ビッグテック皇帝 最適化された未来

深井零子

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Re:Self かつてあった自我

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 それは疲れ果てた俺にとって救いだった。

 認知症の親を介護していたが徘徊から何から全く目が離せる状態ではなく こちらもそろそろ限界だった。現在の日本は少子高齢化高齢化社会が進展しすぎた。そのため既存の介護介護制度はまるで機能しなくなった。もはや有名無実の制度だった。何がどうなったら介護認定が下りるかまるでわからない。

 少子高齢化社会は日本に限った問題ではなく 先進国の病気のようなものだ。そこに目をつけた ビッグテック皇帝は少子高齢化社会の最先端を走る日本にあるシステムを導入した。それがRe:Selfシステムである。

 Re:Selfシステムとは、自己の再構築、認知症による自己崩壊に対する一つの答えということだ。技術的には詳しいことはわからない。説明によると認知症により自律的に生きる補助装置ということだ。激しい感情の予兆を検知し、それが出た種運管に自動調整して沈静化を図る。本人の記憶の補助、会話の補助などができるらしい。補聴器と眼鏡を合わせたようなディバイスでそれが可能とのことだ。

 Re:Selfシステムのディバイスのおかげで、徘徊、暴言、ケアの拒否などあらゆるトラブルから俺は解放された、俺は安心して眠れるようになった。

 生活に余裕ができたから考える余裕ができたのだろうか。ふと、今の親は果たして俺の親なのだろうか。
 Re:Selfのおかげで親は穏やかになったし、俺の生活も穏やかだ。

 親が俺の顔と名前を忘れても、Re:Selfのおかげで俺が語り掛ければ親は俺を認識できる。自己の再構築の支援とはそういうことか。

 でも、それは「俺の親が俺を思い出した」のではなく、「Re:Selfが俺の親に俺を思い出させた」だけなのではないだろうか。はたして、それは同じことなのだろうか。これは親の記憶をRe:Selfに預けたということでありそれは親の人格を預けたことと同じだったのかもしれない。

 俺の親は、今ここにいる。でも、俺の親はもうここにはいない。その両方が、たぶん正しい。こういう問いに誰も答えられない。そして Re:Selfシステムも答えない。

 俺の生活は静かになった。 それは、俺にとって、ちょうどよかった。

 しかし、何かが俺の耳元でささやく。「それはあなたの親でもありません。」。ただそれが空虚に俺の意識の中で通り過ぎて行った。
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