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第1章:下水パイプからの“お荷物”
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ネオキョートの夜は、ネオンの雨で濡れそぼっていた。巨大なホログラム広告が空を這い回り、都市の下層スラムを流れる排水ネットパイプ——通称「ドブ川」——は、廃液とデータゴミが混じる黒い流れと化していた。
その黒い水流の中を、直径1メートルほどのピンクの桃型カプセルがゴロゴロと転がってきた。表面には、かろうじて読めるように「MOMO-POD Ver.0.9β」と薄汚れた刻印が施されている。
カプセルはまるで安物のガチャポン玩具のように、時折ピコピコと8ビット風のエラー音を漏らしていた。内部からは「バッテリー残量 …… 3% …… 起動失敗率 …… 87% …… 」という不吉な音声が聞こえる。
上空では、婆さんの蚊帳ドローンがブンブンと音を立てて飛んでいた。本来300匹いるはずの昆虫サイズの自律機は、半分がバッテリー切れで水没し、残りの150匹が「赤ちゃん発見! 赤ちゃん発見!」と無駄に騒ぎながら、カプセルを吊り上げようと試みた。
しかし、ワイヤーが絡まり、カプセルは無残にも川岸にドサッと落下した。
その衝撃で蓋が外れ、中から赤ん坊が現れた。
……が、その赤ん坊の額には、生まれた瞬間からすでに「SYSTEM REBOOTING … 」のホロ文字が浮かんでいた。
生まれた瞬間からバグ持ち。これが、後の桃太郎である。
彼は「うわーん …… (翻訳:マザーボード熱い)」と泣き叫び、婆さんのドローン群は慌ててナノ修復スプレーを噴射したが、その半分は期限切れで白い泡を出すだけだった。
残りのドローンは、クラウド経由で廃ビルの屋上コンテナに住む爺さんの祖霊OSに緊急通報を行った。
爺さんのアパートにホストされているホログラム婆さんが画面に登場するも、顔が上下逆になっていた。
「アンタ、また逆じゃよ! 爺さん!」
「うるせぇ! 俺のニューラルリンク、古いんだよ!」と爺さん。彼の脳内チップは婆さんのバックアップ人格をホストしているが、メモリ不足で頻繁にクラッシュする状態だった。
婆さん(ホログラム)は、ため息をつきながらドローン越しに桃太郎を観察し、「まあ、生きてるし …… 育てりゃいいか」と結論づけた。
こうして、桃太郎はスラムのゴミ箱のそばで育てられることとなった。MOMO-PODから注入された成長促進剤により、桃太郎は18歳相当まで急成長したものの、期待されていた**「桃殻スーツ」への変形機能は「準備中」のまま**だった。
そして、桃太郎の初言葉は、「エラーコード404:青春が見つかりません」であった。
爺さんはそれを聞いて笑い、婆さん(ドローン)は「まあ、ポンコツでも可愛いわね」と呟いた。
この時点で、運命の歯車はすでにギアが外れていた。桃太郎は、両腕と右目が安物の義体で、義体化率30%の状態となっていた。
その黒い水流の中を、直径1メートルほどのピンクの桃型カプセルがゴロゴロと転がってきた。表面には、かろうじて読めるように「MOMO-POD Ver.0.9β」と薄汚れた刻印が施されている。
カプセルはまるで安物のガチャポン玩具のように、時折ピコピコと8ビット風のエラー音を漏らしていた。内部からは「バッテリー残量 …… 3% …… 起動失敗率 …… 87% …… 」という不吉な音声が聞こえる。
上空では、婆さんの蚊帳ドローンがブンブンと音を立てて飛んでいた。本来300匹いるはずの昆虫サイズの自律機は、半分がバッテリー切れで水没し、残りの150匹が「赤ちゃん発見! 赤ちゃん発見!」と無駄に騒ぎながら、カプセルを吊り上げようと試みた。
しかし、ワイヤーが絡まり、カプセルは無残にも川岸にドサッと落下した。
その衝撃で蓋が外れ、中から赤ん坊が現れた。
……が、その赤ん坊の額には、生まれた瞬間からすでに「SYSTEM REBOOTING … 」のホロ文字が浮かんでいた。
生まれた瞬間からバグ持ち。これが、後の桃太郎である。
彼は「うわーん …… (翻訳:マザーボード熱い)」と泣き叫び、婆さんのドローン群は慌ててナノ修復スプレーを噴射したが、その半分は期限切れで白い泡を出すだけだった。
残りのドローンは、クラウド経由で廃ビルの屋上コンテナに住む爺さんの祖霊OSに緊急通報を行った。
爺さんのアパートにホストされているホログラム婆さんが画面に登場するも、顔が上下逆になっていた。
「アンタ、また逆じゃよ! 爺さん!」
「うるせぇ! 俺のニューラルリンク、古いんだよ!」と爺さん。彼の脳内チップは婆さんのバックアップ人格をホストしているが、メモリ不足で頻繁にクラッシュする状態だった。
婆さん(ホログラム)は、ため息をつきながらドローン越しに桃太郎を観察し、「まあ、生きてるし …… 育てりゃいいか」と結論づけた。
こうして、桃太郎はスラムのゴミ箱のそばで育てられることとなった。MOMO-PODから注入された成長促進剤により、桃太郎は18歳相当まで急成長したものの、期待されていた**「桃殻スーツ」への変形機能は「準備中」のまま**だった。
そして、桃太郎の初言葉は、「エラーコード404:青春が見つかりません」であった。
爺さんはそれを聞いて笑い、婆さん(ドローン)は「まあ、ポンコツでも可愛いわね」と呟いた。
この時点で、運命の歯車はすでにギアが外れていた。桃太郎は、両腕と右目が安物の義体で、義体化率30%の状態となっていた。
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