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いち。
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まだ肌寒い風とうらはらに柔らかな日差しが降り注ぐ。
三年前にはじめて袖を通した制服は、すっかり体に馴染んで、はじめて着た時と同じように左胸に小さな造花を飾られている。
校舎脇の河津桜も、最後の仕事と心得たように、散り始めた花びらを僕らの上にヒラヒラと舞わせるなか。
大変です、むしろ事件です。
そう叫んで駆け去りたい気持ちで一杯になりながら、目の前で右手を差し出しつつ体を曲げる級友に……級友なのかな、同じクラスになったのは二年の時だけだったけど。ホントにただ同じ組になったというだけ程度の関わりしかなかったけど。とにかくそんな、なんで卒業式の後なんてちょっと特別な時に僕の事を呼び出すのかさっぱりわからない関係の、そんな彼が伏せた顔を上げないまま、校庭中に響きわたる声でとんでもない事を言い放った。
いわく。
「結婚を前提に同棲してください!!」
それぞれ思い思いに、校庭のあちこちで別れを惜しんでいた卒業生たちからざわめきが消える、
うん、その気持ちはとてもよくわかるよ。ぼくも当事者でなければ思わずこっちの様子をうかがってたと思う。
学校一の有名人と、十把一絡げの凡庸な生徒。
しょっちゅう視線をその身に受けなれている彼と、こんな大勢の耳目をはじめて受けるぼく。
同性婚が正式に施行されて五年はたっていても、未だに少数派であることは否めないこの時代に、高校の卒業式で大勢の前で告白なんかしちゃう彼と、今まで同性との交際なんか考えたこともなかったぼく。いや、同性どころか異性とも交際経験とかないですけども!
「ちょ……っ、あの、なんでぼく? というか、今までぼくと君って何か接点ってあったっけ?」
三年前にはじめて袖を通した制服は、すっかり体に馴染んで、はじめて着た時と同じように左胸に小さな造花を飾られている。
校舎脇の河津桜も、最後の仕事と心得たように、散り始めた花びらを僕らの上にヒラヒラと舞わせるなか。
大変です、むしろ事件です。
そう叫んで駆け去りたい気持ちで一杯になりながら、目の前で右手を差し出しつつ体を曲げる級友に……級友なのかな、同じクラスになったのは二年の時だけだったけど。ホントにただ同じ組になったというだけ程度の関わりしかなかったけど。とにかくそんな、なんで卒業式の後なんてちょっと特別な時に僕の事を呼び出すのかさっぱりわからない関係の、そんな彼が伏せた顔を上げないまま、校庭中に響きわたる声でとんでもない事を言い放った。
いわく。
「結婚を前提に同棲してください!!」
それぞれ思い思いに、校庭のあちこちで別れを惜しんでいた卒業生たちからざわめきが消える、
うん、その気持ちはとてもよくわかるよ。ぼくも当事者でなければ思わずこっちの様子をうかがってたと思う。
学校一の有名人と、十把一絡げの凡庸な生徒。
しょっちゅう視線をその身に受けなれている彼と、こんな大勢の耳目をはじめて受けるぼく。
同性婚が正式に施行されて五年はたっていても、未だに少数派であることは否めないこの時代に、高校の卒業式で大勢の前で告白なんかしちゃう彼と、今まで同性との交際なんか考えたこともなかったぼく。いや、同性どころか異性とも交際経験とかないですけども!
「ちょ……っ、あの、なんでぼく? というか、今までぼくと君って何か接点ってあったっけ?」
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