A Ghost Legacy

神能 秀臣

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有名声優は救いの女神!

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 幽霊屋敷を作り上げる作戦以来、隆之介と真里奈は酷い風邪を引き、中々治らずにいた。
 天気も悪く、太陽まで休暇を取ったようだ。
 二人の枕元には、常時薬が置かれている。
(ウグゥゥゥッ……なんつー頭痛だ……今は金よりも健康が欲しい~……っ)
 隆之介は激しい頭痛でベッドから動けずにいた。
 食べ物も口に入らないし、喉も乾く……何なんだ、この地獄の苦しみは。水が欲しいが、一階まで下りて取りに行く体力もない。
 手元にある空のボトルをゴミ箱に投げ捨てると、隆之介は考えた。
(二階に水があれば……二階に……あっ!)
 彼の脳裏に一つ心当たりが浮かんだ。あそこになら少しぐらい水があるかも……。
 隆之介は床を這いながら部屋を出て、隣の部屋に向かった。
 隣の部屋では、真里奈が咳をしながらベッドで寝ていた。目は焦点が定まっておらず、呼吸も乱れ、かなり苦しそうにしている。
「ゴホッゴホッ……これは……目的を中々……果たせない……私達に対する……伯父さんの嫌がらせかしら……ゴホッゴホッ……え?」
 彼女が愚痴を言ってると、突然部屋のドアが開いた。誰だろう……そう思いながらドアの方に目をやると、そこにはゾンビのように床を這いずりながら不気味な呻き声を上げて、こちらへ迫って来る兄の姿があった。
「イッ……イヤァアアアアアッ!!」
「ウゥゥゥッ……み、水……水をくれぇぇぇっ……」
 フラリと立ち上がってゆっくり向かって来る兄に対し、真里奈は大声で罵倒する。
「来んな、この変態!バカアホクズのシスコン兄貴がぁぁっ!!」
 真里奈は顔を真っ赤にしつつ、普段なら口が裂けても吐かないであろう罵詈雑言を浴びせながら、近くにある物を手当たり次第投げつけた。その中には、水が入ったボトルもあった。
「お……おお、水だ!ありがとう……」
 水は三分の一程度しか残ってないが、隆之介は有難くそれを飲み干す。だが、喉を潤せて気が緩んだのか、真里奈のベッドへ倒れ込んだ。
「なっ!?何やってんのよ!?出てけ、ここは私のベッド……ゴホッゴホッ!」
「う、う~ん……とても暖かく……そして、柔らかい……」
 隆之介は意識が朦朧としたままモゾモゾと身体を動かし、やがて中学生には似つかわしくない彼女の豊満な胸の谷間に顔を埋めた。
「ちょ、ちょっと……どこに顔をつけて……ふぅぅ、はぁぁ……」
 頬を上気させ、乱れた呼吸を整えようと深呼吸する真里奈はやけに色っぽかった。
 妹の胸を堪能すると、今度は汗が浮き出た首元で舌を滑らせる。
「ひぁっ!首の辺りっ……な、舐めないでよっ……ぅう……ん」
 真里奈は寝ぼけて抱きつく隆之介を力づくで引き剥がそうとするが、風邪で全身に力が入らず抵抗出来なかった。
 その後、あろうことか隆之介は真里奈のベッドで眠ってしまい、彼女が兄から解放されたのは買い物に出ていた母親が帰宅してからであった……兄妹共々、無茶苦茶怒られたが。
 数日後……ようやく風邪も治りかけたある日の夕方、近くのコンビニにお菓子を買いに出かけた二人は道中で、しっかり手を繋いで歩いているカップルとすれ違った。
「ん!?あれは……」
 すれ違いざまに見た女の子は、あの俊子!隣の彼氏の方は小柄な俊子とは対照的にヒョロリと背が高い。成程、肩を組むには差があり過ぎて、手を繋いでいる訳だ。
 俊子はワイン色のダウンジャケットに同じ色の毛糸の帽子、そして何より普段からかけていた瓶底眼鏡を外していて、ホテルの制服の時より何十倍も可愛い。
 男の方は俊子を見つめていて、顔は一切見えない。黒いダウンジャケットにジーンズ、そして肩まで届くような長い髪を束ねている。
「瓶底眼鏡の下は超絶美人か……しかし、男がいれば女は変わるもんだな」
 隆之介は訳知り顔で言った。
「中々良い感じのカップルじゃない」
 そう言いながら、真里奈は二人を見つめていた。

                  ★

 どんよりとした雲は連日空を覆い隠し、待ちかねた太陽が戻って来たのは冬休みをとうに終えた後だった。本日は和代が帰って来る日……指折り数えて待ってた日だ。
 遂に達哉の幽霊が登場する。和代が幽霊屋敷に気付くのに、一日……イヤ、半日あれば充分だろう。
 授業を終えた放課後、隆之介と真里奈はホテル・キングスクラブに出かけた。
「さ~て……どうなってるかな」
「期待通りの結果になってるといいけどね」
 道中、二人は仕掛けが上手く働いていることを祈りながら、そう話していた。あれらの仕掛けを施す途中で思わぬ邪魔が入るわ、それを終えて帰る途中で嵐に遭うわで何かと散々だったから、ここで成功していなければ苦労した自分達が報われない。
 ホテルの前には、三上のタクシーが停まっている。どうやら、既に全員戻って来たようだ。
 二人は自転車を押しながら用心深く近づいて行った。ホテルの玄関ドアは何故か開きっぱなしになっており、いつもと様子が違う。
「何かしら?穏やかじゃないわね……」
 何かを感じ取った真里奈は足を止めた。
 兄と二人で少し離れた位置から見ていると、
「野蛮人!!家中壊しまくって!!泥棒!!人殺し!!」
 急に和代の怒鳴り声が聞こえた。壁や窓ガラスまで震えそうな大声だ。
 あまりの剣幕に震え上がって、二人がこっそり帰ろうとした時、声の主が現れた。
 髪を振り乱し、頬は怒りで赤くなり、燃えるような目からはこれでもかと言わんばかりの怒りが伝わって来る。その両手は作業着を着た男二人の襟首を掴んでいた。
「アンタ達の親方に伝えてちょうだい!全部、弁償してもらうからってね!!」
 和代は、もごもごと抗議している二人に耳も貸さず、ライトバンまで引きずって行く。人間離れ……とまでは行かなくても、女性離れした怪力だ。傍に立っている隆之介と真里奈の存在すらも、目に入らない。
 和代は男達を車に放り込むと、叩きつけるようにドアを閉めた。車は転がるように坂を下りて行く。和代は回れ右をしてホテルの方へ歩き出し、やっと隆之介達に気付いた。
「まぁ、久しぶり!会いに来てくれたの!?」
 二人の顔を見るや、いつもの和代へ戻った(さっきの怒号も、ある意味いつも通りではあるが)。
「寒くて震えてるじゃない!さっ、早く入って!何か食べて温まらないと、凍えちゃうわ!」
 二人を押すようにしてホテルへ入ると、ソファーに座らせた。
「俊子ーっ!どこにいるの!?」
「ハ、ハイィ~!ただいま、和代様ぁ~っ!」
 俊子がせかせかと現れる。目が見えないような分厚いレンズの瓶底眼鏡に、従業員の証であるメイド服……普段の俊子だ。
(眼鏡外せば可愛いのにな……)
(何か、色々と勿体ないわね……)
 以前、町中で見かけた彼女の姿を思い出しながら、二人は残念そうな表情で見た。
 和代は俊子に指示する。
「可哀想な子供達に何か食べるものを持って来て。それから屋根の修理に、他の職人を見つけてちょうだい!」
「屋根の修理?」
 隆之介は訊いた。
「実はね、風で瓦が飛ばされちゃったのよ。帰って来たら、三階は雨漏りで水浸しの酷い有様で、修理業者を今日呼んだら何もかも滅茶苦茶に壊しちゃって!棚にあった大事な化粧品は落とすし、クローゼットにかけてあった洋服も、カーテンも額縁も全部叩き落しちゃったのよ!」
「それ……本当に彼らがやったのかしら」
 おずおずと真里奈が尋ねた。
「アイツら、自分達じゃないって言うのよ!でも、他に誰がいる?家具等が勝手に落ちやしないでしょう?その上、下手な落書きまでして……ふざけてるったらありゃしない!」
「下手な落書き……?」
 隆之介が引きつった顔で尋ねる。嫌な予感しかしない……。
「何だか訳の分からない昆虫みたいな絵よ。職人達に消させたわ。ホンット、野蛮な人達!」
 隆之介と真里奈は途方に暮れて見つめ合った。忌まわしい雨のせいで、全ての苦労が水の泡と化した……今回の作戦も事実上失敗だ。
(終わった……もう同じ作戦は通用しないだろうし、あれだけ大がかりだと再準備も出来ない……)
(残り数日……他に何か打開策があればすぐに実行するけど……)
 和代と話しつつ頭の中で次の作戦を考える二人だが、その片隅に「諦め」の二文字がよぎっていた。こんな人を怖がらせるなんて出来るのか?さっきの修理業者とのやり取りだって、大の男二人を腕っ節で追い返したんだ。半端な脅かしは、当然通用しないだろう。
 そう考えていた時、二階で「ドスン!」と音がし、透き通った女性の叫び声が響き渡った。
「能勢さんの声だわ!」
 和代は叫んで走り出した。二人も後に続く。
 黒い長髪に黒い服の女が踊り場に走り出て来た。幽霊屋敷を作る際に見た、あの写真の声優らしい。写真よりも数割増し美人だ……(by 隆之介)。
「ああ!なんて恐ろしいの……!」
 額に手を当てて叫ぶ。流石は女優だ、ポーズが決まっている。
 隆之介も真里奈も舞台劇さながらの彼女の仕草一つ一つに見とれてしまった。
「能勢さん、落ち着いて!一体何があったんです!?」
 和代が宥めるように言った。
「コルネイユ!ラシーヌ!蜘蛛!それから、しゃ……しゃ……写真が!」
 ……何か恐ろしいものを見たように、酷く怯えている。隆之介と真里奈は呆気に取られて、その様子を見ていた。その時、また「ドシーン!」と大きな音がした。
「今度は何事!?」
 和代が驚いていると、今度は三上が腰をさすりながらフラフラと廊下に出て来た。
「アイダダダ……何てこったい!ベッドが突然崩れ落ちたんだ!いい気持ちで昼寝してたら、突然ドスンだ!その上、蜘蛛!壁にドデカい蜘蛛ですよ!」
「蜘蛛ですって!?恐ろしい……どこもかしこも蜘蛛だらけ!これはきっと、何かが始まる予兆だわ!業背さん、ちょっと見て下さい!」
 黒い衣服の女性声優は、和代を自分の部屋に招き入れた。こちらは計画通り、本棚から悲劇作家の全集がなだれ落ちている。その上には、伯父である達哉の写真が乗っていた。
「本を取ろうとしたら、ガラガラと崩れ落ちて……あぁ、私の大切な本が!生き埋めになるかと思った!そして、こ……この写真が顔の上に落ちて来たんです!そしてホラ、見て下さい!壁に写真と同じ蜘蛛が!」
「っ!」
 写真を目にした和代の顔が急に強張った。
 それを見ていた隆之介と真里奈は顔を見合わせる。
(アレ?もしかして、流れ変わった……?)
