ビッグテック皇帝 最適化された未来

深井零子

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新たな仕事 語り部

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 俺はコンビニのバイト店員だった。棚に弁当を並べ、レジを打ち、夜中に酒を飲んで寝る。それでよかった。ビッグテック皇帝が世界を握る前は、コンビニ店員なんて誰も気にも留めなかった。そんな存在だった。

 だが、今は違う。ビッグテック皇帝が「生活最適化システム」を始めた。そのシステムが動く前、コンビニは人間が回してた。客が来て、金を払い、商品を持ってく。それだけだ。簡単だった。

 だが、10年前、店は全部自動化された。レジはAI、陳列はドローン、在庫管理はクラウド。俺は「監視員」として雇われた。システムがミスしたとき、客のクレームがきたとき、俺が対応する。給料は悪くない。飯を食い、酒を飲む金には困らない。たまに気分悪い客がいるが、酒を飲めば忘れる程度の話だ。

 ある朝、システムが止まった。店内のモニターが真っ黒になり、ドローンが宙でフリーズした。客が叫ぶ。「商品が取れねえ!」、「金返せ!」俺は内心「知ったことか」と。システムが動かないなら俺も動けない。店内のラジオから流れるニュースからビッグテック皇帝が「次のフェーズ」に入ったとかなんとか。いいから早くシステム復旧させろと内心で毒づいた。

 数日後、ビッグテック皇帝からアナウンスがあった。人間は「体験提供者」になれ、と。システムが商品を売る、人間は客に「人間らしい体験」を提供しろと。何を言っているのか理解できない。コンビニで何の体験だ?ただの買い物だぞ。

 それでも俺は新しい仕事に従い、レジカウンターに立つ。だが別に会計の仕事をするわけではない。客に笑顔で話しかけるのが仕事らしい。いい歳のおっさがんが客に愛想よく媚びろってか。俺は水商売の店員じゃないんだが。

 そしていつも通り愛想振りまいていたら、若い客が言う。「昔、おっちゃんがどんな仕事していたか聞きたかったんだ。」俺は面食らう。俺の話? 何言ってんだ。
 
 だが、客は続ける。「システムは完璧だけど、なんか冷たい。心のある人間の話が聞ききたい。」

 俺は仕方なく、昔のことを話す。コンビニの深夜、酔っ払いが絡んできた話、弁当を温めすぎて焦がした話、たわいもない話だ。だが、客は笑う。システムにはないイレギュラーな話を求めてるらしい。

 そんな日々が続いていたが、ビッグテック皇帝はまたシステムを改良するというニュースが流れてきた。

 次は「体験提供」の効率化をすると。「体験提供」の効率化?客はイレギュラーな話を求めているだろうにそれを効率化?今度は効率的にトラブルを発生させる気なのか。それとも小話をまとめて、皆つけてるヘッドセットで学習するのか。

 そんなことを考えつつ、今日もコンビニのレジカウンターで愛想を振りまく。

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