ビッグテック皇帝 最適化された未来

深井零子

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Re:FAN つくられた熱狂 その1

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 数年前まで野球観戦の人気低下はひどかった。セイバーメトリックスや科学的トレーニング方法が確立され、戦術や選手のプレーの画一化が進んだ。また、娯楽として野球は時間がかかりすぎるという問題は野球人気の絶頂期の時にもすでに指摘されていた。それらが野球観戦の人気低下の原因だと言われていた。

 プロ野球機構は興行として再復活するために世界的ビッグテック企業と提携して「Re:FANシステム」を導入するとなり、プロ野球業界では大変話題になった。そのシステムは成功し近年は再び大人気のスポーツ興行として覇権を取り戻した。

 そして今日もスタジアムに声熱い歓声が響き渡る。あの頃の野球人気の低迷が嘘のようだ。

 そろそろ俺の出番か。歓声を聞きながらブルペンで肩をつくる。ナックルボーラーの俺は肩を作るといってもそこまで熱心にやる必要はない。肩を軽くほぐす程度で充分だ。時速160キロのファストボールを投げる投手の存在が当たり前の環境の中、せいぜい時速120キロ程度の俺はキャッチボール程度で準備ができる。

 普通の投手はファストボール、ブレイキングボール、チェンジアップなどを織り交ぜて打者を打ち獲る、あるいは三振を獲る。しかし俺のようなフルタイムナックルボーラーはナックルボール一本で勝負する。そう、全球ナックルボールだ。長いベースボールの歴史でもフルタイムナックルボーラーは限られている。ちょっとしたマニアなら有名なフルタイムナックルボーラーの全員の名前を空で言える程度に少ない。

 ナックルボール、それは不思議な変化球だ。まさしく魔球にふさわしい。独特の握りからボールに一切回転を与えずに投げる。3本の指で弾き出すのではなく押し出すように投げる。

 通常の投球ではバックスピン、サイドスピン、あるいはトップスピンをかけボールを意図的に変化させるが、この変化球は全く違う。ただただ、空気抵抗に任せボールの変化はボールにゆだねる。そしてボールは揺れる、突然伸びる、突然曲がる、突然落ちる。捕手すら軌道が読めず捕球できないことすらある。

 俺の出番が来た。ブルペンからマウンドへブルペンカートで。そして、いつも通りマウンドで投球練習に入る。他の投手からするとキャッチボールのような球を規定の7球投げる。今日もいつも通り不規則なボールだ。稀に全く変化しないバッターからすればバッティング練習のボールにしか見えない時があるが今日は問題ない。

俺は今日もいつも通り打者を翻弄し、役割を淡々と果たした。





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