 二人はそう思いながら、三人の様子を注意深く観察していた。
 特にこの由美子と言う人、もしかしたら逆転のチャンスを運んで来るんじゃ……。隆之介と真里奈は彼女に一つ、賭けてみることにする。
「何で、この写真がこんな所に……」
 和代はそう呟いて、写真を取り上げた。伯父の達哉が上半身裸になった、肩に例のタトゥーもハッキリ写っている写真だ。由美子は達哉の肩を指差しながら言う。
「このタトゥーを見てごらんなさい!壁に描いてあるのと同じ蜘蛛ですよ!」
「本当だ!あっしの部屋にあるのも同じ蜘蛛ですよ!いやぁ~驚いたね、こりゃ!時にこの男、一体誰なんです?」
 三上も驚嘆しながら写真を見つめた。
「達哉……」
 珍しく、小さな声で和代がその名を答えた。それを聞いた三上は思い出したように言う。
「達哉?あぁ、あの夜中に大声で喋ってた奴ですか?ホラ、確かクリスマスの前に」
「夜中に喋ってたですって!?」
 由美子が驚愕しながら、三上に尋ねた。
「ええ。あなたはもう、休暇に立たれてここにはいなかったけど、真夜中にね。『達哉って言うんだ、また来たよ』とか何とか……」
「達哉!小田切 達哉!懐かしい名前だこと!」
「へ?知ってるんですかい?」
「勿論!昔はしょっちゅうここに来ていたわ!賭け事が好きな人でねぇ、声優仲間である私の友人とも良くゲームをして遊んでいたわ。でも、しばらく見ないわねぇ……」
 由美子が懐かし気に言った。どうやら伯父は、そう言う業界にも多数の友人や知り合いがいるらしい。交友関係どうなってんだ……隆之介はそう心の中でツッコんだ。
「先月死んだんです」
 和代がポツンと言った。
「まぁ、お気の毒に…………えっ?今、死んだって仰った?それで三上さんは彼の声を聞いたんですって?その上、ホテル内で水漏れや蜘蛛!あぁ、マダム・業背!恐ろしい!これは……ズバリ、アレ・・ですよ!」
「何ですか、アレ・・って……」
 和代が不安な表情で由美子に尋ねる中、全てを察した隆之介は胸中で叫び続ける。
(そうだ!水漏れとかは偶然だけど、ホテルでこんな怪奇現象が連続で起きたら、もうアレ・・しかねぇだろ!さぁ言うんだ!その答えを!!)
「幽霊……」
 由美子は震える声で呟いた。和代は驚きながら訊き返す。
「何ですって?」
「出るんですよ!小田切 達哉の幽霊が、ここに出没するんですよ!」
 由美子は大声で、その場にいた全員に伝えた。それを聞いた隆之介と真里奈は、
(そう言うこと!!)
 思わず、二人は由美子に対してお礼を言いそうになった。歳の差なんて何のその、救いの女神として現れた彼女に抱きついてキスしたくなる程だった。
 彼女のお陰で、遂に小田切 達哉の幽霊は日の目を見るのだ!

                  ★

「そんな……能勢さん、幽霊なんていやしませんよ!」
 和代はキッパリと否定した。
「いますとも!勿論、幽霊は存在します!私には聞こえるんです、物音が……第一、この家に出るのは不思議でも何でもありませんからね。屋根裏にご主人の骸骨があるんですもの!」
「屋根裏に骸骨だって!?」
 由美子の衝撃の発言に、三上が素っ頓狂に叫んだ。
 隆之介と真里奈も声には出さないが、彼女の言葉に驚く。
(どう言うことだ!?彼女も例の白骨を知ってるのか……?)
(この人……一体何者なの!?)
 二人は由美子をまじまじと見つめていた。
 彼女も隆之介と真里奈に気付き、
「ところで、この子達は誰なの?」
 そう尋ねた。だが、三上も和代もそれには答えず、
「あっしは、その骸骨が誰なのか知りたいね」
「私の亡くなった主人のです。学生だった頃のね……」
「そんな若くで亡くなったとは知らなかった。学生結婚ってヤツですかい?」
 和代の言葉を聞いて、三上はびっくりした。
「勘違いしないで下さい、骸骨が主人なんじゃありません。主人が持っていた骸骨です。彼、医大生だったんです……二年で大学辞めちゃったけど。でも人体には関心があって、死ぬまで骸骨を手放さなかったんです」
「でも、ホテルに骸骨を置いておくのはヤバいんじゃないっスか?」
 不安気な表情で三上は尋ねた。
「そうですとも!幽霊を引きつけるんです!その証拠に……」
「どこに証拠があるんです!?」
 由美子が言い終わる前に、和代がキッと睨んだ。そして、そのまま反論する。
「屋根が飛んだのは風せいだし、そのせいで床は水浸しになった……それに散らかしたのは、ドジな職人だし……」
「じゃ、ラシーヌとコルネイユの全集を読みたがったのも、職人達だって仰るの?」
 由美子が和代の言葉を遮った。彼女は続ける。
「小田切氏の写真も彼らの仕業?三上さんのベッドが崩れたのも?そして小田切氏のタトゥーも、果たして誰かによって描かれたものなのかしら?考えてみて下さい、マダム・業背。一介の屋根修理の職人が全部やったとは思えませんよ。この家は出るんです。そして私の勘だと、この子達と幽霊は無関係ではありません」
「なっ……!?」
 隆之介と真里奈は思わずギクッとした。
 まさか、この女……自分達の仕業だと見抜いていたのか?
