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暗雲たちこめる王国と公国

灰色のローブの男の策

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リーチェが戻り、村長宅にて互いにあった事の情報交換を始めた。

シンは元の世界での出来事が起爆剤となり、ジュードの死よって爆発。負の自分を産み出し暴走状態に陥った事を述べた。
シンの知られざる過去の話を聴き終わり、大切な人達を亡くしながらも、たった独りで強大な組織と戦わざる得なかったシンの気持ちと、冷遇する世界に対し、サラとリーチェは複雑な表情と共に、やりきれなく、せつない感情が胸中に渦巻いた。

『このひとはどこまでも辛く暗い時間と世界を歩み続けてきたんだろう。』

そう思い、自然と2人から涙が溢れた。
思えば、あの戦闘から「よく泣くなぁ」と、サラもリーチェも自分自身の事をそう思った。

サラ達の方は、灰色のローブの男が現れ、オークを召喚し、あの様な事態になった事を報告した。

「……なるほど、やはり王国に対する見せしめの策略と捉えるのが普通だな。問題はどこの誰がそれを実行に移したか。だな」

現時点において、謎が多い人物。灰色のローブの男。
呼び名は、『グレイ』と暫定的に呼ぶ事とした。

そこまでのやり方からすると、小さな動機としては私怨。大きな動機としては国による侵略の為の布石の一つ。
一体何の為にあの様な事したのか?
あの様な行動の裏の意図とするものは何なのか?
また、歴史から見ても、グラード王国に対し絶対の侵略をしてはならない約定があったはず。
腑に落ちない。
侵略のパターンとしては、武力行使が一般的だろう。
だが、それ以外なら。

シンはハッとした。
それ以外!
それが答えだ。

「サラ、リーチェ、大至急王都に戻ろう。今度は後手に回る訳にはいかない!」
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