 ムーンが聞くも、エイルはなんだか言いにくそうにしている。

「どうかしたんですか?」
「い、いやあ……、それが……、私のお師匠は直ぐに名前を変えちゃうから……今はなんて名乗っているのか知らないの」
「え!? それじゃ名前では探せないし、顔がわかるのがエイルさんだけって事ですか!?」
「……そうなる……」

 話しながらもエイルは村の人に見つからないようにコソコソしながら村の反対側にある家へ向かう。

「エイルさん、何隠れてるんです?」
「どうかしたんですか?」

 エイルが建物の影に隠れたり、三人の影に隠れたりしながら歩いている事に疑問を持つ。

「あ、あはは……、……実は……ね……」

 エイルが言うには、お師匠がここでは有名人過ぎてその弟子となると顔が割れているのであまりバレたく無いと言う事らしい。

「お師匠さんそんなに有名な方なんですか?」
「ええ……、まぁ……」

 隠れながらも村の中を歩いているが、今いる四人の中で一番身長が高いので隠れる事も出来ておらず、エイルを知る人にあっさりと見つかった。

「ん? あら? もしかしてそこにいるのはエイルちゃん?」

 声をかけて来たのはふくよかな女性に声をかけられた。

「あ……、お、お久しぶりです……」
「あらー! やっぱり! 皆んな! エイルちゃんよーー!」

 エイルのやめてー! と言う顔をよそに村の人に声をかける女性。
 すると、手が空いている人がゾロゾロとエイルの周りに集まって来た。

「久しぶりじゃないか!」
「元気してたかい?」
「今も師匠と一緒なのか?」

 などの声が飛び交う。

「す、すいません。 急いでるので、これで失礼します! また、顔出しますからーー!」

 エイルはルルア、メメルの手を掴んでムーンはエイルの後を追って走り村を出た。

「ハァハァ……、危なかった……」
「……エイルさん、人気あるんですね」
「エイルさん、何も走って逃げなくてもよかったのでは?」
「ですです。 皆さん久しぶりに顔を見せたエイルさんと話したがっていそうでしたよ」
「そうかもだけど、大概が師匠に対する話しなんだよ~。 ここにいた時はもう、なんでも屋みたいな事してたし……魔生獣の討伐とかね」
「そんな事まで?」
「実は……私の師匠は元ガルでね……」
「え?え? そうなんですか!? だからエイルさんもガルを?」
「まあ、そんな所……」

 師匠が元ガルと言う事がわかったが、相変わらず名前を言わないエイル。

「名前を変えても、元々の名前ってありますよね?」
「そうだよ、エイルさん! その名前はなんて言うんですか?」
「……ナイデル……」
「ナイデル? なんだか何処かで聞いた名前……」
「……あの、その方ってもしかして……」

 メメルは何か気がついたよう。

「もしかして、ガルの最高ランクのオリハルコン級の方じゃ無いですか!?」
「あ、あたり~……」
「「ええっ!!」」

 これには三人共驚きが隠せない。 ガルのオリハルコン級は世界に二人しかいない。 その一人がエイルの師匠と言うのだから。

「そんな凄い人がエイルさんのお師匠さんなんですか!?」
「そうなんだよ……。 ここでは名前を変えていたけどね」
「はえ~……凄い! 凄い!」
「そ、それより早く行かないと夜になっちゃう」
「そうですね」

 村から出て雪の中を進み、四人は前にエイルが住んでいた家に辿り着いた。
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