 幽霊の話を広げてくれるだけなら救いの女神とも言える存在だったが、自分達の正体や怪奇現象の核心まで迫られては、彼女の存在は一転して脅威に変わる。
 二人の背中に冷たい汗が流れる。隆之介は思わず声を大にして答える。
「ま、待ってくれ!俺達、何もしてねぇぞ!」
「そうですよ!この子達が何かする筈ないでしょう!」
 和代も腹立たし気に言った。
 この時ばかりは、二人から見て和代が非常に頼もしく見えた。
「いいえ、子供は霊やオカルトの力を呼び易いんです。大人より遥かに感覚が鋭いから。超自然現象が起こった時、近くに子供がいるのはよくあることなんです」
 あ、そっち……隆之介と真里奈はそう思いながら、ホッと胸を撫で下ろした。流石に二人の仕業とまでは気付いてなかったようだ。
「ところで業背さん、霊と話したことはおあり?」
 謎めいた様子で、由美子が和代に尋ねた。
「……何ですって?」
「霊を呼んで話すんですよ……交霊術でね」
「能勢さん!あなたは占いとか霊媒だとか、戯言ばっかり!」
「テーブルが話すのを見たことがありません?」
 和代の言葉をスルーし、由美子はお構いなしに続ける。
「テーブルは話したりしませんよ、能勢さん」
「霊が話すんです。実験してみましょうか?」
 不気味なオーラを発している(ように見える)由美子に対し、三上は不安気に尋ねる。
「ここに霊を呼び集めようってんですかい?」
「既に一人、ここにいます。何故現れたのか、何故……突然私達をおびやかすのか、それを聞いてみましょう」
「で、テーブルに喋らせようって言うんですかい?」
「その通り。手順としては先ず、部屋の電源を全て切るんです」
「冬の真っ最中に!?そんな、凍えちまいまさぁ……あっしはごめんだね」
 どうやら、三上は怖がりな上に寒がりらしい。
「暖炉に火を点ければ良いでしょう。それから霊を呼び寄せます。霊が応えてくれるなら、テーブルを叩いて意思表示します」
「私達に乱暴したり、家を壊したりしないでしょうね……?」
「心配いりません、私にお任せなさい。この子達も一緒なら、尚理想的なんだけど」
 隆之介と真里奈を見て、由美子は言った。当然、二人の答えは決まっている。
「参加します!」
 二人は同時に叫んだ。
 一人取り残された三上は慌てながら由美子に尋ねる。
「あっしは!?あっしはどうなるんです!?」
「あなたの精神力も必要です」
 由美子が答えた。それを聞くと、
「頼りにして下さい!」
 三上は張り切って胸を叩いた。
 交霊のことで盛り上がる三人の大人から少し離れた位置で、隆之介と真里奈は今後の動きについて小声で話し合う。
「まさか、こんな風に流れが変わるとはな……」
「でも、これは絶好の機会チャンスよ!この展開を利用しない手はないわ」
「あぁ……二度に渡って失敗したと思っていた作戦が、こんな形で実を結ぶとは……想定外ではあったが、逆転の道が開かれた。次が俺達の……最後の作戦だ!!」
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