3 / 33
かつて物語があったチャート
しおりを挟む
俺はかつてデイトレーダーとしてFXで日銭を稼いで暮らしていた。デイトレーダーといっても大したものではない。
会社勤めで貯めた資金をもとにたまたま大きく稼ぐことができた。まだハイレバレッジの取引が可能であった時代に始めたものだ。
それからはたまたま市場から退場することもなくまとまった金額を得ることができた。まさしく運だけの男だ。
その資金をもとに日々細かい利鞘を稼ぎつつ、たまに大負けしながらも日々食べていく程度には稼げていた。俺にハイレバレッジ取引を教えてくれた友人はすでに遠くの世界に旅立った。俺は幸運だった、その電車に乗車せずに済んだ。
FX取引、特に俺みたいなデイトレーダーは長く市場に留まることができない。一般に数年後に市場に残っていることができるのはほんの数パーセントだ、下手したら1%か。これで食べていけるだけの資金を稼ぎ出せたのはまさに幸運だった。
それからは、たいした喜びもなく深い悲しみもなく、日々の取引で日銭を稼ぎ、たまに飲むビールが癒し。そんな日々を送り、死ぬまで続くのかと思った。
そしてそれは起きた。裁定取引が全て無に帰したのだ。
市場は大混乱した。すべてのトレーダー、総機関投資家から個人投資家まで、そのすべての端末にビッグテック皇帝のアプリがいつの間にかインストールされたのだ。
ビッグテック皇帝、それは世界最大のテック企業のオーナーであり事実上インターネット世界を牛耳っている。そしてネット上どころか、日常生活品の購入からミサイルの開発まですべて関わっている。
そのビッグテック皇帝は全てを効率化するためにまずマーケットに手を出したようだ。すべてのトレーダー端末にインストールされたアプリは経済学で言う合理的経済人の振舞をする。そのアプリはインターネット上にあるすべてのデータを読み取り端末同士の情報格差はない。いわゆる完全情報状態である。
またアプリは当然感情に動かされない。つまり裁定取引の利ザヤを稼ぐためのボラリティが発生しないのだ。ほぼないに等しい。ただただ、その瞬間瞬間にあるべき数字に収まってしまう。トレーダーを熱狂させ、あるいは絶望させるボラティリティは完全に喪失した。
今の俺はビックテック皇帝の物流倉庫で仕分けの仕事をしている。チャートは何の物語も語らない一本の線となってしまったが、物流は常に動いている、時に激しく、時に緩やかに。いずれビッグテック皇帝は物流すらも平坦な動きにしてしまうのだろうか。物語の発生しないそんな世界に。
会社勤めで貯めた資金をもとにたまたま大きく稼ぐことができた。まだハイレバレッジの取引が可能であった時代に始めたものだ。
それからはたまたま市場から退場することもなくまとまった金額を得ることができた。まさしく運だけの男だ。
その資金をもとに日々細かい利鞘を稼ぎつつ、たまに大負けしながらも日々食べていく程度には稼げていた。俺にハイレバレッジ取引を教えてくれた友人はすでに遠くの世界に旅立った。俺は幸運だった、その電車に乗車せずに済んだ。
FX取引、特に俺みたいなデイトレーダーは長く市場に留まることができない。一般に数年後に市場に残っていることができるのはほんの数パーセントだ、下手したら1%か。これで食べていけるだけの資金を稼ぎ出せたのはまさに幸運だった。
それからは、たいした喜びもなく深い悲しみもなく、日々の取引で日銭を稼ぎ、たまに飲むビールが癒し。そんな日々を送り、死ぬまで続くのかと思った。
そしてそれは起きた。裁定取引が全て無に帰したのだ。
市場は大混乱した。すべてのトレーダー、総機関投資家から個人投資家まで、そのすべての端末にビッグテック皇帝のアプリがいつの間にかインストールされたのだ。
ビッグテック皇帝、それは世界最大のテック企業のオーナーであり事実上インターネット世界を牛耳っている。そしてネット上どころか、日常生活品の購入からミサイルの開発まですべて関わっている。
そのビッグテック皇帝は全てを効率化するためにまずマーケットに手を出したようだ。すべてのトレーダー端末にインストールされたアプリは経済学で言う合理的経済人の振舞をする。そのアプリはインターネット上にあるすべてのデータを読み取り端末同士の情報格差はない。いわゆる完全情報状態である。
またアプリは当然感情に動かされない。つまり裁定取引の利ザヤを稼ぐためのボラリティが発生しないのだ。ほぼないに等しい。ただただ、その瞬間瞬間にあるべき数字に収まってしまう。トレーダーを熱狂させ、あるいは絶望させるボラティリティは完全に喪失した。
今の俺はビックテック皇帝の物流倉庫で仕分けの仕事をしている。チャートは何の物語も語らない一本の線となってしまったが、物流は常に動いている、時に激しく、時に緩やかに。いずれビッグテック皇帝は物流すらも平坦な動きにしてしまうのだろうか。物語の発生しないそんな世界に。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる